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荒川区で粛々と進む「ゆいの森通り」(東京都市計画道路補助線街路第90号線)の整備事業の話。その1

荒川区の動き、ご存知ですか?

このコロナ禍で、なんとなく外の話題に関心が低下していそうな今日この頃。
すると、荒川区でいくつか進められているハード整備のことも、近くにお住いの方を除いては、あまり知られていないのではないでしょうか。
例えば現在、荒川区内で進められている主なハード整備としてはこんなものがあります。
(すべてが区の事業というわけではないのでご注意ください)

尾久(西尾久・東尾久)エリア
宮前公園整備事業 令和4年4月全面開園予定
あらかわ遊園リニューアル 令和4年春頃リニューアルオープン予定
東京女子医科大学東医療センター移転 令和3年度以降できるだけ早期に新病院開設予定
町屋・荒川エリア
・補助193号線(旭電化通り)整備事業(区施行)
補助90号線(ゆいの森通り)整備事業(都施行)
日暮里(西日暮里・東日暮里)エリア
西日暮里駅前地区市街地再開発事業 
三河島駅前北地区市街地再開発事業
南千住エリア
・補助321号線整備事業(区施行)
・補助331号線整備事業(区施行)

さて、その中で取り上げたいのは、町屋・荒川エリアに関係の深い「補助90号線整備事業」です。

補助90号線。

荒川区のほぼ中心、図書館「ゆいの森あらかわ」の目の前を走る「ゆいの森通り」沿いでは、建物がどんどん無くなり、代わりに味気ないフェンスと「道路予定地」の標識が増えていっています。
街が異様なスピードで変化していくという特殊な光景を、誰もが見たことがあるのではないでしょうか。

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この事業が、東京都が進める都市計画道路事業です。
いわゆる公共事業の一つですが、気軽な題材としてなかなか取り上げにくい雰囲気があります。
その理由は、道路事業によって受ける影響が人によって様々であること。

以下は、補助90号線に限らず一般的な傾向です。
道路計画区域内にお住いの方は、(任意という形がとられるとはいえ)用地買収されてしまうので、積極的な支持の立場ではないでしょう。"生活を奪われた"と。
一方で計画区域外の近隣の方々にとっては、道路ネットワークがつながることで利便性が向上するので、支持の立場もいれば、生活エリアにきわめて近いところで交通量が増大してしまうことで交通安全・治安上の懸念が浮上するため、反対という立場もおられるでしょう。

また、事態はもっと複雑で、不動産価値の上昇や、コミュニティの衰退など、いろいろな要素が絡みます。

したがって、この話題では、私の立場を表明する必要があります。
私は、(荒川でない)町屋エリアに住んでいるため、道路整備による正の影響を受けやすく、一方で負の影響を受けにくい立場です。

そして、今更ですが、道路事業本体に対してはこれ以上言及しません。
むしろ、道路ができることによる周辺の街への影響について考えたいと思います。

ちなみに、区内の都市計画道路事業については以前、個人ブログとして紹介したことがあります。

当時は"その2"以降も書く気満々で、大きく振りかぶった感じでこの記事を作成したのですが、すぐにモチベーションが急降下したため頓挫しているものです。

増える空地とフェンスの裏にある事情。

まずはこの事業について、大雑把に説明してみましょう。

都内(都内に限りませんが)には、物理的には存在していないのに、都市計画図という専門的な地図にのみ線が引かれている道路、都市計画道路が無数に存在しています。
それらの道路の大半は、昭和20〜30年代に決定(都市計画決定と呼ばれる手続き)されたもの。
なぜかと言えば、行政にとって都市計画道路事業は大きな出費と気の長い事業期間を要するものなので、実際に"つくる"上では、優先順位を考えなければなりません。
したがって、昭和20〜30年代という大昔に決定されたものが、現在もまだ完成していないという状況が生まれるのです。

※都市計画道路の決定年月日は以下をご参照ください。補助90号は昭和21年 4月25日になっていますね。

そして、そのうちの一路線が補助90号線です。
正確には補助90号線のうち、町屋交差点からサンパール荒川を越えてJR常磐線に至る区間が、現在事業中の区間です。

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東京都建設局資料より)


補助90号線の事業認可は平成27年2月。
事業期間は平成26年度〜平成32年度(令和2年度)となっています。
確かに予定地の用地買収はかなり進んでいるように見えますが、今年度いっぱいで終わることは考えられないので、まあ延伸でしょう。

道路ができる、だけではない。

さて、ここからは、道路ができる前提で、周辺に起きるまちの変化について勝手に想像してみます。
街に新しい道路ができるということは、街に空間ができる、交通利便性が上昇する、というだけではありません。

まず、道路ができる、以外の物理的な変化として、この区間には緑道が整備されることになっています。
いずれも情報ソースはUR都市機構ですが、

「補助第90号線に関連するものとして、都電荒川線との間に緑道が計画されています。」
https://www.ur-net.go.jp/produce/machimichi-net/activity/detail_161019c.html
「東京都の道路整備に連動させ、荒川区は、沿道の不燃化建替えを推進するほか、補助90号線と都電荒川線の間の5~7mの帯状の残地を緑道として整備する。」
https://www.uit.gr.jp/members/thesis/pdf/honb/532/532.pdf

となっています。
「緑道」という言葉は、公園として帯状の空間になるのか、はたまた植栽の多い歩道を意味しているのか、よくわかっていませんが。

この緑道整備には、荒川区特有の課題である防災上の目的と、景観形成上の目的があるのでしょうが、それだけではなく、歩いて楽しい道にしようという狙いもあるのではないかと想像します。
事業予定地周辺には、ゆいの森以外に目立った目的地がないことから、補助90号線の当該区間は、ともすれば通過交通(区域を通過するだけの交通)のためだけの道路になってしまう恐れがあります。
しかし、そこに緑道を整備することによって、補助90号線を歩行者や自転車など、近隣住民の方々のための空間にしようとしていることが伺えます。

緑道の整備、これは素直に楽しみな将来ではないでしょうか。
ただ、沿道の変化はそれだけでない気がしています。

続きは、その2にて。

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