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溢れる熱量をうまく編集できるか。「東港地区まちづくりシンポジウム」に会場参加してきた話。

東京から日帰り新幹線で参加してきました。
こうしたイベントに数多く出席しているわけではありませんが、とても良いシンポジウムであったと思います。

2名の基調講演の内容が、きわめて濃厚かつ熱量を持って伝えていただけたこと。
それも、これから積極的に挑戦してほしいと考えているであろう「まちを育てる人」の候補である参加者を、きちんと勇気づけてくれるものであったように思います。

シンポジウムの様子・概要

まずはイベントの簡単なレポートです。

会場

蒲郡商工会議所。今回のまちづくりの取組対象エリアからするとあまりに好立地。

会場は、"東港地区まちづくり"の対象エリアに近い、蒲郡商工会議所の1階コンベンションホールでした。
蒲郡駅から歩いて行けるのが嬉しいですが、きっと参加者の多くは自家用車だったんだろうな。

ちなみに蒲郡商工会議所の1階一番端には、蒲郡クラシックホテルが経営するオーシャンビューのカフェ、「Gama Cafe & Bakery」が入居されています。
蒲郡クラシックホテルは先日のサウンディング調査にも参加してくださっているので、今後このエリアの魅力づくりでぜひご一緒したいところ。

参加者

会場参加者数は、募集時に「定員100名」と設定されていたようですが、実際の応募者数については何も予備情報なし。
ですが蓋を開けると、かなり多くの方が出席されていました。

シンポジウム休憩時間に後方より。

会場での感覚として、前方には年配の参加者が、中間から後方にかけては少し若い(とは言っても40代に重心?)方々が座っていたかな、という感じでした。
知っている限りの媒体は、
蒲郡市公式サイト
・広報紙である「広報がまごおり」2月号21ページの「お知らせ」
の2種類。
しかし後者(下図)きっかけはあまり考えにくいので、蒲郡市公式サイトが主な伝達媒体だったとすると、なかなか広い層に届いているなという印象です。

「広報がまごおり」2月号に掲載されたシンポジウム案内。

基調講演

シンポジウムの登壇者はすべて、東港地区まちづくりにおける専門家チームの方々でした。
その中の一人、愛知工業大学講師・益尾孝祐先生がモデレーター(進行役)。

まずは蒲郡市長の挨拶から始まりました。
市長は、これから東港地区で始めようとしているまちづくりを、蒲郡市民憲章三つの誓いの3つ目「海と空を美しく、みんなの力でまちづくり」になぞらえて説明。
というフレーズは確かにその通りなのですが、ここで市民憲章を持ち出すあたりが、さすがという印象。
市民憲章を意識したのは中学卒業以来かな・・・。

市長の挨拶が終わると、2名の基調講演となります。
一人目の基調講演は、ランドスケープデザインを専門とする忽那裕樹さんで、「まちを使いこなすデザイン〜公民連携のしくみづくり〜」

主に水都大阪での取組経験を題材に、公共空間の活用によって賑わいをもたらし、まちを変化させることの魅力について、軽妙に語られていました。
かつては誰も踏み入れようとしなかった空間の使い方をリノベーションし、ステキな空間とコンテンツづくりをすること。しかも、そんなコンテンツを提供するのは幅広い民間プレイヤーであること。

そんな取組において重要なこととして語られていたのは、

  • まちに関わる当事者達で、ルールを決め、ビジョンを描くこと

  • 自分達が愛着を持てるように取り組むこと

  • 「かたち(空間デザイン)」「うごき(使いこなし)」「しくみ」の3つを同時に考えること

の3点。
そしてこれを実行していくために必要な「中間支援組織」の重要性が強調されていました。

そして、まちに変化を起こすコンテンツづくりにおいては、「きっかけづくり」がポイントとのこと。
普段は外でバラバラに展開されているアクティビティでも、「ちょっとこの日に一緒にやろうよ」と誘い合わせて実施することで、フェスにしてしまうことがコツだと仰っていたように思います。

これは筆者の所感ですが、「中間支援組織」の重要性は論を待たないものの、SDGsに似て何でもありの理想概念という側面もあります。
もちろん行政主体であれば、"中間支援組織の構築"を事業スケジュールに位置付けるほかないと思いますが、市民側が、「中間支援組織」なる、概念だけの存在に期待を持ちすぎてしまう可能性があります。
その結果、「早く中間支援組織を作ってくれ」「中間支援組織さえあれば」というややズレた要望を持ってしまい、受動的になってしまうリスクがあるような気もします。

そして二人目は、照明デザイナーである長町志穂さんで、「あかりでつくる観光まちづくり」

私も発見が多かったのですが、公共空間の魅力をアップさせる上での屋外照明の有効性を教えていただきました。
行政による大きな整備と違って、照明であれば一基せいぜい3万円程度で、すぐに設置できること、その割に空間を印象づける力が強いことが、豊富なBEFORE/AFTERの写真で説明されました。

また、山口県長門市における長門湯本温泉での空間演出の取り組みを題材に、社会実験の重要性を強調されていました。

パネルディスカッション

基調講演が終わって休憩の後は、パネルディスカッションです。
今回は、Googleフォームを活用した参加者からの質問・意見からコーディネーターが選んだものをパネリストに投げかけ、コメントする形式で展開されました。

コーディネーターは愛知工業大学・安井秀夫先生と、名古屋大学・恒川和久先生。
安井先生は蒲郡市がご出身とのことです。

パネルディスカッションの内容はちょっと記録しきれなかったので、2つほどのやりとりをご紹介します。

最初に取り上げられたのは「中間支援組織をどうやってつくればよいのか?」という質問でした。
やはり、中間支援組織への期待値が爆上がりの会場としては、出てこないわけがない質問ですね。
これに対しては忽那さんが、「決まった作り方があるとは思わない方がよい」とバッサリ。それはそうですね。

のちに、「蒲郡市はせいぜい人口8万人。賑わいを作ることができるのか。また、若い人を集めることができるのか?」という質問がありました。
これに対しては、基調講演の2名が、その幅広い経験をもとに、

  • (5〜10万人規模の都市が多いため)人口規模に問題はない。やれば必ず人は集まる

  • 若い人が取り組むことが理想だが、年配の方々が活躍することも望ましい

というコメントがなされました。

時間になったところで、やはり専門家チームの名畑さんから、シンポジウムのまとめとして、グラフィックレコーディングが披露されました。
これには登壇者一同が絶賛でした。
(名畑さんはエリマネの実践者として豊富な経験をお持ちなので、いずれその知見をシェアいただきたいなと思います)

最後に、登壇者全員から感想のコメントが共有され、後述する「まちづくりプラットフォーム」についてアナウンスがされた後、閉会となりました。

これからどうなるのか?市の取組の展望。

私のレポートで何万分の一が伝わるとも思えませんが、非常に熱いシンポジウムでした。
特に、基調講演のお二方が雄弁に語ってくださったことで、きっと参加者に「ああ、まちって変化させられるのかもしれない」と思わせてくれたことと思います。
その結果、閉会の時には、会場には一定の熱量が残っていたように思います。

ここで生まれた熱を、いかに実際のまちの変化につなげるか。
高まった熱量は、適切な方法で発散させなければ、新たな誤解や対立を生んでしまうかもしれません。

特に今回は、「東港地区まちづくりビジョン」の趣旨を踏まえると、市が何か積極的な取り組みをするわけではないのです。
店を作るわけではないのです。
スケボーパークを作るわけではないのです。
民間側が、なってほしい将来に向けて、やりたいことを表現し、それをいかに編集してうまく伝えるかが、あまりに重要なのです。

今回のシンポジウムでは、蒲郡市の今後の取組予定について明確なアナウンスはありませんでした。
おそらくは、現時点で明確に示すことのできる事業スケジュールは本当に存在しないのかもしれません。

その中で、今後につなげるための数少ない取り組みとして、「まちづくりプラットフォーム」が告知されました。
シンポジウムと同じ2月20日付で、蒲郡市HPにもページが追加されています。

「まちづくりプラットフォーム」の案内チラシ。

説明文からは、このプラットフォームは

  • 民間主体のまちづくりに賛同し

  • これから目指すまちの姿を共有し、

  • 実際にやってみる環境を共に作る方々

を対象とした、メーリングリストのようなものと解釈できます。

市はこれまで、まちづくりに関心があり、何かやってみたい方々が存在するのか、いるとしてもどこにいるのかがわからなかったはずです。
当然ながらそこへ情報をリーチさせるための手段を、持っていませんでした。
したがって、今回はあくまでマス(大衆)へ対してシンポジウムを届けたわけですが、シンポジウムに参加した方々という(限られた)集団であれば、まちづくりのパートナーになってほしい潜在層にリーチする可能性が、格段に上がります

その他、シンポジウムの様子から察すると、令和4年度は何かしらのワークショップが企画され、何かしらの社会実験の企画が進められる可能性が高いように思います。
これらは「まちづくりプラットフォーム」へ登録した方々に情報が届くのでしょう。

これからどうするのか?個人的な展望。

まずは空間を使って変化を起こしてみるということに尽きると思うのです。
そしてそのためには、今年の6〜7月には、社会実験でもフェスでも何でもいいのですが、実際の場所を使って、具体的な空間ポテンシャルを検証してみたい

竹島ふ頭緑地の東端部分。眺望も空間の設えもちょうどよいが。
竹島ふ頭の先端から駅方面を見る。見事にからっぽの死んだ空間になっている。

そのためには、「とりあえずやってやる」のだ。

やると決めれば、それに向けた動きの中で、蒲郡でさまざまな魅力的なコンテンツ、表現者の方々に出会えるかな。
外から見ているだけだと、「CHARI-CAFE POTTER」さん、「LOVEARTH」さん、「喫茶スロース」さん、大宮冬洋さん・・・などなどが気になるが、まだまだ知らないものがあるのだろうな。

市主催のワークショップや社会実験は、それはそれであって歓迎なのですが、やり方を間違えてしまうと、最後まで市の手を離れないというリスクがあるような気がします。
民間発意・独立採算を目指すものがあってよいはず。そしてそれが、今はむしろ重要なはず。

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