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Ethereal Summit 2021 Day2からのノート

初日がブロックチェーン業界全体に焦点を当てていたのに対して、Day2はDeFi領域に焦点を当てた一日となった。多くのDeFiプロジェクトをネットワーク上に持つEthereum、追従するBinanceが取り上げられ、また大型の買収を成功させ、多数のエンジニアを獲得し、今後DeFi領域に打って出てくると目されるGalaxy、さらにConsenSysと大物が登壇した。
各コミュニティが競い合って実証実験をおこないつつ、市場を広げている段階で、参入障壁が低くうまみがある市場なのがよくわかる。Galaxy社長との対談でもそれをほのめかす場面があり、今後2,3年のDeFiプロジェクトを通じた業界の盛り上がりを想像させた。

Ethereumアップデート

ETH2.0アップデートとEthereum Foundationの今後について、Vitalik氏とMiyaguchi氏が語った。

ETH2.0
ExecutionチェーンがConsensusチェーンに内包される合併については今年末から来年頭までに可能とVitalik氏は語った。バックエンドで技術的な変更は多いが、既存のユーザーにとってデータ移管が不要であり、現状のUIと変わらずUXに影響を出さないとのことである。

Ethereum Foundationにとっての課題
資産配分プロセスの欠如:急激な成長に対してマンパワーが足りない。必要とされているところに資源配分できていないのが現状であるとMiyaguchi氏は指摘した。マンパワーという観点ではMiyaguchi氏のようなコミュニティ外との渉外担当含め、各領域に担当をつけ解消していくしかない。アプリ開発レベルにも人が必要である。Vitalik氏は、市場のよりよい成長の為には、Organic Growth(自然発生)に任せるだけでなく、Ethereum Foundationとしてアプリ開発への介入の必要性を感じているのかもしれない。
非中央集権型自治:今後の発展のカギとなるのは非中央集権型自治形態の創出であるとVitalik氏は考えている。ブロックチェーンのコンセプトの根底でもある。

Binanceアップデート

BinanceのセッションはCZ氏率いるグローバルチームとアメリカチームの2部構成だった。CZ氏の出自(中国系カナダ人)の観点で意識的にわけたと推測される。Binanceアメリカは暗号資産初心者の登竜門的CEX(中央集権型取引所)であり、全州(現在41/50州とのこと)での取引所ライセンス取得を目指しているからかもしれない。当局対応に登用した新社長の手腕に期待が集まる。

Binanceの立ち位置
CZ氏は自分自身をツール作成者と呼び、Binance自身もツール作成者であり続けたいと話した。MetamaskといったEthereum上のDeFiはどちらかというと玄人向けのサービスが多いのに対して、BinanceはCEXとして、低リテラシー層へのサービス展開を心がけていくとのことである。その一環がNFT取引所で、Metamask等のアプリを必要とせず現在のBinanceアカウントでサービスを可能にしていくとCZ氏は述べた。

Binance NFT エントリーポイントしてのNFT
6月に稼働を始めるBinance NFTに関し、CZ氏はNFTについて言及した。NFTはビットコイン同様、新たな投資手段であり新規参入を促し続けると述べた。NFTは既存のアーティスト達にとって潜在顧客を掘り起こす可能性があり、今後も需要に事欠かないだろうと予想した。

Binanceの強み
現時点で取引高、日間アクティブユーザー数、アプリダウンロード数で最大規模を有しており、Binanceは取引所としてこその優位性を維持する方針である。カスタマーサポートには特に注力しており、2~3時間から最長で1日以内に返信する方針で、暗号資産取引初心者フレンドリーを強調していく。

BNBトークンとBinanceの関係性に変化
BNBは以前はBinanceのディスカウントトークンとの位置づけだった。しかしBinanceチェーン上のアプリの増加により、チェーン本来の価値に焦点が当てられ始めている。これはEthereumチェーンが急成長したことによってEthereumチェーンそのキャパシティ超過分がBinanceチェーンに流れてきていることも要因だとCZ氏は考えている。

Binance模倣犯説からみる業界の発展性
Binanceは事業展開や新規事業の名前に至るまでEthereumのコピーが多いのではというコメントに対し、CZ氏はそもそも人は何かしらのコピーであり、それ自体に何の問題もないと話した。一番重要な方法はシステムの改善をし続けることであるり、それこそが業界の成長につながると述べた。

Binanceアメリカ新社長/株式市場
元米通貨監督庁長官であるBrian Brooks氏がBinanceアメリカの社長に就任したことで政府・規制当局との軋轢の解消を図る。今後(6か月)の焦点として米国全州におけるライセンスの取得、人員の拡大をあげた。株式市場への上場については、Brooks氏は約2年間は難しいとの見解を述べた。現在の社員は100人程で、会社の事業規模とつり合いがとれていないことから、コンプライアンス、プロジェクトマネジャー、財務等の分野で70~100人超の人材を年内に雇うのが急務であると述べた。

余談:報道勢との対話姿勢について
Binanceは一部報道を相手取って訴訟を起こしている。これに対しては引き続き正しい報道をされるようしかるべく手段をとっていくと述べた。またBinanceがアジア(中国系)の会社で信頼に値しないという一部の中傷に対して、Binanceアメリカはサンフランシスコに法的拠点を持っている、プロダクトの優劣による本来の競争で勝っていく、と一笑に付した。

Galaxyアップデート

Novogratz社長は、最近の大型買収で一番の買い物はエンジニア集団である、今までは投資家としてブロックチェーン領域に参加してきたが、今後は”プレイヤー”として躍進していけると述べた。既存の伝統金融による多額の資金を背景にした躍進が期待される。

BitGo買収案件
買収によって資金保管量世界2位のカストディアンになった。これにより更に多くの機関投資家へのアクセスを得た。しかし何より大きいメリットは60人超のブロックチェーンエンジニアの獲得とNovogratz氏は言う。今後は投資家としてだけではなく、アプリ開発といったクリエーターとして市場に参加できるようになった。今後もGalaxyは伝統的な世界とブロックチェーン領域の橋渡し役を担っていくとした。

DeFi

伝統金融の投資家にからの資金を獲得しようとDeFi企業はやっきになっている。その結果非中央集権的な構造から中央集権的構造にシフトしているDeFi企業が少なくない。このことがもたらすリスクの可能性に注意したい。

DeFiの躍進による経済圏の拡大
登壇したDeFi企業関係者は、伝統金融が十分にはたせなかった既存金融エコシステムと新興国との橋渡しをDeFiが可能としていると強調した。伝統金融への物理的なアクセスが難しいアフリカや東南アジアの人にスマホ一つで金融サービスを展開できる。

AML(アンチマネーロンダリング)リスク
レンディング機能を提供するCompoundやAAVE曰く、機関投資家にもDeFiプロジェクトに興味をもつ人は確実に増えてきている。彼等のニーズを満たすために、一部のDeFiでは中央集権的な機能を強めて彼等のリスクを肩代わりすることによる誘致が増えている。例えばBlockFiやGenesis、Compoundは機関投資家参入の為、運営がAMLリスク対応の中央集権化を進めている。

トランザクションフィー
トランザクションフィーの高騰により、イーサリアムチェーンからBSCやPolygonに移りつつある。AAVEもPolygonチェーンを使用し始めたとし、業界における流れだとした。

伝統金融の投資家がDeFiに参加するインパクト
現在世界の伝統金融市場は金余り状態と言われている。ブロックチェーン領域はその膨大な資金の有望な市場と目されている。既にその資金量が持つインパクトの大きさはこの半年強の暗号資産の価格形成で確認されており、気にするべき点をセミナーからまとめた。

伝統金融が保有する優秀人材
伝統金融ではブロックチェーンの研究が加速度的に進んでいる。GalaxyのNovogratz氏によると、数週間前に初めてビットコインを購入した人が今ではDeFiについて語っている。既存の金融市場の優秀な人達がこの業界に参加することによって、成長速度が増すことになる。

暗号資産への価格インパクト
決済、ステーブルコイン、DeFi、NFTと注目が移っていく中、そのバックボーンとなるEthereumコミュニティの躍進を受けてETHの価格形成がなされてきた。GalaxyのNovogratz氏は、これから機関投資家勢が流入してくることからもETHの5000ドル台は大いに可能だろうと述べた。ただ今までの価格形成は暗号資産が非投資対象から投資対象に格上げされたことによるバブルであり、恒久的なものではないと述べ、一部暗号資産の利益確定売りをほのめかした。

機関投資家がDeFiに参加する上で気にする点
トランザクションの効率化:伝統金融の多くの投資家がESGに高い関心を寄せている。Proof of workにおけるハッシュ計算からProof of stakeへの移行によって電力消費の軽減がなされるが、更なる効率化が求められるだろう。
キーマンリスク:独自のプログラミング言語を必要とするところもあり、対応する人材を獲得、維持し続けるのが困難であると指摘された。
標準化:業界が若いこともありまだ標準が十分に存在していない、もしくは把握し続けるのが困難と指摘された。


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