XとYの物語。男と女を産み分けるのは誰の仕事だろうか…
Y染色体が退化し、この世からやがて男がいなくなってしまう…そんな噂を聞いたことはありませんか?
黒岩麻里さんの「消えゆくY染色体と男たちの運命」の書き出しです。
なぜ人間には男と女があって、どこでどうして性が決まるのでしょうか。
ヒトの男女の性別は染色体の組み合わせで決まります。私たちの身体は、およそ60兆個の細胞からできていて、一つ一つの細胞の核の中には46本の染色体が詰まっています。ヒトの染色体の大きさと形の順に、1番から22番まで番号がついています。それぞれの番号の染色体は二本ずつ対になっています。これは一方が父親からもらった染色体、もう一方が母親からもらった染色体なので、同じ染色体が対になっているのです。しかし、23番目の染色体のみ、男女で組み合わせが違います。
性の決定権は男性だけがもっています。
数字ではなくアルファベットのXとYで表された染色体を「性染色体」と呼び、この組み合わせがX染色体を2本もつXXであるか、X染色体とY染色体を1本ずつもつXYであるかで男女が決まり、XXなら女性、XYなら男性になります。性の決定権はY染色体が もっています。
Y染色体をもてば男性になるということは、言い換えれば男性しかY染色体をもっていないということになります。Y染色体は父から息子へと受け継がれるという特別な特徴があります。父から息子へと受け継がれ、遺伝的なルーツを追いやすいという特徴から、Y染色体は人類遺伝学分野での研究に利用されています。Y染色体は、ときに男性の「富と権力」の象徴、と見立てることもできます。「富と権力」があれば、多くの子孫を残すことができ、またその子孫の男性もさらに多くの子孫を残していきます。チンギスハーンのY染色体が、アジア16地域でおよそ1600万人の男性に受け継がれているという研究結果も出されています。
Y染色体を解析することで民族特有のパターンが読み取れます。
世界で多数を占める同じタイプのY染色体、これを攻撃や侵略行為によるもの、とも捉えることができます。
「日本人のY染色体」研究があります。中堀豊博士の著書「Y染色体からみた日本人」のなかで「日本人のつつましくお行儀の良い窓際族のY染色体」について述べられています。中堀博士は日本人のY染色体は4種類に大別され、うち2種類は縄文系、他の2種類は弥生系であり、両者ともに大陸から移住してきたことを明らかにしています。
一万年以上前に北方から樺太・北海道を通って日本列島に広がっていった原日本人が縄文人で、2300年ほど前から飛鳥時代にかけて朝鮮半島経由で流入した渡来人が弥生人です。ところがこのY染色体は縄文系も弥生系も大陸ではほぼ消滅しており、日本にしか残っていないそうです。このタイプのY染色体は大陸では駆遂されてほとんど生き残れなかったのでしょう。
中堀博士はこうまとめています。
「日本の男性は大陸の落ちこぼれである。一度目の落ちこぼれである縄文人と、二度目の落ちこぼれである弥生人が、互いを滅ぼしてしまうことなく共存したのが現代日本の男性たちである。まさに、窓際族同士仲良く机を並べて、極東の小島で自然の恵みを享受し、自然に従って生きてきた。国には国の歴史があり事情がある。国民には国民の特性があり、生物としての特性も違う。同じ土俵で相撲を取る必要はない。おとなしく、できることだけやればよい。君は君、我は我なり、されど仲良きだ」
いろいろと考えさせられますが、学問ってすごいですね。
最近少々自信喪失気味のわたしですが、「大陸の落ちこぼれ」だと割り切るとずいぶん気が楽になります。
それらはすべてわたしの所為ではなく祖先のY染色体の所為なのだ!
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