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私とご飯 1

ナポリタンもどきを求めて

今も昔も美味しいご飯を食べるのが好きで
ふと気付くとご飯にまつわる話が
多くて夕御飯にナポリタンを作っていたら
ふと小話を書きたくなった。


子どもの頃、祖母が作ってくれたトマトベースの
甘めのスパゲティが1番のご馳走だった。
豚ミンチ と沢山の玉葱微塵切りとトマト、
少しだけウスターソースとお砂糖が入ったミートソースが
盛られたスパゲティがとても好きだった。


大人になって外食で始めて
ボロネーゼを食べた時、全然甘くなくて
何なら牛ミンチを使ってるのにも驚いた。
同時にあのソースは祖母のオリジナル洋食だったのだと。


「スパゲティ嫌いやし、うどん食べたいわ」と
よくぼやきながら、母が居た時からも
居なくなってからも、成人してからも
ちょくちょく作ってくれていた。
一人暮らししてから、作ってくれていたご飯を
作っては台所でたまににやけている。


以前、何度かレシピの詳細を聞いてみたが、
「いつも目分量やから分からん。適当や。」と。
結局レシピは分からず終いだけど、
長年それらを食べて育ってきたので
私の味覚がまぁ多分おおよそ大体こんなだろうと
覚えてくれている。
この適当さは違う形で隔世遺伝した様だ。

そんな祖母のご飯をよく食べて育った、
私は順調かつすくすくと規格外に
(横に)大きくなった。
「丸々しとる位が女の子は可愛えぇんや。
早よ食べ。フライパン片したいねん。」と
思春期に入り、体型を気にしだした私に
そう言って先日余ったミートソースにパスタと混ぜた
ナポリタンもどきをフライパンのままちゃぶ台に
置かれた時の諦めの感覚は今でも覚えてる。
しかし数年後成人して掌返した様に
「こないに丸々してからに!!嫁行けへんで!!」と
同じ口から180度ひっくり返した台詞が
飛んで来るのはまた別の話。

ご飯作りは楽しいけど、後片付けを
面倒くさがるのはきっと私だけでは無い筈。
一人ご飯の時はなるべく洗い物を増やさぬ様に
お鍋や小さめのフライパンからかっ食らっている。
行儀?そんなの、誰も見てないから大丈夫。
しかもこのナポリタンもどきの、更にズボラな
冷蔵庫に有る材料を適当に使う
ナポリタンもどきもどきが出来上がる。
楽かつ美味しく洗い物もフライパン1つという至福。
彼女が作ってくれたナポリタンとは別物だけど
これはこれで幸せの味だったりする。

そんな祖母がこの世を旅立ってから
2年と少し経過した今でもたまにあの時の
ナポリタンもどきを食べたくなる。
作ってくれていた人が居なくなっても、
美味しかったはずっと覚えていて、
ご飯の度優しく、あっけらかんと笑っていた
祖母の笑顔を思い出しては懐かしむ。
作るのも、食べるのも小さな幸せが沢山有った。

ただいまと、おかえり。
いただきますと、ごちそうさま。
片方が聞きたくて、片方を言いたくて
自分の為に、好きな人達の顔を浮かべて
私は今日も台所へ向かう。

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