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賃上げの意味を考える

物価上昇に伴い、かつてない水準での賃上げ要求の動きが高まっています。この流れはもはや抗えないものですので、企業としてはそれに見合う”原資”をどうつくっていくかが課題になります。

そもそも賃上げとは賃金テーブルを書き換えて水準を一律に引き上げる「ベースアップ」と、あるタイミングにおいて年齢や成果、業績などを加味して号俸アップさせる「定期昇給」の二つがあります。その違いは会社レベルでのアップがベースアップ、個人レベルでのアップが定期昇給ということになります。

いま議論されている賃上げは必ずしもすべてがすべてベースアップを言っているのではないことに注意しなければなりません。

実際、ユニクロをはじめとして高水準の賃上げの中身を見てみると、社員一律でのベースアップというよりも、ジョブ型など成果や役割に応じて格差をつけていくなかでのアップになっているようです。

価格転嫁や生産性向上による原資枠アップがない中でのベアアップは収益性を圧迫しますから上場企業では株価に影響しますし、体力のあまりない中小企業では経営危機になり雇用が守れないということにもなりかねません。

そこで一例として、短期的に次のような人事施策をとることが考えられます。

A.基本給と賞与の設計変更→月収を上げる(年収は変わらない)
1.月額報酬を高めにして、賞与基準月数を低くする
2.手当の一部を月額報酬に入れ込む(同一労働同一賃金視点もある)
※賞与基準月がそのままだと年収アップになるので1とあわせて設計する

B.評価制度の変更→メリハリをつけて総人件費を一定枠にする
1.能力評価(職能等級=年功序列型賃金制度)を役割評価(役割等級=役割別賃金)に変更する
※職能等級に慣れ親しんだ企業の場合、いきなりジョブ型導入は難しい
2.降格要件を明確にする
※復活要件も明確にする

評価制度とそれと連動した人材教育が奏功して生産性が向上し、収益率が上がっていって初めて、本格的な賃上げに向かっていくというのが大半の企業が目指すところです。

上記を踏まえれば、最初から誰も彼もが処遇アップするということではなく、これまで以上に厳しく役割や成果で振り分けられていくというメッセージを企業は発しているものととらえるべきだと思います。

逆に企業からすると、しっかりとした評価制度と教育制度がなければ、まともな社員から見離されてしまうということになりますから、人事部門はまさに企業盛衰の鍵を握るとも言えます。

人事部門もその力量を本格的に試される時が来ています。