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最低賃金の大幅引き上げをチャンスにする

23年10月からの最低賃金改定は、全国平均961円から1,004円へ 43円の引上げとなり、過去最高額とのこと。

働く当事者にとっては「物価上昇に追いついていない、全然不十分」であるかもしれません。またマクロ経済的にも先進国の水準からするとまだまだ不十分です。国としては2030年までに1500円を目指すということで、今後も大幅な引き上げが続くものと予測されます。

一方、経営としてはしっかりとした軸を持ってこの動きに対応していかねばなりません。

1.現在の時給との差の分析
2.パート・アルバイト額表の見直し
3.106万の壁を意識した時間調整への対応
4.正社員の下限との逆転の検証
5.現場人件費アップによる下期予算の修正
6.募集広告の見直し
7.お客様への価格転嫁のお願い(たいていは不可)

私たちは、今年に限らず、例年この時期になると次のような検討と対応をすすめています。

今回くらい大幅に上がってしまうと、人件費もそうですが、特に3「時間調整への対応」に苦慮します。

単純計算で今回の引き上げインパクトは月4時間になります。
・現在:103万円÷12ヶ月÷ 961円≒89時間/月
・新 :103万円÷12ヶ月÷1,004円≒85時間/月
仮に100人の所得税控除のパートを抱えている現場では、月に400時間が不足する計算になり、約5人の新規採用をしなければなりません。コロナ明けで人材獲得競争が激化している上に、快適な労働環境・高い時給を払える大企業に人が集中するので、中小企業現場はますます労働力不足に陥ります。

そのしわ寄せは正社員の長時間残業へとつながりますが、時間外労働の上限が罰則付きで決められているので限界があります。

また、今後も最低賃金1,500円に向けて高水準の引き上げが続くとなると、お客様への価格転嫁は必須となります。しかし、お客様の立場からすると、最低賃金が引き上がったので値上げをお願いしますと言っても、納得できるものではありません。

まさに八方ふさがり、大多数の中小企業経営者が直面する現実です。

しかし、ピンチはチャンス。
パートやアルバイトの方にもキチンと評価制度を整備し、貢献度に応じた時給アップをし、休みたいときに休みがとれ、ハラスメントの一切ない職場をつくる。

そうすることで離職者が減り、入りたいと思ってもらえる人が増え、ひいては生産性も品質も高い会社になっていけば、最低賃金のアップは単なる与件に過ぎなくなっていくと考えています。

というか、そのように自社の価値向上とあわせて考えていくことしか対応策はないので、しっかりやっていきたい。