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差別化戦略のアプローチ(星野リゾートを例に)

星野社長といえば「教科書通りの経営」で有名ですが、実務家として成功もしていますので、ケーススタディとして使っていくといろいろな学びがあります。

B2Cであるホテル業だけではなく、私自身の所属するB2B物流業界でもまったくあてはまる話なので、勉強させてもらっています。

マイケルポーターの競争戦略では、基本中の基本として、

0.生産性のフロンティアにのる

 いまや基本品質での企業間の有意な差はないということを踏まえて、その品質水準をいかに効率よく具現化するかがほとんどの企業の課題になっています。

ですので、コスト競争力をつけていく、すなわち「どの企業もあたりまえのように努力している部分はしっかりやってください」というのが「生産性のフロンティアにのる」という話になります。

2.トレードオフを伴う差別化要因を決める

トレードオフがない差別化はすぐにマネされます。
少しでも競合が顧客を奪われているなと感じたら同じことをしてきます。

星野リゾートは一般的なホテル業のビジネスモデルである、「自分たちでホテルを開発して所有し運営までやる」ということのうち、「運営だけに特化する」ことを選択しました。
固定費の大きいビジネスでは売上が上がる繁忙期には莫大な利益が出てきますが、そのメリットを捨てました。
その一方で負債がないので金融リスクが軽減され、次への展開スピードが加速されます。
星野リゾートは展開スピードを選択し、収益拡大を捨てたと言えます。

2.コアとなる内部の”トレードオフを伴う”差別化要因を決める

星野リゾートでは、そもそもは社員のエンゲージメントを高めるために「フラットな組織」を目指したようです
(カンブリア宮殿ほか星野社長スピーチより)

ホテル業は土日休めない、低収益なので給料も思うように増やしてあげれない・・・であれば、「言いたいことを、言いたい人に、言いたいときに言える」風土にして社員の士気を少しでも高めようとすすめたものですが、これが実は運営特化にものすごく効いたということです。

フラットな組織にするにはいろいろなものを捨てなければなりません。相当の覚悟も必要です。旧態以前の封建的組織の場合、”偉い”人たちの意識や既得損益を相当ぶち壊さねばならないでしょう。

その一つの例を以前記事にしました。

簡単じゃないですね。
だからこそ、トレードオフを伴う要素なのだと思います。

3.差別化要素の相互フィット感を調整する

核となる要因が定まったら、そこからどのような差別化を設計していくかになります。
星野リゾートの場合は、マイケルポーター賞受賞のときと最近の星野社長のお話とは微妙に異なっていますが、ご本人曰く、時間の流れとともに、「何が効いてきているのか」「どう派生しているのかを整理しつつある」という趣旨の発言もされているので、これからも進化していくでしょう。
上記の図は私なりにシンプルにまとめたものです。

「フラットな組織」にすることにより、社員が活性化する。
一方、運営特化にした場合の収益源は”サービススタッフ”にある。そのためには
①サービススタッフが効率よく働く仕組み(受付、配膳、しつらえ、観光案内などすべてのタスクをみなが境界線なくやる)
②ホテル業務の全体感がみえて最適なオペレーションを自ら考えることができる
②モチベーションがあがる。

さらにフラットな組織とは、いうなれば、
・旧態組織:社長→管理職→現場→顧客
であったのを
・顧客→現場→フラット組織
とすることでもあるので、顧客創造を現場がみずから考えていくことにもなります。
そうなると、スタッフは地域の人たちが多いので、その地域のよさを前面に打ち出すことになります。つまり、中央主導のコンセプトではなく、スタッフ中心のコンセプト。

私も小淵沢リゾナーレ、伊東界など、マーケティングの勉強を兼ねて同僚と行くことがありますが、サービススタッフと話をすると、最初は星野社長が来て呼び水をするけれども、あとの企画は自分たちで考えていると話をされていました。

結果、運営特化の結果としての大きな武器である「星野ブランディング」が強化される、ということになります。

出来過ぎの競争戦略です。
星野社長は時間をかけているうちにこのように整理ができたとおっしゃっていました。

私たちはまさに生きた教材としてこのアプローチを自分の事業、会社に応用していければと思います。

takaでした。