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私を忙しくする奇妙なご縁

私はあまり自分から積極的に人間関係を築いていくタイプではない。だから、自分から誰かに声をかけて、食事へ行ったりすることはほとんどない。なので、職場では、それまでのお付き合いとは疎遠になることが多い。

もちろん、退職後でも相手から誘われるなら話は違うけれど、実際には誘われることはほとんどない。職場では、それぐらいに薄い人間関係で過ごすことにしていたのだから、当然と言えば当然だ。

なんといっても、一人で行動する方が気楽だし、家に籠ることも苦にならないのだから、今までずっとそれでよしとしてきた。

ところが、ここ数年の数回に渡る転職により、とても興味深い人達と出会い、今、すごく面白い状況になっている。

いつもニコニコ、真剣に作業に取り組む美大出身の○○ちゃん。私より3か月遅れで同じフロアの違う班に派遣されてきて、コミュ障かってぐらいにおとなしくて、大丈夫かなと内心思っていた子。

あまりに他のスタッフと馴染めてなくて、同じ派遣会社繋がりとおばさんのおせっかいから、ちょっと声をかけたのをきっかけに、たまに顔を合わせれば話をする仲に。

もう一人は、その私たちのフロアを統括する一番偉い人、△△さん。全くの畑違いのフロアからの異動で、とにかく忙しそうな人。だから、私のような下っ端の派遣との接点はあまりなかった。

それでも、古株揃いで問題ありのスタッフたちとの間に入ってくれて、仕事の調整などにも気を配ってくれた。この人の下ならもう少し働いてもいいのになと思わせた人。

ただ、この二人とは私の退職をきっかけに、ご縁が切れるはずだったのだが…

私の退職日、○○ちゃんから思いがけずプレゼントをもらった。職場に菓子折り一つしか用意していなかった私は、後日(といっても1カ月も経ってから)そのお返しを渡すために○○ちゃんを食事に誘った。

実際のところ、二人で会って話が続くものなのだろうかと内心ドキドキしながらだったのだが、会ってみたらそんな不安はすぐに吹っ飛んだ。

とにかくしゃべる、しゃべる。最初こそ仕事の話だったけど、途中からは完全に普通の友達のような会話に。
そして、話してみてわかったのが、○○ちゃんは相当なヲタクであること。それもかなり奥の深い、あらゆる分野に長けている、正統派のヲタク。
なので、推しは違えど、私のヲタク気質とも通じるものがあり、一気に距離感が縮まり意気投合。当たり前のように翌月も食事に行くことになった。

そして、話はそれだけで終わらない。

翌月の予定を決めるにあたり、誘いたい人がいるというから、誰かと尋ねると、なんと△△さん。

一介の派遣社員とフロアのトップ。実は、陰では密かに愚痴を言いあう同士であるとの告白。

もうなんだかよくわからない状況だったが、とにかく年齢も立場も全然違う3人の密会が決まり、先日その第一回目が行われた。

△△さんは元上司の偉い人。人となりは知っているけど、こういう形で会ったらどんなものかと思っていたが、そんな心配は全くいらなかった。私はすでに退職済、なんの垣根もないと、ぶっちゃけ話が出るわ、出るわ。

が、仕事関連の話は前半に少しだけ。気が付けば、あとはヲタク話が中心で、△△さんもなかなかのヲタク気質の持ち主だった。

そして言うまでもなく、それはとても楽しい時間で、もちろん第2回目の密会もすでに決定済だ。


こうして考えてみると、本当にご縁とは不思議なものだ。職場という私にとっては奇薄な人間関係であった場所から一歩外へ出たとたんに、急に奇妙な人間関係へと変貌してしまった。それに、最近は一旦切れてしまったご縁がまた繋がったりもした。

こういうご縁は、神様が悩み抜いて決めているのだろうか。それとも、あみだくじのようにランダムに決められているのだろうか。などと家に籠って考える暇もないほど、私のスマホのスケジュール表は予定でいっぱいだ。

でも、こんな生活も悪くはない。なんといっても、楽しい時間を過ごせることがわかってるのだから。


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