ラップとネットライムと自分

一時はラップをまじでやってた友達Aが、ちゃんとラッパーとして活動始める前、ライムで遊ぼうぜ的な事を言ってきたのが多分高校三年の時でした。あとPという友達がいて、AとPを含む3人で曲を作るていで"verse" "hook"とか言ってリリックを考えていました。誰かがテーマを出し、それに沿って韻文を考えました。

韻の作り方はAに習いました。

自分はB-BOYには程遠い人間でしたがまあ楽しかったです。3人で10個近く作ってたんじゃないかなと思います。河原で3人でラップしてみたりした事も10代の頃ありましたが、自分は明らかに向いてなかったと思います。まともな曲になったものは一つもありませんでしたが楽しかったと思います。

ジャパニーズヒップホップを聴くのにハマったのはAの影響でした。大体順番的にはジブラのソロのアルバムが多分最初で、そこからニトロマイクロフォンアンダーグラウンドと各人のソロ、ツイギー、ユーザロック、餓鬼レンジャー、ブルーハーブ、降神などにはまりました。

ライムで遊ぼうってなった最初の頃、ラップにはタイプで分けるとライム系とフロー系があるってAが言ってました。そんな用語はないかもしれませんし妥当な言葉でもない気はしますが(特に前者は)感覚的にはわかります。

ジブラやユーザロックはライム系でポチョムキン、ツイギー、志人はフロー系です。そうだと言って仕舞えばそうだと思います。

どっちも好きでしたがフロー系の方が自分はより好きでした。

それでそんなライム遊びをやっていたのは多分17,18の時で、その後AはMad Anglerというヒップホップクルーを作ってクラブで活動を始めました。3MC1DJのクルーで何回か観に行きました。たぶんIndigoとかVibeとかJailとかそんなクラブです。

一方自分はラップの才能は無いと思ってましたし、バンドとかの方があってたので、そっちを頑張ってました。あとは寝てました。

そんな時、Shrine Gateという掲示板を知りました。ネットライムです。ネット上でライムするわけです。くだらないと思うかもしれませんが暇なら最後まで読んでください。

Shrine Gateは「歌詞→Hip Hop系(通称歌詞系)」という個人運営の歌詞掲載サイトの一部でした。歌詞系にはもうひとつ、Rime Shrineという掲示板がありました。

そこで何が行われるかというと、ネットライムバトルです。くだらないと思うかもしれませんが暇なら最後まで読んでください。

「dis3回」大体これです。で、見ず知らずの人に文字で韻踏んで3周するまで文句言いあう訳です。くだらないと思うかもしれませんが、覗いてみるとそこにいたネットライマーたちが本当に素晴らしかったのです。大体、その時医学生二年目くらいでしたし勉強とかできる人ばっかりしかいないような環境で15歳以降生きてましたので、語彙力とかは平均以上にあるだろうと思ってたんですが、普通に結構負けました。まあまあ勝ってもいました。Shrine Gateで3連勝するとRime Shrineに行けるので、なんとかGateで3連勝してShrineに行きました。Shrineの、ネットライマーのレベルは凄まじく、これはもうアートだと自分は思いました。本当に凄い人のネットライムはもうアートだと思います。

当時そこにいた人たち。向こうは覚えてないかもしれませんが自分は結構覚えてる人たちがいます。

自分がShrineに上がった頃先にそこにいた人たち、敬称略にしますがmopman、ふぁんく、荒蜘蛛、つうはん、Taiki、こすり、かえる、追憶に潜む証人、Nuru蜂、凱騎、C-BOY、UNCHAIN、ZOMBIE、韻シュガー、monky、バスタ、赤馬、Tea、レジスタンス、あぽりあ、ema、などなど。ふぁんく今や非常に有名人ですが一回挑んでガチでズタボロにやられました。自分。21歳。あっち、16-7とかでです。普通に無理と思いました。超天才でした。


そのあと出会った人たち、SQWAD、じょり、でぃお、えみぞと、自分と、友達のAで、ネットライムクルーというやつを作りました。Apocalypseというクルーでした。

じょりくんはバンドマンでした。今どうしてるんだろう。SQWADさんはいい兄さんて感じでしたね。でぃおもバンドマンでした。話が合いました。

信じられんような話ですが、えみぞさんはですね、Aと付き合ったんですよ。歌詞系で出会ってその後付き合ったのです。大体Aはコミュニケーション能力が高く昔からモテましたが。たぶん付き合ったのが2006年くらいで2020年の今でも付き合ってますから凄い話です。ほぼ結婚してるようなもんだと思いますがそんなんネットライム界全体で見ても彼らだけでしょう。

Aとは普通に年に1,2回会います。えみさん、でぃおとは直接会った事ないんですが未だにSNS上では繋がっていてやりとりする事もあります。15年の間会った事なくて繋がりがあるの我ながらすごいと思う。

みんな関東いるので自分以外は会ったりすることもあるみたいです。


少し話が戻ります。ネットライムを始めたのが2005年でたぶんハマってやってたのはせいぜい2007年くらいまでかなと思います。

2007年くらいは夕暮れとか鼠とかいうリアルラッパーと出会ったりもして、またクラブに一時期行ってもいました。

改源ナイトという最高なローカルHip Hopイベントがあっていました。夕暮れとネズミ以外では敬称略でKhaos Operation Crew、Blue Print、Grinerといった人達を結構観てました。2020年になってBlue Printと同じコンピレーションアルバムに自分が入るとは思いませんでしたねほんと。

鼠本当に天才だったと思うんですけど。今もCDR持ってます。テンタクルスモークのキーボードの人とかも客演したりしてたんじゃなかったかな。夕暮れの1stにも客演してましたね。

その頃ですね、UMBが流行ってました。自分も観に行って相当感動してました。まあ、フリースタイルはHIPHOPの一面に過ぎないんだろうと思いますが、あの時は楽しかったです。Lee vs 鼠、忘れられません。

Leeさんは今もトラックメイカーでバリバリされています。何年かに一回熊本にも来ますね。


話を戻します。

2005年にRime Shrineに上がった頃、既に(その時期には)もうあんまり書いてなかった巧者もいました。Nipp2、Chicag023、喩姫、Conceit、GNSA、s??????tと言った名前の人たちです。どんなシステムだったか忘れましたが殿堂入りっていうシステムがあった気がします。

また、別の話ですが歌詞系以外のネットライムサイトとしてパスタストリート、Nua Nua Nua、火星、韻化帝国、Respect B-Boyというサイトが同時期にありました。少し遅れて王韻場、Rhymes Boardというサイトが出来てたような気がします。

そして、2ch、mixi、モバゲーでネットライムする人も増えました。

2009年、もう自分はほとんどやってませんでしたが、「サイト対抗戦2009」が開催されました。そこで、それまで、知らなかった新しい人たちや他サイトの人たちを知りました。

敬称略で、型月、闇輝、黒死Q、韻踏まん、などなどの人達です。上手な人たくさんいました。

サイト対抗戦2009はApocalypse vs 王韻場で一回戦敗退したんですよね。残念でした。

その時の一番な衝撃は韻踏まんです。あれも超天才だと思いました。優勝はふぁんく含む歌詞系Aチームでしたがもう異常者しかいないレベルでした。脳がおかしいと思いました。

歌詞系が消滅したのはその直後だったでしょうか。突然サイトが消えました。悲しかったです。

それからここ10年くらいはほとんどネットライムに関わってなかったんですが、ネットライムポータルというアカウントにフォローされて、覗いてみると、観たことある名前が見られる。。

http://netrhymepotal.com/

Rime Shrineに自分が初めてあがるより前にいた人、Chicag023、凱騎という名前はそうです。15年以上前からやってる。。

それから2009サイト対抗戦で負けた王韻場チームの

韻踏まんがいる。

韻踏まんは全く絡んだことないですし全然絡みたくないですがすごく好きです。2009の韻踏まんvsARUNA衝撃過ぎたのですがもう消えてて見れないので残念です。コピーしとけばよかった。

韻踏まんのバトルあったので貼っておきます。。なんと最近の。11年前と同じノリで一貫して異常者。。


歌詞系はやたら押韻という言葉に厳しかったです。イントネーション含め完全に合わせる、という定義がmopmanという人を中心に決められていました。

「ん」や「ー」などは曖昧にしがちですが、それは許さず、まず母音を完全に合わせた上でイントネーションまであっているものだけを「押韻」と呼んでいました。一方、母音はあっているけどイントネーションがあっていないものは「母音合わせ」と呼ばれていました。母音が完璧に合ってない、けどなんとなく合ってる、ようなものはフロー韻と呼ばれていました。

例えば、

①ホコリを吸い込み咳き込む僕

②頭がいかれてエビを口説く

③線の切れかけた蛍光灯

④生徒逃げ出した剣道場

これは一つも押韻ではないということになります。



①から③までは母音合わせで④はフロー韻です。

厳密にイントネーションを合わせたものだけを使うとなると本当に難しいのです。

散らかった机 探し物の行方

これは流石に押韻で良いと思います。が、やっぱり文字数増やすとかなり厳しくなってくる。mopmanという人は押韻非常に上手でした。五文字以上とかでもかなり同じ母音で続ける事ができててすごいと思ってました。

では音楽の上だとどうなるでしょうか。

自分の曲の歌詞で考えてみます。

Klagenicole/今夜は眠い

①一つ塗りつぶした絵筆

②後付けで作り替える絵

③悪夢のあと薄い汗夢

④緊張ですぐに醒める眼

文字上だけで見ると①②は良い感じの押韻に思われます。あとは、母音合わせです。しかしですね、歌にするとメロディ、リズムにあわせてイントネーションは変わってしまうわけで、実際には②と④のイントネーションが同じとなるようです。気になる人は7:55秒からの今夜は眠いで確認してみてください。



文字をただ日本語として読む場合と音楽に載せる場合でイントネーションは結局変わってしまいます。ならば、音楽に合わせるための詞を考える上では厳密な「押韻」にこだわる必要はなく、「母音合わせ」もしくは「フロー韻」で十分だろうと自分は思うわけです。自分は割と長めの母音合わせが好きです。できれば文字で書く上ではフロー韻よりちゃんとした母音合わせにしたいと思っています。

しかし、歌詞系というサイトは押韻に厳しく、あれは美学だったと思っているので、母音合わせに対して「押韻」と言う言葉は使いたくないというのは思います。ただの、必要性のない、くだらないこだわりかもしれませんが。

今も昔もくだらないと思われがちなネットライムで、mopmanという人らはネットライムを、特に押韻を一つの言葉の芸術として形にしようとしていたと思います。押韻詩作サイトパンゲアというmopmanさんたちが歌詞系の末期に立ち上げた詩作サイトがありました。結果としてそんなに盛り上がってはいなかったかもしれませんが、その試みと野望のようなものは大真面目で、本当に敬意を表したいと思います。

結構みんなですね、自分がリアルで繋がりのあるネットライマー、元ネットライマーはリアルでも面白い人とか、実際にラッパーだったりとか、今は立派な仕事をしてるような人とかばっかりです。

人によっては笑うと思いますが自分はこのネットライムというものに20歳くらいの頃少しハマっていたことを誇りに思います。


田中事件 a.k.a. RAKEN










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?