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現状維持バイアス|変わりたいけど、変われない心理

ダイエット、恋愛、転職、副業、スキルアップ。僕らは日々、様々な目標を立てて理想の自分を追い求めています。しかし現実は、目標を達成できず挫折したり、行動に移すことすらできないまま時間だけが過ぎていくことも少なくありません。

「変わりたい」という気持ちとは裏腹になかなか一歩を踏み出せずにいる。誰もが一度は経験する、このもどかしさ。

実はそこには「現状維持バイアス」という深層心理が深く関わっています。この記事では、変化を望みながらも変われないジレンマを生み出す「現状維持バイアス」について解説していきます。

そして、バイアスを克服し、本当に望む自分へと変わるための具体的な方法を紹介します。行動できない自分に悩む人はぜひご参考までに。


1. 現状維持バイアスとは?

現状維持バイアスとは、たとえ現状に満足していなくても、未知なる変化より、現状維持を過剰に好む心理的な傾向のことを指します。

具体例として、
・給料や待遇に不満がありながら、「転職活動がうまくいくか不安」という気持ちが先行し、今の会社に留まり続ける。

・恋愛でいつも同じパターンにはまってしまうと自覚しながら、「新しい相手と出会っても、うまくいくかどうかわからない」という不安から、現状の関係を続けてしまう。

・新しい商品が魅力的に思えるけど、味や品質が未知だから、結局いつものメニューを頼んでしまう。

これらの事象は全て現状維持バイアスの影響を受けた結果と言えます。

2. 現状維持バイアスのメカニズム:心理学、脳科学からの考察

現状維持バイアスは、脳の働きや心理的なメカニズムと深く関連しています。

【損失回避】
「損失回避」という心理バイアスがあります。行動経済学では、人は「得ることの喜び」よりも「失うことの痛み」をより強く感じるという「損失回避性」を持つとされています。

変化には、必ず何らかの「損失」が発生します。例えば、仕事を辞める場合、現在の安定収入や人間関係を失う可能性がありますし、新しい習い事や挑戦を始める場合、大抵は時間やお金を費やすことになります。

現状維持バイアスに陥る人は、この「変化に伴う損失」を必要以上に大きく見積もる傾向があります。結果、変わることへの不安や恐怖心が生まれ、行動のブレーキとなってしまうのです。

【脳のエネルギー消費】
脳科学の観点からも、現状維持バイアスは説明できます。僕らの脳は、非常に多くのエネルギーを消費します。そのため、脳は可能な限りエネルギー消費を抑えようとする省エネくんです。

そして新しい情報や行動を取り入れて変化に対応するには、脳は活発に活動し、多くのエネルギーを使う必要があります。

一方、現状維持であれば、新たな情報処理や意思決定の必要がなく、脳への負担を最小限に抑えることができます。つまり、脳は本能的に現状維持という楽な選択が大好きなわけです。

【習慣化と安心感】
また人は、繰り返し同じ行動をとることで、その行動に慣れ、安心感や居心地の良さを覚えるようになります。

つまり現状とは、過去の経験に基づいた「安全地帯(コンフォートゾーン)」であり、多くの人はここから抜け出したくないのです。たとえ今の生活に不満があったとしても、未知なる変化に伴う不安やストレスに比べれば、現状維持の方が実はストレスなく過ごせるため、変化を避ける行動をとるのです。

3. 現状維持バイアスがもたらす影響

現状維持バイアスは、リスクを回避し、心の安泰を維持する合理的な行動選択です。しかし実際問題、個人や社会に様々な悪影響を及ぼしています。

「個人レベルへの影響」

  • 成長機会の損失: 変化を恐れて行動を起こさなければ、新たなスキルや知識を身につける機会を失い、自己成長の機会を逃します。

  • ストレスの蓄積: 現状に不満を抱えながらも変化できずにいると、ストレスが蓄積し、心身に悪影響を及ぼします。

  • 後悔の念: 行動を起こさなかった人は、ほとんどの場合、「あの時、行動していれば…」と後悔する時がやってきます。

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「ビジネスへの影響」

  • イノベーションの阻害: 新しい技術やアイデアを取り入れることに抵抗が生じ、イノベーションが阻害されます。

  • 競争力の低下: 変化の激しい市場において現状維持に固執すると、競合に後れを取り、競争力を失います。

  • 意思決定の遅延: 変化を恐れるあまり、意思決定が遅れ、ビジネスチャンスを逃してしまいます。

  • 組織の硬直化: 新しい風土や文化を取り入れることを拒み、組織全体が硬直化します。

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「社会全体への影響」

  • 社会変革への抵抗: 新しい制度や政策を導入する際に、抵抗勢力となり、社会変革を阻害することになります。

  • 多様性の欠如: 新しい価値観や文化を受け入れにくくなり、多様性に欠ける社会を生み出します。

  • 技術革新の停滞: 新しい技術の導入や普及が遅れ、技術革新を阻害します。

令和の時代は昔に比べたら風通しが良くなったと感じる人も多いでしょうが、これは言い換えると現状維持バイアスが社会的に弱くなったとも言えますね。(まだ課題は山積みですが。)

4. 現状維持バイアスを克服する方法:具体的な6つのステップ

現状維持バイアスの悪影響を理解したところで、その影響を最小限に抑え、本当に望む自分へと変わるための方法を具体的な6ステップで紹介します。

ステップ1. 現状維持によるメリット・デメリットを書き出す
まずは、現状維持によって得られているメリットと、変化しないことによって生じるデメリットを、それぞれ具体的にすべて書き出してみましょう。

例えば、あなたが「転職したい」と思っている場合なら、

現状維持するメリット
当面の生活費の心配がない、月に〇〇万の収入を得られる
・職場の人間関係に大きな問題はない、知り合いが多い
・仕事内容をある程度把握しているので大きなストレスはない

現状維持するデメリット
・給与水準は低い、将来的な報酬UPも期待できず長期的には不安
・スキルアップの機会が限られている、自身の成長を感じられない
・理想の未来に辿り着く道筋を作れるイメージが湧かない
・一生いるつもりがないので長くいるとより辞めづらくなる

ポイントは思いつく限り全て書き出すことです。
自覚してるメリットとデメリットを可視化することで、自分が何を得て、何を失っているのかを客観的に把握することができます。

ステップ2. 本当に望む未来を具体的にイメージする
現状維持バイアスは、「変化に対する漠然とした不安」によって強化されます。逆に言えば、変化によって得られる未来を具体的にイメージできれば、行動意欲を高め、バイアスの影響を弱めることができます。

・どんな自分になりたいのか?
・どんな生活を送りたいのか?
・どんな未来を手に入れたいのか?

具体的な収入やライフスタイルなど自分の価値観やビジョンに基づいて、本当に望む未来をできる限り詳細にイメージしてみましょう。これも書き出して視覚化することをオススメします。

ステップ3. 小さなステップを設定し、行動目標を明確にする
合理的に判断した結果、変化を起こすべきだと分かったら次にアクションです。まずは達成可能な小さなステップを設定し、具体的な行動目標を明確化しましょう。

例えば、「転職する」という目標を立てた場合
・1週間後までに、転職サイトに登録する
・2週間後までに、興味のある企業を3社ピックアップし、企業研究を行う
・3週間後までに、履歴書と職務経歴書を作成する

このように期日とともに小さなステップに分けて目標を設定することで、心理的ハードルを下げ、行動が起こしやすくなります。

ステップ4. 行動の障害となる要因を特定し、具体的な対策を考える
次に行動に移せない理由を具体的に分析し、その解決策を検討しましょう。

例えば、「転職活動したいけど、時間がない」という場合、
・毎日30分の残業時間を削減し、転職活動の時間にあてる
・週末の1日を転職活動に充てる
・転職エージェントを利用し、効率的に活動を進める

このように障害に対して具体的な対策を立てることでより行動に移しやすくなります。

ステップ5. 「if-thenプランニング」で、行動を習慣化する
「if-thenプランニング」とは、「もし~ならば、~する」というように、具体的な状況と行動を結びつけることで、行動の自動化を促す方法です。

例えば、「毎日仕事が終わったら、〇〇のカフェに行って30分間転職活動の準備をする」というように、具体的な状況と行動を結びつけることで新しい行動パターンを身につけやすくなります。

ステップ6. 小さな成功体験を積み重ね、自己肯定感を高める
目標達成の過程で小さな成功体験を積み重ねることは、モチベーションを維持し、行動を継続するために重要です。

小さな目標を一つ達成するごとに、自分を褒め、達成感を味わうようにしましょう。そのためには日々行う活動をしっかりと記録して後で振り返れるようにすることです。

そして、成功体験を積み重ねることで自己肯定感が高まり、さらなる行動意欲へとつながります。

5. まとめ:現状維持バイアスから抜け出し、なりたい自分に

・現状維持バイアスとは現状維持を過剰に好む心理的な傾向のこと
・損失回避の心理、脳のエネルギー消費、習慣化と居心地の良さがバイアスを促進させる
・バイアスは個人から社会規模まで多大な影響を与えている
・6ステップを活用して現状バイアスから抜け出せ

変化は不安や恐怖が伴いますが、同時に成長と進化の機会でもあります。

自分自身の可能性を信じ、積極的に変化をしていきましょう。


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