Claud『Super Monster』ミスタービッチをきみへ
KKV Neighborhood #77 Disc Review - 2021.03.12
Claud『Super Monster』(Saddest Factory SAD001)
review by うし
「名曲は始まって5秒でわかる」とは至る所で聴く音楽愛好家の格言?であるけれど、皆さんはそれを体験したことがあるだろうか。音楽の聴き方がサブスク中心になってきたこの時代にもあるのだろうか。自ら検索すればすぐに聴きたい音楽を聴ける今、どれくらい未知の素晴らしい音楽と出会う機会があるだろう。自分だけに特別に響く音楽と。
ふとした瞬間に知らない曲が流れてくる、それは散歩中にふらっと寄った本屋や雑貨屋、レコード屋の店内や視聴機のへッドホンからでも、ラジオ、サブスクのシャッフルでだってきっと同じはず、さまざまな忘れられない景色の中で音楽はたまに向こうからやってくる。
ふと流れたイントロにただならぬ胸騒ぎを覚えて5秒も立たずボリュームを上げる。その胸騒ぎは嘘をつかない。
10秒後には胸の高鳴りと共に自分だけの名曲と出会ったことを大事に確かめ、至福の時間にのめり込む。
そんな大事な記憶と共にあるレコードが僕にはいくつかあるのだけれど、2021年もしっかりやってきたそれが、このClaudの『Super Monster』に収録の“That's Mr.Bitch To You”とゆう曲だ。
アルバムの中では異彩を放つこの曲は、「Take one, He called me a bitch.」と語られて幕を開ける。只事ではないし、只事ではないアイディア。
調べてみればアメリカ・ブルックリンを拠点に活動するシンガーソングライターClaudと名乗るClaud Mintzはノンバイナリー(自らを男性と女性、そのどちらかに限定しない第三の性)である事を公言しており、きっと苦しんだ過去、または苦しい日々を持つClaud本人と同じように、苦しむ誰かを救うようなメッセージがこの曲にはあるように思う。
歌詞を僕なりに訳した
テイク1 、彼はわたしをビッチと呼んだ
正直、きみがタマを持っていてくれてありがたく思う
犬のように激しく対峙するために
わたしはきみが思ってるより"わたしは強い"とゆうことに目をつぶった
賭けてもいい
あなたは知らない
わたしがストレートの男性に惑わされることなんてないってことを
ミスタービッチ ミスタービッチをきみへ
ミスタービッチ それはきみ
賭けてもいい
きみのお母さんは「あなたはダメな子だ」
ってあなたに告げた
きみはそれを信じて
まだうろうろしてる
でも私の場合
毎日、懸命に生きてきたし
自分自身でいられる、自分自身で居続けられる
そんな場所を手に入れるために
ベストを尽くしてきた
ミスタービッチ ミスタービッチをきみへ
んー、すごい。
そしてやっぱり何より、曲が素晴らしい。
リズムとメロディと声が全てを吹き飛ばす。
僕の目は曇ってしまったかもしれないけれど、視界は良好だ。こんな曲に鼓舞されながら明日も一歩ずつ踏みしめて生きていく。
「メラニーフェイ!!」と叫ばれ登場するフューチャリングのMelanie Fayeのギターソロものけぞる良さだし、彼女の人となり、ギターを弾く姿と眼差し、彼女自身の奏でる音ものちに調べて感激したことも追記しておきます。
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