BORIS「Pink」 大文字「BORIS」の絶頂 ~ 下北沢シェルターの時代から次へ by 長谷川文彦
KKV Neighborhood #133 Disc Review - 2022.06.03
Boris『PINK』7'inch review by 長谷川文彦
『Heavy Rocks』以降のBorisは「BORIS」としても「boris」としても快調に飛ばしていた。「BORIS」としては『あくまのうた』を、「boris」としては『boris at last -feedbacker-』をリリース。どちらもBorisの両翼に振り切った傑作だった。
この頃、彼らはよく下北沢のシェルターでライブをやっていた。シェルターで観た何回のライブはいずれも素晴らしかった。ワンマンやGREENMACHiNEとのツーマンなど、あのシェルターでの濃密な空間で鳴らされた激しい轟音は今でも忘れられない。この頃、自分が日本で一番好きなバンドはBorisだったかもしれない。
そして、その勢いの先に、大文字のBORISとしての絶頂とも言える『Pink』がリリースされた。
大文字のBORISの流れを強力に進めた頂点でありながら、小文字のborisとしての要素も上手く取り入れ始めていて、「BORIS」と「boris」が統合された「Boris」の先駆けのようなアルバムでもあると思う。
「決別」の壮大な轟音、その余韻をぶった切って切り裂くようなイントロを放つ『Pink』。ライブではいつでもその場の空気を一瞬で変えてしまうこの曲のイントロはいついかなる時であっても絶対的な有効性がある。この曲が始まった時のオーディエンスが期待感を爆発させる反応は今でも変わらない。
このアルバムのレコ発が2005年の12月にシェルターでワンマンで行われた。告知されてから実際のライブまでかなり時間があって、その間ずっとものすごく楽しみにしていたのを覚えている。しかし当日仕事が入ってしまい、でもどうしても観たくて、しれっと仕事を抜け出して観に行った。
ライブの冒頭、スモークでほとんど真っ白になったステージから緩やかなフィードバック音が流れ、WATAのガーンというギターの一撃から「決別」が始まった。スタジオ録音の数倍のスケールで展開されたこの曲の後に、その残響音を切り裂くように「Pink」が続く。ここまでで30分経っていた。それから全部で1時間40分、アルバムの世界観を存分に伝えるだけでなく、この時点のバンドの極みを伝え切った凄まじいライブだった。
これ以降、Borisはライブの会場をシェルターから代官山のユニットに移していく。より大きなスケールへの階段を登りつつ、BORISとborisを融合させ始めるフェーズに入る。でもシェルターで観た・聴いた・感じたBorisの凄さを忘れることはないだろう。その記憶は『Pink』というアルバムと繋がっている。
Boris30周年シングルシリーズ第1&第2弾は、アルバム『Heavy Rocks』(2002年)、『PINK』(2006年)から。
今回の新規カッティングにあたって、TDマスターまで遡ってリマスタリング。各アルバムの代表曲を2曲づつ、改めて7inchフォーマットでシングルカット。
6月10日発売 PINK
KKV-140VL
収録曲
Side A : PINK
Side B : スクリーンの女 ーWoman on the Screenー
1,650円 税込
予約受付中!
https://store.kilikilivilla.com/v2/product/detail/KKV-140VL
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