驚きの喫煙マナー;イギリス人医師と議論してみた

2007年から屋内全面禁煙。でも歩きタバコもポイ捨ても当たり前なのはどうなの?

留学に来るまで、ヨーロッパと言えば禁煙先進国のイメージで、街中でタバコを吸うだけでも白い目で見られると勝手に思っていました。

ロンドンに来てまず驚いたのは公然とタバコを吸う人達の光景です。街中でも歩きタバコは普通。ビジネスマンも若い姉ちゃんもみんな大量の煙を吐きながら歩いています。
中心街での歩きタバコ禁止条例が進み、喫煙コーナーでも電子タバコの人がほとんどになった日本ではもはや見ない光景です。

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(喫煙者の皆さんにカメラを向けられなかったのでネットから拝借:https://rocketnews24.com/2019/09/05/1258814/)

路上喫煙にはとても寛容なようで、パブでもカフェでも屋外テラスを設置し多くの愛煙家がくつろいでいます。観光客の多い大通りにも灰皿(タバコ用ゴミ箱)が設置されていますが間に合わず、路地裏には多くのタバコがポイ捨てされている状況です。
今はイングランド西部の田舎町でインターンをしており、ここでは歩きタバコは見ないなと思いましたが吸い殻がちょくちょく落ちているのを見ると人口が少なくてまだ歩きタバコに出会ってないだけかなと思います。。。

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観光客のあふれるRegent Streetでも路上喫煙は当たり前。

現状は禁煙というより分煙。でも喫煙率は着実に下がっている。

 「これは禁煙というより分煙だ」と感じました。知り合った同世代のイギリス人たちもあまり否定的な意見は無さそうです。非喫煙者≒嫌煙家の日本では喫煙者の肩身は狭そうですしタバコの匂いすら嫌う人も多いですが、イギリスではもう少し気が楽になりそうです。確かに路上喫煙に遭遇しても歩いて逃げれば受動喫煙はほぼ防げますね。
 喫煙に寛容な国なのかなとも感じましたが、屋内全面禁煙の施行以降、喫煙率は着実に下がっています。導入時は24%だった喫煙率は10年間で10%低下しました。政府はこの傾向は今後も続くと予測し、特に喫煙率が高い経済状況の困窮した人達をターゲットに対策を考えています。


イギリス喫煙事情について、現役UK GPと議論してみた。

ホームステイ先のホストマザーは家庭医(GP: General Practitionar)として地域の喫煙者もたくさん見てきた先生です。せっかく留学に来たので疑問に思ったことを彼女にぶつけました。

 ー 路上喫煙が多すぎて驚きました。
屋内はどこでも禁煙だからね。でも喫煙者は確実に減ってきていて20年前は考えられなかったけど、今では屋外でも人通りの多い場所は禁煙にしようという動きもある。

ー 禁煙のために診療所に来る人も多いですよね
たくさん見てきたよ。禁煙のためには集団療法が効果があるというのが通説だけど、中にはグループは苦手という人もいるので個人面接も用意している。その人の好みに合わせてフォローアップのスタイルを変えられるんだ。

ー 喫煙者は確実に減ってきていますがその理由は何だと思いますか?日本ではイギリスほど上手くいっていません。
タバコのイメージがとても悪くなったのが大きいと思う。学校でもリスクを教えているし、パッケージにも恐ろしい警告がいっぱい。タバコはスーパーでも買えるけどシャッターの中に隠されていて気軽には見つけられない。社会の中でも「タバコを吸う人は生活に困った卑しい人だ」というイメージも強いんだ。あとは値段もとても高いから。1パック15ポンド(約2000円)もするんだ。タバコを毎日買う代わりにご飯や映画を我慢して、ランチもティータイムも屋内の友達とは楽しめなかったら、何もメリットが無いと感じてしまうよね。
結果的に、禁煙のための好循環に入ったんだと思うよ。

世界に先駆けて禁煙治療を無料で始めたイギリス。ちょっと古いデータですが、医師の禁煙アドバイスの機会も多いようです。ホストマザーの先生の話では、「禁煙治療」なんてかしこまらずに日常的に相談に乗っている印象でした。

そんなイギリスでは次の健康ターゲットとして肥満や若者の飲酒問題に取り組んでいるようです。

イギリスでは成功している禁煙政策が日本ではなぜ進まないのか?(個人的意見)

タバコは健康の社会的決定要因としても重要で、日本でも事情を知る機会はいくつかありました。厚労省インターンや公衆衛生のセミナーを通して個人的に感じたことは以下の通りです。

✔ 経済界の反対が強く税率を上げられない。JTの株式の1/3は国が保有し実質国有企業となっている。経産省は税率を上げると煙草税収が下がると考えている(by 厚労省の方のぼやき)
✔ 市民・政治家の無理解。麻生さんが「タバコってガンと関係あるの?」って言っちゃうように、どれほどリスクが上がるか広まっていない。
✔ 電子タバコが普及し(安全性は未解明)「葉巻たばこより健康リスクが低い」「よりカッコいい」などの実質喫煙者は減っていない。

日本は何より政治的な障壁が大きいようです。でも政治家を選ぶのは国民だし、禁煙を成功させてきた欧米は市民団体が長年ロビー活動を続けてきた歴史もあるそうです。まず僕ら(医療者)にできることはタバコのリスクをしっかり広めることでしょうか。タバコをやめられない生活上の理由まで思いを寄せたいですね。

この記事を読んでいる人に、政治や経済界に進む人がいるなら、是非勇気を出して日本のどうしようもない煙草事情を変えてほしいです。みんな投票しますよ。


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