Make a Spark, and...
こんばんは。当直しながら、メモを整理してたら昔の書きかけ記事が出てきました。去年の10月、僕の人生を変えるほどの経験をくれたフルームでのリポートです。
帰国してすぐ国家試験に追われ、4月から研修医として社会とコロナに揉まれる中で、たった半年前の夢を忘れかけていました。
こんなにすぐ夢って忘れてしまうのか。。。でも読みながら心にかすかな火が付きました。
少し恥ずかしいですが、当時の記事をそのまま出します。どんな現実でも逆境でも、この火/sparkは何度でも燃やしてやる。
フルームでの実習を終えました。
病院で、カフェで、町中の見知らぬ人に笑顔で話しかけて書いてもらった120人分のアンケートは、英語とコミュ力と度胸を鍛え、この町の魅力と人の優しさを教えてくれました。
何より、このアンケートがフルームの町をもっと元気にすることに役立ってほしいと願っています!
イングランド南西部、Frome/フルームという小さな田舎町は歴史を大切にしながら人々が助け合って暮らす、とても素敵な町です。
でもこの町は「医療者がまちつくりを始めた」というユニークさもあり、イギリス政府の新しい健康つくり政策=社会的処方のモデルの一つになりました。今でもフルームは優等生として世界中からも見学が絶えません。ここまで上手くいった秘密をちょっとだけ、僕が実習を通して感じた事を紹介します!
ちなみに、前回の記事とフルーム自体の紹介は以下の記事を見てみてください。
4、フルームの秘密:組織として
組織として驚いたのは機動力の高さでした。現金な話ですが、英国政府が乗り出すまで社会的処方は保険適用外(=お金にならない)でした。それでも必要だと感じて始めましたが全ての医師が協力的なわけではなく、医師が診察中に患者さんに対してすぐに情報を提供できるように、電子カルテに町中のグループ・クラブのリンクを貼り付けたのです。カルテを書きながら薬をオーダーするように、「こんなものがありますよ」ってすぐ渡せるシステムを作りました。
また、社会的処方の専門スタッフ(フルームではhealth connectorと呼ばれます)たちは、地域のグループを運営する中で「こんなグループが欲しいな」と聞けばオフィスに帰ってすぐにホームページ内に新グループを追加します。そして町の新聞・ラジオなどにメンバーを呼びかけます。この流れに上司・同僚への相談は要りません。
僕が見学している間にも、老人ホームのスタッフに耳掃除の講習会をやりたいという相談にのり、それを後から知った上司は喜んで、聾唖者のチャリティー団体からの資金調達を始めていました。この組織の信頼関係がスムーズさを生み出していると感じます。
5、フルームの秘密:町として
そして町としての強みは、助け合いの精神がとても強いことです。これを活用して診療所は「人の標識作戦」(勝手に名付けました笑)を展開しています。
社会的処方が必要な孤独な人や経済的に苦しい人って、そもそもポスターを毎日チェックしたり必要な情報を得られる場所を知らない事が多いと思います(これは証拠はないので偏見ですみません、でもこの傾向はとても強いと思います)
このような「本当に届けたい人」に情報を届けるために、町中の人をリクルートしました。協力してくれる住民に簡単なトレーニングをして、町中の人と積極的に話してもらいもし困っている人がいたら「ここに連絡してね」と診療所のデスクの連絡先を渡してもらうようにしたのです。
バスを待つ間に、スーパーで何気なく、世間話から身の上話になりポロッとこぼした不安を見逃さない。そんなプロがこの町には沢山住んでいるのです。現在は1人20人に話しかけると全市民をカバーできる計算ですがこのサポーターの講習は簡単で増え続けています(僕も受けました!)
6、学んだこと
1人1人の周りの環境をよりよく整えて、足りないものがあればみんなで作り出す。でも個人の暮らしのスタイルを変えることも、まちの人々を動かすことも簡単ではありません。
社会的処方も健康のまちつくりも方法通りにやっても上手くいかないんです。
フルームで最初に社会的処方を始めた医師とhealth connectorからは、一番大切なものは「Trust/ 信頼」だと教わりました。相手を信じて、たっぷり時間をとって話してより良い環境を探す。まちの人々の信頼関係を通して、スムーズに話を進める。
そんな姿勢が何よりも大事だと学びました。
まちづくりが日本でも熱い今、その手法は地域毎に様々です。ただその根っこにある姿勢は日本でもイギリスでも変わらないと思います。
この学びと記事が日本でも役立つと願っています!!
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