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元建築家が自宅をリノベして考えた、「リノベーションの教科書」

4年ほど前、中古マンションを買いリノベーションをしました。

僕は、大学で意匠設計(わかりやすく言うならデザイン)を学んだ後、設計事務所に勤めていました。

建築をやる人にとって「自邸」は相応の思い入れがあります。というのも、自邸はとにかく「自分の好きにやれる」から。著名建築家の中でも、少なくない数が自邸の設計が話題を呼び、名を知られるようになっています。

正直、僕は建築の道を突き詰められない…と思った人間なので、その道でキャリアを積んでいる方と比べては大した知識もスキルもないという自負はありつつ、僕のできる範囲で“好きにやる”のがリノベのテーマでした。

…ただ、物件探しから引っ越しまでの足かけ半年ほど、もう数え切れないほど「失敗した…」「大変すぎる」と思うことばかりでした。業界の知識も、家が作られる流れも、意匠設計の知識があるにしても…です。

はじめに.元、建築家がひくほど失敗したリノベ

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我が家のキッチン。多分ここが一番こだわっている

たしかに、僕は建築の設計を仕事にしてはいたけれど、「リノベーションのプロ」ではありません。担当したのはすべて新築物件ですし、あくまで設計監理業務。リノベーションの設計をする上でのキモであったり、物件選びのポイントといったあたりは、本業の方には敵いません。

また、建築という領域の深さを考えると”元建築家”と言うには忍びないくらいの経験かもしれません。ただ、同じ業界の中で仕事はしていたので、「なぜこうなるか」「どう決まっていくか」「何が大事か」は大体わかる。

でもとにかく大変なことばかり。完成した部屋に対し、「こんなはずでは…」というものがたくさんあるわけではないですが、「大変すぎた…」と思ったのは間違いありません。

そこから4年ほど経ち、同年代の友人知人にもリノベで家を買う人が増えてきました。経緯やポイントなどを聞かれることも増えたのですが、基本的には「マジで失敗して欲しくない…!」と思い半端ではない情報量の話をついしてしまいます。

これは整理しないと全部伝わらないな…と思ったので、失敗・苦労しないために、知っておいて欲しいリノベーションのポイントをまとめました。

なお、この記事は全体で13500字ほどあります。時系列で順番にまとめており、途中からでもなるべく分かるようには作っていますが、前提を都度共有するのは大変なので、冒頭から読んだほうがわかりやすいカモです。

ちなみに、竣工当初ROOMIEで取材してもらった記事が、苦労した点だけは簡単にまとまっているので、参考まで。

0.君が住みたいのは「自分の考える最強の部屋」か「リノベっぽい空間か」

本題に入る前にひとつだけ。ここから先に書くのはあくまで「自分が作りたい部屋がある」「そのためには労力は惜しまない」人のための内容です。

これを前置きするのには、僕自身の失敗があります。僕はいわゆる有名リノベ会社に依頼をして、リノベーションをしました。“自分の好きにやる”つもりだったので、建築家とご一緒せずとも、普通の会社でいいかなと思ったからです。

ただ、リノベ会社と一緒に進める中で驚いたのが、提案してくる部屋のイメージが「あなたにとっての部屋」ではなく「リノベしたいひと、こういう感じの部屋好きですよね?」ってものばかりだったんですね。

「リノベ会社のハウスメーカー化」という言葉で僕は理解しているのですが、端的にいうと、リノベーションが一般化したことで、彼らも「一般解」を持つようになってきているのだと思います。

「自分が欲しい部屋を作るんだ〜!」と息巻いてやるわけではなく、「リノベっぽい部屋いいな」というトーンでリノベを決め具体的な暮らしや空間のニーズがないまま設計が進んだ結果、リノベ会社が「こういうのですよね」とまとめねばないシーンがきっとあるのだと思います。

それが積み重なった結果、最適解としての「こういう感じの部屋好きですよね」提案になったのかなと理解しています。もちろん、それがだめという話ではなく、この記事は僕含めそれで満足できない「自分の考える最強の部屋」を作りたい人向けに書いています。

でないと、この後に書くことは基本納得できないと思うんです。なにせ「めんどくさい」「頭使う」「時間使う」の積み重ねだから。

それをやってでも作りたい部屋がある人は是非続きを読んで下さい。

入居1年後くらいのリビング。インテリアショップのInstagram

1.準備——リノベは準備が8割

さぁ、本題です。

まずは準備から。ここを怠ると本当に死にます(死にました)。ここから先あなたがやろうとしていることは、とてつもなく面倒くさく時間がかかることだと自覚しましょう。

その上でそれをやる余力があなた(および、いる場合にはあなたのパートナー)にあるかはとても大事。それがないと、本当途中で息切れします。

少しだけ僕の話をさせて下さい。僕が家を買ってリノベしようと思ったのは、結婚式の5カ月くらい前。そして引き渡しが結婚式の2カ月後。リノベでクソ忙しくなるときと結婚式でクソ忙しくなるときがかぶったんです。

また、そこに仕事が忙しい時期にかぶったので、結果、日中はもちろん作業できず、夜は寝れず、週末も時間がなくという状態で全部を乗り切る羽目になりました(本当にしんどかった)。なので、皆さんは「心」と「体」にゆとりのある時期に是非やって欲しい。

でもって、その忙しい時の負荷をいかに減らせるかを決めるのが準備なんですね。

基本、物件の決定→契約諸々→設計→設計FIX→見積もりFIXあたりの作業が一番忙しくなるのですが、このあたりはほぼ、「自分たちのニーズの抽出」「空間への反映」「やりたいことの優先度付け」「取捨選択」を主にやることになります。

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リビング/引き渡し時なので、大分きれい

そのときに、「こんな暮らしがしたい」「xxx系な雰囲気に」「この雑誌のイメージが近い」といった抽象的なモノから、より具体で「3LDKは必須」「寝室にはこういった収納を」「テレビは壁掛けで」「このデスクを置ける部屋が欲しい」「キッチンはアイランド」「造作で壁一面の本棚が欲しい」といった具体と優先度が決まっていると、意思決定も要望の摺り合わせもかなり早くなる。だから準備は死ぬほど大事です。

1−1.まずはとにかくイメージをまとめる

では、具体的にどんな準備をするか。いきなり「こんな部屋」と言うのは難しいと思うので(もちろん、僕も無理です)、まずはサンプルをとにかく集めましょう。

「この部屋の雰囲気が好き」「こんな感じで壁には色を取り入れたい」「キッチンはこれがいい」「二重窓にしたい」など粒度はバラバラでOK。それをまずは数を上げることが大事です。

僕の場合は、妻と写真共有のフォルダを作り、そこにお互いが良いと思った写真をどんどん上げていきました。

ちなみに写真は、リノベ会社各社の事例や、雑誌、設計事務所の作品集、ショールームの写真やらPinterestやInstargramあたりから引っ張りまくりました。もちろん、自分で足を運びよかったもの等も含まれます。(例えば、たまたま行った飲食店のトイレの水栓が良かったとか)参考にその一部分のキャプチャを貼っておきます。

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妻と共有で作った「こんな部屋がいい」要素を集めたフォルダの一部

基本平日に画像を集めまくり、週末に「なぜこの画像がいいのか」を話して項目に落としていきます。

といっても、我が家は話はしたものの、リスト化まではしなかったので後の優先順位付けでガッツリと燃えました。みなさん、リストを作りましょう。おじさんとの約束だ。

1-2.物件の要件は絶対に先に定義せよ

さて、イメージや優先順位をつけたあとは、物件選びの要件を整理しましょう。

正確に言うと、部屋のイメージと物件の要件は別物なんですが、少なくとも「事前に整理しなければいけないこと」という意味では同じです。

広さ(○㎡〜○㎡)から、エリア(具体の駅名)、駅からの距離、採光(2面は欲しいとか)、新耐震or旧耐震、予算、既存設備に求めるモノ、マンション自体に求めるモノ(管理体制、宅配ボックスetc...)など。もちろん、物件+リノベの総予算決めもここでしておきたいです。

あと、これも優先度が必須です。残念ながら、だいたいの場合全部を満たす物件なんてないわけです。マジで「コレはあるけど、コレがだめ」の繰り返し。そのときに何を及第点におけるかは決めておいた方が無難です。

僕は、ここをふわっとさせていて「後で貸しやすい案」と「自分が住み続けるイメージ案」の2方向を東京の東側と千葉の実家の近くの2カ所で探していました。この探し方は完全にダメな例ですw 

内見数も増えるし、決め手にも欠けるので、結果、自分は決められないループに入る。だから是非皆さんは要件定義を念入りに…。

2.物件選び——ゆっくり急げ

要件が整理されたら物件選びへ…。

多分この間で多くの人はリノベーション業者に相談に行ったり、建築家に相談に行ったり、不動産屋さんにいったりしていると思います。別にどれが正解ってのはないと思うので、お好きなところを選んで下さい。

僕は大手リノベーション業者にいって失敗したので、次は建築家か、不動産屋+工務店の組み合わせでいくかも知れません。ただ、二周目の判断なので、一周目人は普通にリノベ会社か建築家相談がいい気がします。

まま、そんなわけで物件をひたすら見ることになります。自分で各種不動産サイトでも探しつつ、お願いする業者にも探してもらいましょう。自分で見つけたやつのなかでも、いいのがあればそれも持って行きましょう。提案されるのがすべてじゃないです。

2−1.暮らしの解像度を上げよう。可能な限り

で、いくつか物件を見てると「ここ良いのでは?」的なやつに出会うかも知れません。そしたら、可能な限りその周辺のお店や、駅を歩き回りましょう。不動産屋さんがいるとゆっくりできないと思うので、帰った後でも。難しければ別日でも。

可能であれば、平日と休日両方見れるといいですね。僕は、家の周り、最寄り駅、最寄り駅の駅ビル、最寄りのスーパー数カ所、最寄りのカフェ数店舗を回りました。全部を平日&休日は見れないと思いますが、自分の中で大事なやつは見ておきましょ。

だって、数千万払うんですよ?やばくないですか数千万。正気になったら絶対に払えない金額だし、絶対後悔したくない。なので、生活上の懸念がどれくらいあるか、それが自分にクリティカルかはよくよく見えておけると良いなと思っています。

その点、既に住んでいる(知っている)エリアで買う人はいいですね。前情報の有無では街の見え方がかなり変わります。またはそのエリアに住んでる知人とかに聞いてもいいかもしれません。

僕自身、歓楽街の割と近くに住んでいるのですが、これも住んでいる人と外からではまったく見え方が異なります。

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あんまり行かないけど、スカイツリーが徒歩圏内。

「え…なんでそんなところに」と言われることもありますが、例えばうちの場合、同じ地域でもその中のエリアによって全然雰囲気が違うので、いわゆる歓楽街的な雰囲気とはほぼ無縁に生活も可能です。

なので、なるべく肌身をもって現地を見て回りましょう。見える世界は回数を重ねるごとに変わってきます。

2−2.理想の部屋が実現できるかを考える

ここまで見切って、問題なかったら部屋を決めたくなりますよね。でもあなたの目的は家を買うことじゃなくて、リノベした家での暮らしなんです。リノベ後を考えなければいけません。

自分が住みたい家に本当になるのかはとても大事です。例えば、大きなワンルームにしたいのに、間に壊せない壁が立っちゃったら嫌じゃないですか?

例えば、コンクリート打ち放しの天井にしたいのに、できない家だったら嫌じゃないですか?(我が家です) 

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天井の代わりに、壁を打ち放しにした寝室

それを防ぐためにもとにかく要望を伝え、可能かを聞きましょう。コンクリート打ち放し天井だったら、点検口などから現状の天井の状態は見れたりします。壊せない構造じゃないかは構造体を見れば分かります。(業者の人はだいたい分かります)

間取りのイメージがあるなら、もらった間取図に重ねて自分でラフに図面を引き、「これできる?」と聞いてみましょう。

「いや初心者で引けるわけないやん?」と思うと思うんですが、家にあるものを測ればだいたい作れます。キッチンやお風呂はもちろん、トイレ、廊下の幅等など…。自宅で不安だったら、リノベ会社の事例や設計事務所の事例から同じくらいの広さのモノを見つけて、その図面に合わせて引いてみましょう。

これでやってみて、雰囲気「まぁ、いける・・・?」くらいの検討がつけばいい。自分で理想の間取りを作る必要はないので、あくまで「まぁ2LDKくらいにはなりそう?」「アイランドキッチンくらいは作れそう?」位の目処が立てば。

ちなみに、僕がこの時に検証したのは「2.4mのキッチン+1.4mのダイニングを並べて配置できるか」でした。(↓こんな感じに憧れて…)

2-3.物件選びは急ぐな(※ただし書きあり)

ですが、ここで時間かけていると、業者の方からも「埋まっちゃいますよ?」と言われたりします。他方で、自分自身も「更新時期が○月だから、○月中には決めないと」って考えたりもします。分かります。僕も更新時期に合わせて買おうとしていました。

でも数千万です。そのために、急いで決めるのは絶対にすべきではありません。更新料の数十万ミスるより、物件ミスるほうが数百倍痛いですし、その数十万は物件購入〜入居までの間でいくらでも吸収できるので、無理の範囲で無視しましょう。

物件埋まる問題は確かに気になるんですが、最悪「先に買おうと思っているという意思を伝えて抑えてもらう」等もできたりするので、交渉しましょう。特に自分の中で確度の高い物件は。

ただ、この時怖いのが「再販業者」ですよね。端的に言うと「古い物件を安く仕入れ、数百万かけてリフォームし、利益を乗せして売る会社」なんですが、彼らは現金一括で取引をする上、相場より安い物件を抑えるのが仕事なので、一般消費者よりかなり手も意思決定も早いです。

彼らの動きが見える物件だったら、意思決定は早めのほうが良いです。(僕は再販業者に2物件連続で先に取られてしまいました。つらい)

逆に言うと、内装が古くない物件を買うときは、そんなに意識しなくても大丈夫です。リフォームが入っているなど、内装がまだ比較的新しめの物件は割高になるので再販業者も手をつけないことが多いそうです。

 リノベーションをする物件としては、あまり得策じゃないといわれますが、既存の仕様をそのまま引き継いだりもできるので、選択肢とはしては完全に外さなくてもいいともいます。

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めっちゃこだわったドア。枠なしでアーチ状に。金具が出てるけど

2-4.値切ろう。定価がすべてじゃない

これは絶対相談してみましょう。現実ラインどれくらいいけそうかは業者の人も相談に乗ってくれるので、手放しに買う必要はありません。

再販業者が手をつけそうな位割安の物件では難しいかも知れないですが、そうでない物件に関してはいけることもあります。端数だけでもという相談の仕方もアリ。

とにかく、「そのまま買うのが当たり前ではない」っていうのだけ覚えて欲しい。我が家は一度リフォームの入っている割高物件だったこともあり、100万円弱は引いてもらいました。

3.ローン——こちらは専門じゃないので…

さて、物件がきまったらいよいよローン周り。

確かに大事な要素なので補足はしたいのですが、これに関しては自分自身専門家じゃないので、あんまり多くを語らないつもりです。個々人の価値観として何がいいかって感じですね。

我が家はネット系銀行で変動金利で借りました。基本ネット系の方が審査が甘く、判断が速いそうです。どこの金融機関でも、「リノベ費用+不動産費用の組み合わせ」でローン組めるわけではなかったので、選択肢は一定限られていました。(少なくとも4年前は)

ちなみに、当時の我が家は中小零細デザイン会社2年目(僕)と、大手外資系IT企業5年目(妻)で連名でローンを申し込みました。青色の都市銀行では、妻の信用だったら単独でも全額ローンOK、僕は900万円なら貸せるといわれました。つらい。

結局何社か審査をした結果、持ち分半々でOK、かつ一番変動金利が安いという条件面でマッチしたクリムゾンレッドのネット銀行にしました。重視したのは「金利」「繰り上げ返済できるか(時期や額制の限はないか)」だけ。

まぁ、ここは参考まで。

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書斎。作るか悩んだけど、今はあってよかったと思う。

4.設計——戦いの火蓋が切って落とされた

さて、ここまでは序書。リノベの本番はここからです。

実際物件が決まったら何かしらの経由で設計士さんと一緒に空間を考えていくこととなります。僕はここで大きな失敗をしたので、是非皆さんには頑張って欲しい…本当大変だった…。

4−1.設計の責任は建築士ではなく自分にある

結局はコレにつきるんです。いかに自分の暮らしのイメージを高め、解像度高く設計側に伝えられるか。それをやりきって初めて「自分のイメージの」ないしは「イメージを超えた」部屋できるはず。

そのために、冒頭で話したとおり、とにかく自分がやりたい部屋のイメージを整理して伝えましょう。その情報量が多くて、解像度が高く、優先度も明確なほど設計側は間違いのないものを出してくれるはずです。

強いて言うなら、設計側にどこまで「クリエイティビティ」を求めるかはスタンスとして決められるといいかもしれません。結局「自分のイメージ」の解像度が高すぎるなら、もうそれを一通り伝えちゃった方が良い。「解像度はあるけど、想像よりいいものがあるなら知りたい」っていうのならその旨を伝えましょう。

僕はこのあたりをミスコミュニケーションした結果、「認識あってないなぁ…」というのが続き、最終的には自分でほぼ図面を起こして「こんな感じにしたいです」というまとめ方をしました。一番ダメなやつです。

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当時送ってた図面案。雑…

だからこそ、皆さんには「設計への期待」「自分たちの要望」双方をちゃんと整理して正しく伝えましょう。アウトプットがずれているなら、それは施主(自分)のせなんです。

4−2.それ、本当に「分譲サイズ」必要ですか?

ちょっと専門的な話も含まれますが、設計には関係するので補足的に。

住宅建築には「分譲サイズ」と「賃貸サイズ」があります。いずれも一般的には「分譲サイズ」の方がゆとりを持ったつくりになってて「賃貸サイズ」の方が小さめです。例えばトイレの横幅。分譲だと80〜90cm位はありますが、賃貸だと65cmとかのところもあります(さすがに狭い)。

で、設計者は多くの場合分譲サイズを想定して作ってくれるのですが、部屋のサイズに余裕がない場合には、「コレもっと詰めちゃダメなのかな」という判断をしてもいいかなと僕は思っています。

例えば、トイレが後5cm小さかったら、希望するサイズのお風呂が入れられるとかだったら、トイレは詰めてもいいかなとか。廊下があと5cmせまかったら、この家具が置けるとか。そういうのがあれば、無理に分譲サイズに縛られなくてもいいとは思っています。実際うちはトイレを結構攻めました。

もちろん、「本来よりは狭くしている」という事実は把握すべきですが(たまに家具が入らないとかが起こりかねないので)、その前提で無理に分譲サイズにしなくてもと言う感じです。

そのあたりは設計士さんがよしなにやってくれる場合もありますが、施主側もそのオプションがあることは把握しておけるといいですね。

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当時送ってた図面案2。なぜかイラレで作成してる

4−3. 「現場で合わせましょう」は覚えておく

あとは、上に付随してリノベでよくある(らしい)のが「現場で合わせましょう」という会話。リノベって既存建物にあわせて施工をしないといけないで、「現場で寸法や状態を見ながら調整する」「解体してから判断する」という作業が発生します。

これ自体は全然仕方ないことなんですが、その数が多いとお互いに「コレってどうするんでしたっけ」って言うのが増えちゃうんですね。結果、ミスコミュニケーションが起こって想定と違うものになっちゃう。

もちろん、優秀な設計士さんであれば、図面上にその旨全部記載するかもですが、僕がやったときは「現場合わせ」が多くて、お互いに忘れていたのもあり、完成近くなって「あれ、これ話違くない?」っていうのがいくつか出てきちゃったんです。

なので、それがないよう「現場合わせ」はお互いに覚えておけるように明示(ないしは記録)しておくのを一応オススメします。

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解体後。天井が直塗り塗装されてて打ち放しにできないと判明した時

5.見積り——「わからない」じゃない。わかるんだ

さて、ここまでで皆さん理想を作ると思うんです。正確に言うと図面と併せて見積もりが出るので、駆け引きは並行するのですが、大体の場合「理想を詰め込んだら予算を大幅に超えた」ってなると思います。

(※ちなみに、理想は初期段階で一通り詰め込んだ方がいいと思います。削る余地は多方面にあるのですが、後のフェーズに行くほど見積もりは削りにくくなるので)

それをいかに削るか。普通にやるとこの作業めっちゃ悲しいんです。「あぁ、いいなと思ってたこと大体やれないじゃん…」みたいな気持ちになります。でも、それをいかに避けるかがここのコツ。やり方はいくつかあるんですが、とにもかくにも、見積もりを読めなければ始まりません。

聞けば設計の人は大体教えてくれるのですが、基本的な読み方を個々ではお伝えしつつ、削るコツを補足していきます。

5−1.見積もりのロジックを知る

まずは見積もりのロジックを知りましょう。建築の見積もりには、大きく3種類の費用があります。

1.部材の購入にかかる費用

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これはとてもシンプルです。壁とかに使われている木材や石膏ボード、トイレやキッチン、お風呂などの住設(住宅設備)、壁紙やら、窓、床、などの材料等々。純粋に「数量」で計測できるものです。壁紙とか、床、塗装などは単位が面積(㎡)とかになりますが、これも部屋の広さから算出しているので、基本は定量的にカウントができるものです。

上の写真はフローリング、このサイズのものが22束って感じです。床面積から計算して数をはじいてくれているイメージですね。

2.作る人の工数

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ここが少し複雑です。建築の工事は結構いろんな職人さんが出入りしながら作られていきます。現場監督的人がいつつ、例えばガス器具をつなぐガス工事の人や、お風呂やトイレを設置する水道工事の人。壁や床を作ったりする人もいれば、造作家具(作り付けの家具)を作る人も別だったりすることもあります。

彼らは基本「人日」で単価を計算します。「トイレを2個設置したらいくら」って感じではなく、「トイレとお風呂で半日なのでいくら」的な計算ですね。

なので、例えば壁に作り付けの棚をつけようと思ったとき5カ所を4枚にしても作業的には1日だけど、5箇所が3箇所になったら半日ということはあります。逆に、3カ所を1カ所にしてもコストは一緒みたいなこともある。これを加味しないと純粋に「減らしたのにここ減らないの??」みたいなことが起こります。

上の画像も玄関扉塗装。玄関なのでアレですが、扉の塗装が「1枚」が単位じゃなくて「一式」単位なんですね。

3.全体に総額にかかる費用

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最後が、普通にみると謎の費用ですね。いわゆる設計料や、現場監督的な人が動く分の現場管理費(監理費)、なぞの諸経費や、おなじみに消費税は全体の費用にかかってきます。しかもコレが結構高い。業者によると思いますが、3つあわせて20〜25%くらいはいくところもあるんじゃないでしょうか。

なので、「キッチンを1つグレードいいのにして4万円あがった」と思っても、実際は「5万円」上がってるみたいなことがおこるわけです。(25%の場合)この上乗せがめっちゃ重いんですよ。

なので、見積もりはなるべく上手く削りたい。その手法として一番聞くのが後ろの施主支給やDIYです。

5−2.まずは「施主支給」で削る

というわけで、見積もりをどう削るか。わかりやすいのが「施主支給」と「DIY」です。

シンプルに諦めるのも大事なんですが、諦めるものでも「最初にやらないと大変なモノ」あと「後からやれるモノ」に分かれます。例えば、キッチンを変えたり、お風呂を変えたり、床を張り替えるのは大変ですよね。でも棚をつけるのだったり、壁を塗るのだったら自分でもできそうな気がします。

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竣工時の和室。カーテンレールもなければ棚もなし。いずれもDIYに。

前者を削るのが施主支給、後者を削るのがDIYです。

施主支給はその名の通り、「施主」が資材を「支給」すること。そうすると、上で言う「1.部材購入コスト」とそれにかかる「3.全体にかかる費用」が削れるわけです。これは業者さんによって「施主支給NG」だったり「支給範囲を限定する」ってところもあるので、事前で確認しましょう。

が、これがマジで一番削れます。例えば、我が家では以下を施主支給しています。

- ガスコンロ
- ガスオーブン
- 食洗機
- レンジフード
- 温水便座(便座部分、便器は既存を流用)
- キッチンの水栓
- 洗面台
- ミラーボックス
- 洗面台の水栓
- エアコン2台

これだけで総額80-100万円位だったと思います。(支給分の購入費用)ただこれで削れているのは150万を超えるたと思います。理由は二つあります。1つは、先述の「3の全体にかかる費用が外れる」こと。もう1つは、「自分で買った方が安いものがある」からです。

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支給したコンロ。オンラインで買い現場に配送するだけ

これは業界構造的なものなんですが、僕が購入して支給した住設は「仕入れ値+αくらいの金額」で結構市場に流通しているんです。普通に設計で見積もりを取ると「定価」または「定価より安いけど仕入れ値ほどは安くない」金額で出してくれると思います。

ただ、住設は流通経路が一杯あるので、kakaku.comとかで調べると、住設の販売だけをやっている業者が結構いて、彼らは「仕入れ値+α」くらいの値段(もちろん定価よりは全然安い)で打っていたりします。それが見積金額よりも安いことが多いので、結果「自分で買った方が安い」みたいなことが起こります。

もちろん、設計側でとる見積もりの方が安いこともあるので、そのままでもいいものもありますが、その場合も「全体にかかる費用」を加味して金額をはじきましょう。マジで馬鹿にならない金額が浮くはずです。

5−3.「DIY」で削る

これは人によりけりだと思いますが、やれる人は積極的にやりましょう。リノベ業者の人は基本的にはWelcomeな人が多いはずです。

壁の塗装を自分でみたいなのはわかりやすいですが、地味に金額を削れるのはやはり造作家具系。棚とかですね。DIYのなにがいいかというと、先述の1〜3すべてを削れるんです。「部材代」「人件費」「全体費用」すべてが見積もりから外れるため、かなり価格は落ちるはずです。

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DIYで作った本棚。自分はほぼオフィスに本を置いてるのでほぼ妻の

我が家では以下を全部DIYに変えました。

- 下駄箱の棚(可動棚のレールと棚板設置)
- 洗濯機上の収納棚(同・レールと棚板)
- 簡易本棚(同・レールと棚板)
- クローゼットの中の棚
- カーテンレール
- 各種感知器(熱感知器、煙感知器)

選ぶ上で気をつけたのは、「あまり目につかない」ところ。例えば下駄箱の中の棚板やカーテンレールなんてあまり見ないですよね。逆に言えば、目に着くリビングの壁付けの棚とかはそのまま施工してもらいました。

クオリティがあまり気にならなそうな箇所に絞っています。クローゼットの中の棚は、IKEAでサイズが合いそうなモノを買ってきて突っ込みました。デザインは微妙なんですが、優先度は低いのでって感じです。

感知器は本当はダメかも・・・と言われたのですがAmazonで買った方がめっちゃ安かった(&色を塗りたかった)のもあって、自分でやらせてもらいました。ちゃんと検査で動作は確認しているのであしからず。

これで見積上は確か30-40万近く減っているはずです。ちなみに自分で買った部材の費用は10万いかない位だったと思います。

5-4.頭金の余裕があったら、施主支給&DIYだ

我が家は頭金予定だった費用をすべて施主支給とDIYに回しました。だって、払う金額に対して下がる金額が安いわけですから。普通にこっちの方がお得なわけです。

もし、頭金の用意があるなら施主支給とDIYに回しましょう。その分ローン額を下げればいいだけですから。(うちの場合、施主支給でこだわりを諦めずにすむようにし、最終のローン額はそのままとなりましたが…w)

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費用のかなりの割合を吸い込んでいったキッチン

ここまでやってダメだったら、もう仕様を諦めるしかありません。我が家はここまでやっても50万近くオーバーしていたので、一部の扉など「あると嬉しいがなくてもなんとかなる…ような気がする…」というものを外していきました。まぁ後悔はしてるんですけどね…。

6.施工

と、まぁこんな感じで見積りと設計がまとまったらやっと契約して施工に移るわけです。

もう気分的には「後はできるのを待つだけ」って感じだと思うんですが、僕はここで結構苦戦したので、その旨を一応補足させて下さい。

先述の通り、リノベ業者との相性もあると思います。ただ、「現場で」というものがいくつかある場合はこのブロックも読んでおきましょう。

6-1.現場に通うべし

そう、「現場で」という要素があるんだったら、現場に通って摺り合わせましょう。要素が明確になっているんだったら「いつ頃だったら摺り合わせられるか」を設計士さんと確認して、そのタイミングだけでもいいと思います。

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現場。施主支給品の山が右側にできてる

僕の場合は、途中から疑心暗鬼モードに入ってたので、休工になる週末に毎週通うようになりました。(もちろん、その旨は現場の方や設計士さんにも伝えておきましょう。現場は基本危ない場所で、むやみに入るべきではないです。)

現場に入れる楽しさもあるので、それはそれでいいのですが、先述していた「現場」要素の部分は適宜チェックできるといいですね。

6−2.できれば寸法を測ろう

ここでやりたいのは、寸法をとにかく測ること。現場あわせがどうしても発生しているので、細かな寸法は図面とはずれが生じています。ぴったり合わせて買いたい家具などがある人は、ここで寸法をとってから家具選びをしましょう。

うちは、ここでキッチンの棚の買うべき寸法を決めました。

あと、アクシデント的に…ですが、我が家は現場で下駄箱の奥行きが全然足らない(20cmくらいしかない)ことに気づき、修正を依頼しました。壁の位置を変えるという大工事になったのですが、あのままだとどうなっていたのか…という気持ちも少しあります。怖い。

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修正後の下駄箱。これで靴が入る…

7.おわりに

ここまでが、僕がお伝えしたかった、事前に知りたかったことです。

ちなみに、途中でもちょいちょい話を入れていますが、我が家は事前にニーズの優先度付けや設計士さんとのやりとりで苦戦し、できたこと、とできなかったことが結構明暗を分けました。予算をしっかりと整理し、希望を叶えたのはこの辺。

できたこと
- モルタル造作のキッチン
- 3口コンロ+ガスオーブンレンジ+食洗機+ビルトイン式の浄水器
- キッチンの裏に扉で隠せるパントリー
- キッチンとダイニングの横並び
- 壁付けカウンターワークスペース(ただし奥行きが浅くて使わなくなる)
- 小さいながらも書斎(作業スペース)
- 二重サッシ(既存利用で)
- 壁掛けテレビ+ケーブルは壁内配線
- 埋め込み式の目立たないエアコン
- トイレ、洗面所のドアをアーチ型に
- 大きめのお風呂(1418。マンションでは1417が多い)
- 大きい下駄箱(妻も自分も靴好きなので)

一方で、優先度を下げて諦めたのはこの辺。正確に言うともっとあるとは思うのですが、思い出せる(若干の後悔がある)のはこの辺というイメージ。

諦めたこと
- 洗濯機を洗面所に置くこと(実はリビングにあり、めっちゃうるさい)
- 洗濯機置き場に扉をつけること
- ウォークインクローゼット(狭すぎて無理だった)
- クローゼットに扉をつけること
-  クローゼットの造作棚(IKEAで買いそろえることに)
- 各所の可動棚の仕上がり(ほとんどDIYにした)
- 廊下の納まりを面一にすること(下駄箱が出っ張った…つらい)
- 書斎の換気(暑い&空気が滞留する)
- 幅広のフローリング(予算都合)
- タンクレストイレ(予算都合。ただこれは記事の企画で解決する)

という感じです。

これが誰かの役に立てば嬉しいですが、分かりづらい部分もあるかも知れません。もし追加で「コレも知りたい」があれば追記していくので、Twitterで教えて下さい。

それではみなさん、よきリノベライフを。

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