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本の話|2020年5月

本棚を見ればその人が分かる。

この言葉の真偽はさておき、本好きにとって他人の本棚が興味を惹かれるものであることに間違いはないだろう。



はじめまして、構法計画研究室の中澤と申します。建築を勉強している学生です。この春から大学院に進学しました。

ところで、皆さんは本を読みますか?

私は文章を読むのが好きなので、本はもちろん雑誌やブログなどの文章を読んでは、気に入ったフレーズを日記に書く日々を送っています。毎日のように活字に触れながら生活していると、気になるのは「他人が普段どんな本を読んでいるのか」ということです。

他人の本棚が見たい。それなら、普通の学生が自分の本棚にある本の話をするだけの文章があってもいいだろう。そんな気持ちでこのnoteを書きます。



最近読んだ本 2冊


1冊目『バナナ剥きには最適の日々』-円城塔

芥川賞受賞作家の円城塔さんの短編小説集です。円城塔さんは文章構造や言語体系に焦点を当てた作品を多く書いていて、独特の論理展開と表現としての小説や言語の可能性を追求する姿勢が高く評価されています。前衛的であるがゆえに難解な円城塔さんの小説に対する、読者からの「わからないけど面白い」という感想を多く見かけますが、こうして話題に上げる以上はたとえ間違っていても自分なりの解釈を言語化したいものです。

表題作である『バナナ向きには最適な日々』は無人探査機に搭載された人工知能が宇宙を旅する話です。主人公は宇宙で発見した物体を判別するために無人探査機に搭載されているのですが、どこまでいっても宇宙には何もない。主人公は途方もなく長い時間、孤独に宇宙を旅します。感情や記憶はプログラムで制御されていますが、暇であるとは感じるらしく、暇を持て余した主人公はさまざまな妄想します。想像の友人チャッキーに、バナナ星人たちの抗争……

ストーリー自体も魅力的な本作ですが、特筆すべきはその文章であると考えます。論理は明快でありながら、ストーリーとしての前後関係は明言せず、解釈は読み手に委ねられている。断片的な文章はプログラム言語にも近い文法を持っていて、それが語り手である無人探査機に搭載された人工知能の思考回路に合致している。これが著者の意図するところなのかは定かでありませんが、小説における“どう書くか”ということの重要性を感じさせられる作品です。



2冊目『シンギュラリティは近い』-レイ・カーツワイル

シンギュラリティとは別名で技術的特異点とも呼ばれる未来学上の概念であり、高度化した技術や知能が人類に代わって文明の進歩の主役になる時点……を指すそうですが、この本はシンギュラリティという概念を世に広めた未来学者レイ・カーツワイルさんの代表作のひとつです。

この本ではシンギュラリティは21世紀中に起こるという予言に始まり、シンギュラリティ後の世界を著者なりの視点で考察しています。人間の脳の機能はスキャンしてコンピューター基盤上にアップロードすることが可能になり、血液は自力運動性のナノロボットに置き換わり、心臓は生命の維持のために必要がなくなる。さまざまなテクノロジーの進歩を経て、人間はやがて生命を超越する。

データに基づいた未来予想の一体どこまでが本当に実現するのか、専門的な知識のない私には見当も付きませんが、もしその時が来たら自分は人間としてどう生きようか、そんなことを考えながらこの本を読みました。正直なところ、難しい内容も多く全てを理解できたとは言えませんが、むしろ簡単には理解できないからこそ、著者と未来学という領域へのリスペクトを込めてこの本を紹介します。



以上、本の話でした。

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