見出し画像

不動産投資は個人・法人どちらでするべきか?

不動産を投資する際には「個人で投資した方が良いのか?」、それとも「法人で投資した方が良いのか?」という論点があります。
法人には別のリスク(経営権の争いなど)もありますから一概に個人・法人のどちらで不動産投資をすべきかはいえません。とはいえ、何か判断材料があった方がいいでしょう。

ここでの法人は一人会社(従業員を雇っておらず、代表者であるオーナーが単独で経営する会社)とし、税務の観点から不動産投資は個人・法人どちらでするべきかを解説します。


1.個人と法人の所得区分の違い


不動産に限った話ではないのですが、個人に課せられる所得税は、法人税と比べると不利な点が多くあります。不動産の譲渡所得も個人の方が不利です。
両者を簡単に比較すると、下図のようになります。

【個人と法人の損益通算】

個人で不動産を購入して売却した場合、原則として他の所得と合算(損益通算)して税金を計算できません。

不動産の譲渡損失を控除できるのは、他の土地や建物の譲渡所得だけです。
※長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡したときに生じた譲渡損失の金額については、一定の要件を満たす場合に限り、譲渡をした年に事業所得や給与所得など他の所得との損益通算をすることができます。

つまり、不動産を2件以上譲渡し、一方に譲渡益、もう一方に譲渡損が発生した場合のみ損益通算できるのです。

不動産を譲渡して売却益が出た場合は、損益通算の問題は発生しません。
しかし、個人で保有していた不動産を譲渡して売却損が出た場合、税務上は法人よりも不利です。損益通算ができないためです。

2.税額を計算してみよう


簿価10億円の物件を5億円で売却したとします(売却損が5億円)。他の事業所得が5億円とすると、個人と法人の税額は以下のようになります。

【個人と法人の税額の比較】

*上記は簡便的に計算したものです。本来は控除額を考慮して計算します。


個人の場合は、不動産の譲渡所得を事業所得と合算できません。不動産の売却損が5億円出ていても、事業所得の利益がそのまま課税所得として税額を計算します。
法人の場合は、不動産の売却損と事業所得を相殺(損益通算)できるため、課税所得はゼロ、税額はゼロです。
不動産の売却損が発生する場合には、法人の方が得でしょう。

ちなみに、不動産譲渡で売却益が発生する場合は、損益通算の必要がありません。ただし、最高税率は個人の方が高く、最低税率は個人の方が低いので、譲渡益の金額によって個人が得な場合もあれば、法人が得な場合もあります。
一般的に投資額が大きくなればなるほど、法人の方が得な傾向が強くなります。

不動産の投資額が大きいのであれば、課税所得に掛かる税率、売却損が発生する場合の損益通算の観点から、不動産投資は法人の方が得だと思います。

***

今回は、不動産投資を個人・法人のどちらでするべきか、という観点から説明しました。
もっと詳しく知りたい人はこちらを参考にして下さい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?