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ゴッド・オブ・ウォーとの出会い。

ゴッド・オブ・ウォーと言う名のゲームがある。
このゲームは私が最も好きなゲームでもあり、また私にとっての天啓にも等しい物であった。

このゲームとの出会いは私が中学生だった頃へと遡る。
当時の私は酷く臆病かつ弱い人間であり、家では連日虐待され、学校では不良達のおもちゃにされていた。

ゲーム自体は物心が付いた時から様々な物を遊んでいた。
だが、触れていたのはポケモンやドラクエ、FFなどの所謂、メジャーなタイトルばかりであった。
それ以外にしてもどうぶつの森みたいな平和的なゲームが多かった。

当時の私にとってのゲームとは娯楽であり、現実逃避先でもあり、他人とのコミュニケーションツールであったからだ。

中学時代の私は本当に情けないくらいのコミュ症でもあった。
皆と同じゲームを遊び、それを話題に会話に混ぜて貰いヘラヘラとしていた。
今思い出しても忌々しく弱々しい過去だ。

そして転機は唐突であった。
当時、唯一健全に仲良くしていた友達が居たのだが、
こやつは何故か私の家に遊びに来る度にゲームを大量に抱えてくる。

その中に混じっていたのがゴッド・オブ・ウォーであった。
何の因果かこの日、こいつはゴッド・オブ・ウォーを私の家に忘れて置いてった。

まずこのゲームはそもそもパッケージからしておかしい。
半裸の白い謎のハゲマッチョが血まみれの双剣を持って背を向けているのだ。
(これ↓)



なんだこれは?…呪物か?とすら思った。
だって普段やってるゲームとはパッケージからして完全に別もんだもんコレ。

そして何故か私はそれを手に取りPS2に放り込んで起動して見た。

タイトル画面も異常であった。

件の謎のハゲマッチョの顔半分と燃えている背景のみであった。
(これ↓)


とりあえずゲームを起動してみる。
ムービーが始まる。よく分からんが神々に見捨てられたらしい。その後、崖から身投げした。

オープニングで主人公が身投げするゲームは初めて遊んだよ!
てかそもそもこいつ主人公なのかよ!敵かと思ったわ!

そんでムービーの後、無事に本編が始まる訳だがこの謎のハゲマッチョはとにかく戦い方が残虐であった。
そして残虐ではあったがそれと同時に何故か美しさを覚え、あと何よりも敵を殺すのがとても気持ち良かった。

それもそのはずなんだが今まで私は主にRPGしか遊んだ事が無かったのである。
そしたらRPGの戦闘はコマンドを選択すればキャラクターがペシッと殴りに行くのが殆どだ。
だから自分の手でキャラクターを操作していると言うよりも指示を出している感覚の方が近しい。

対してこのゴッド・オブ・ウォーは真逆であった。
私がボタンを押せばこの謎のハゲは禍々しい双剣を振るい敵を切り刻み、敵を掴んでは滅多刺しにしたりバラバラにしてくれる。
初めてこういうゲームを遊んだ私は思った。

これ楽しいし超気持ち良い!!!

そして今にして思えば初めて自分の意志で遊ぶのを選んだゲームでもあったのだ。 
そもそも我が家は家庭の環境がお察しだったので健全そうなゲームしかやらせて貰えなかった。
何ならゲーム自体すら毛嫌いされて疎まれていた。
ゲーム脳とかいうアホ単語が直撃してた世代だ。

当時の私が主に遊んでたポケモン、ドラクエ、FFの戦闘はどれも攻撃コマンドを選択するとキャラクターが動いて殴りに行ったり攻撃エフェクトが発生するタイプのゲームだった。
私はそれ等を遊びつつ常々思っていた。

これ(長々しいエフェクト)要る?

特にFFの必殺技や召喚獣が典型的な例であろう。
とにかくムービーが長い。
んで戦闘の度に同じムービーを見せ付けられる。

対してゴッド・オブ・ウォーはほぼ全てを自分で操作する事が出来た。
特に敵の殺し方を自由に選べるのが素晴らしく楽しかった。
最初の雑魚敵くんにすら5パターンの殺し方があった。
①普通に斬り殺す。
②馬乗りになり滅多刺しにして殺す。
③高らかに掲げた後、バラバラに粉砕する。
④首に双剣を当ててからの喉を掻っ切る。
⑤敵に双剣を刺し別の敵に向かって投げ付ける。

よくもまあこんなに殺し方を揃えたなぁ。
なんか拘る部分がおかしい気しかせんけど少なくとも私はこれが楽しく、そして嬉しかった。
自由度が高いゲームって本来こういうのを言うと思うんだよね。
殺し方は用意した、好きに殺せ。みたいな?
何にせよ自分の手でキャラクターを操作してゲームを遊ぶってこういう事なのか、と理解した。

そして黙々と先へ進めて行った。
今でこそチュートリアルのボスであるハイドラの殺し方を見ると笑ってしまうが当時は普通にドン引きした。

更に進めて行くとミノタウロスが現れた。
ギリシア神話の巨大な牛の化け物である。
そしたらこのハゲ…もといクレイトスは何をトチ狂ったのかこのミノタウロスに対し頭突きをかまし、怯んだ隙に押し倒し、そして馬乗りになり、口の中めがけて双剣を突っ込んで殺しやがった。

いやいやミノタウロスを相手にこんな殺し方をする奴が居るのか…?眼の前に居たわ…。
この時点で私はもうゴッド・オブ・ウォーとクレイトスの虜であった。

だが、それで終わりでない。
私がこのゲームで最も印象に残ってるシーンがある。

クレイトスが更に進むと道の先へと繋がってる橋が降りていない。
そしてその橋を降ろすレバーを握ってるモブが居たのだ。

クレイトス:おい!私は渡らねばならん!レバーを離して橋を掛けろ!
モブ:嫌だー!橋を渡したら奴らが来てしまう!化け物どもが来たら俺は八つ裂きにされてしまう!
クレイトス:腰抜けめ…。

こういう展開はゲームでは日常茶飯事だ。
そしてほぼ確実にこの2パターンに分かれる。
①仕方が無い…他の道を探そう。
②よし、その化け物を退治してこよう。

俗に言うお使いイベントである。
そして私はこのお使いイベントが凄まじく嫌いであった。
特にRPGなんかはこんなんの詰め合わせだ。
ましてや健全なタイプのゲームであれば目的が世界を救うに設定されてる物ばっかである。人助けは当たり前だ。
そんで大抵のお使いイベントは達成すれば報酬が貰える。
だから面倒くさくてもやらざるを得なかったしお使いを強いられてるみたいで大嫌いであった。

ては、クレイトスはどうしたか?

モブに雷の魔法をぶん投げて殺して進んだ。

もう一度書こう。

モブに雷の魔法をぶん投げて殺して進んだ。
(これ↓)

この展開は私にとってまさに目から鱗であった。
ああそっか、そういう手もあるのか。
別にお使いしなくてもいいんだ。

私はこの瞬間に理解した。
他人の言いなりになる必要も無いし、
気に食わない奴はぶっ飛ばせば良いのか!

こうして私は気まぐれに手に取ったゲームから他人に歯向かうという事を覚えた。

虐待してくる親や弄くり回してくる不良ども相手にも歯向かいだしたのだ。
そして気付けば親は口だけで言い負かせるようになり、
学校では何故か裏番扱いされ一番の問題児扱いもされた。(特に何もしてない。)

勿論ゴッド・オブ・ウォーは完全クリアするまで遊んだ。
後日、忘れてった友達にソフトを返した後に、
自分で近所のゲーム屋へ行き買って来て遊んだ。
初めてこんなゲームを買ったのでドキドキした。

それ以降、このハゲの新作が出る度に発売日に即座に凸っては遊び尽くしている。
このハゲを操作しこのハゲの背中を見ながら育った結果、私は物理面以外はかなり強くなった。

話は逸れるがプロテウス効果と言う現象がある。
要約すればゲームなどで操作してるアバターの言動が中の人に影響を与える的な事だ。
(これ↓)

そしたらクレイトスの背中を見つつ育った私からすれば、
クレイトスはもはや自分のアバターにも等しい訳だ。
ネトゲなどの自らキャラクターを作れるゲームでも当然の如くにクレイトスに似せたキャラを作り操作している。

つまりは己も知らぬ内に最強の戦神に染まっていたのである。

仮にゴッド・オブ・ウォー&クレイトスと邂逅しなければ今頃、私は別人であったと思う。
だが、その場合は少なくともこの私よりは確実に弱い人間になっていたと思う。
勿論、後悔など微塵も無い。スパルタに服従の文字は無い。

おまけ(クレイトスさんの殺戮シーンまとめ)
私は気が滅入ってる時にこれを見ると気分が落ち着く。


(´'ω')b