レジュメを作成する:本・論文を要約し,自分の考えを積み上げる

今回のnoteでは,人文・社会科学系のゼミで必ず求められる「レジュメ」の作成について,そのコツをまとめておきます.レジュメを作成するときの参考にしてください.

0. レジュメとは何か?

人文・社会科学系のゼミでは,本や論文の内容について輪読する形式のゼミがスタンダードの一つになっています.この形式の場合,一人の担当者がいて,その人が担当部分(本であれば1章分,論文であれば1本)を紙にまとめて,内容をほかのゼミ参加者にプレゼンをします.その後,プレゼンの内容に基づいて参加者全体でディスカッションを行います.

レジュメに求められるのは,プレゼンに添えられる要約です.本や論文の内容を理解するために十分な量と,自分が話す内容も見越した追加情報が必要です.

1. 内容をまとめる

まず、レジュメは要約ですので、プレゼンを聞きながら内容をフォローできるよう,簡潔に書かれていなければいけません.簡潔に書くためのフォーマットとして箇条書き形式は最もパワフルな形式でしょう.論文は節によって区切られています.各節ごとに話の展開を箇条書きでまとめてみましょう.話の流れがよくわかるようになります.

箇条書きには,word等の箇条書き機能を使いましょう.箇条書きにはレベルがあり,レベルが下がるとインテンドされます.この機能をうまくつかって,パラグラフライティングの考えかたと組み合わせると,以下のように段落ごとにポイントをまとめながら要約することができます,

●段落1の一番言いたいことをまとめる(ref. トピックセンテンス)
  ・サポートセンテンスでのポイント1
  ・サポートセンテンスでのポイント2
●段落2の一番言いたいことをまとめる
  ・サポートセンテンスでのポイント1
  ・……

パラグラフライティングについては,すでに記事としてまとめていますので,ぜひご参照ください.

箇条書き機能ではshiftキーを押すとレベルが下がり,shift+tabキーを押すとレベルが上がります(これはword以外でもたいていそうなっています).このショートカットをうまくつかって,レジュメを仕上げましょう.

もちろん,箇条書きではなく,普通の文章でレジュメを作成してもかまいません.その際には,きちんとパラグラフライティングを意識しましょう.

レジュメは本文の書きぬきではなく,可能な限り自分の言葉でまとめなおしましょう.専門用語はそのまま引っ張ってこなければいけませんが,それ以外は書き抜くことはせず,自分で本文の内容を理解して,レジュメ上に再構成しましょう.レジュメとは完璧な本文のレプリカではなく,あなたのプレゼンのための資料なのです.

2. 図表を活用する

本や論文の中身はたいてい複雑です.理解するのに苦労するからこそ,その内容をまとめるあなたには,わかりやすいレジュメが求められています.その理解のためには,できる限りの手を尽くしましょう.もっとも手軽にできることは,図表を駆使する,ということです.

たとえば,論文の論理展開を図示する,論文中のグラフに書き込んで結果の理解を促す,表をまとめ直して重要な結果を強調する,といったことが考えられます.自分で新たに図表を作ってもいいですし,本や論文で示された図表をベースにして作成してもよいでしょう.

3. 本文との対応を明確にする

ゼミでの発表を考えると,レジュメと本文の対応関係を明確にしておくと説明しやすい場合があります.たとえば,本文の図を見てほしい場合には,以下のようにどこを見てほしいか書いておきましょう.

……
●格差が進行している
 ・ジニ係数の比較(図1, p.20)
……

対応部分を指示する,あるいは本文を引用する場合には,ページ数だけではなく行数を書いてもいいかもしれません.たとえば(p.20 L12-15)と書いて20ページの12行から15行まで,と明示的に書くと聞いているほうもすぐに追うことができます.

4. 情報を追加する

もし,本文で言及されているけれど説明されていないことがあったら,調べて情報を追加しましょう.たとえば,本文では特に説明されずに導入された先行研究や,見たことのない分析手法が使われている場合には,レジュメにその説明を加えましょう.

5. 自分の考えを最後に上乗せする

レジュメの最後に,本文を読んで自分が考えたことを書き加えましょう.疑問,コメント,みんなで考えたいことを付け加えることで,自分の理解も深まりますし,ディスカッションも有意義なものになります.

以上,レジュメの作成に向けたコツを説明しました.具体例については,担当の先生にお願いして過去の学生のレジュメを見せてもらうといいかもしれません.そのゼミならではの慣習も一緒に教えてくれるかもしれません.このnoteがレジュメ作成の一助になれば幸いです.