なんで「目的の多重性」って名前なの?
りょーさんからの提案
筆者の友人であり、本書の読者でもある、あまのりょー氏から、『「アジャイル式」健康カイゼンガイド』について、こんな感想を頂きました。Twitter上で回答しましたが、せっかくなのでこちらでも解説しておきます。
「目的の多重性」って何?
「目的の多重性」とは、アジャイル式健康カイゼンの原則として取り上げているもののひとつです。(P.25参照)
何か健康行動を行う時には、一つの行動に目的を重ねて行う、言い換えると「一石N鳥」を目指しましょう、という内容です。
あまのりょーさんは、そのネーミングとして一挙両得がいいんじゃない?と提案してくれました。最初は私自身が一石N鳥という名前にしようかと考えていたので、あまのさんの言うことはよくわかります。
ではなぜ、あえて「目的の多重性」という名前にしたのかを、少し説明しています。
名前の由来はパーマカルチャー原則
実は、目的の多重性の直接の由来は、持続可能な農的生活のデザイン手法であるパーマカルチャーの原則です。
日本国内におけるパーマカルチャーの普及に尽力されているパーマカルチャーセンタージャパンのサイトによると以下のような説明になっています。
パーマカルチャーでは、デザインの際には何かと何かを重ね合わせるというデザインを意図的に行います。
わかりやすい例で言うと、パーマカルチャーにとってニワトリを飼うということは、卵や肉という食料を提供してくれるという機能に加えて、ニワトリの体温を寒い時期の暖房の熱源として利用したり、排泄物を肥料として使ったり、ニワトリを農場に放しておくことで、土を耕し、雑草や害虫を食べるという機能を重ねています。
このように、何かを行う時には、複数の目的を重ね合わせておくことが、その行動の豊かさや持続可能性を高めるという意図を込めて、ちょっと抽象的ですが「目的の多重性」という名称にしました。
パタン・ランゲージのセミラティス構造
もうひとつ、挙げておきたいのは、いきいきとした建築やまちを生み出すデザイン言語体系である『パタン・ランゲージ』です。
パタン・ランゲージでは、いきいきとした都市や建築物は、ツリー構造ではなくセミラティス構造と呼ばれるネットワーク構造で構成されている指摘しています。
ツリー構造とは機能的に1つの目的のためのもの、セミラティス構造とは複数の目的を重ね合わせたもの、と考えます。
たとえば、パタン・ランゲージの「厚い壁」というパタンは、壁を単なる間仕切りとしてだけでなく、厚みをもたせて個人の痕跡を残せるようにすることで、より住人がいきいきと住まうことができる、としています。
これらと同じように、アジャイル式健康カイゼンにおいては、健康のための行動としてだけでなく、何らかの目的・意味を重ねることが、続ける(=自分の生活にフィットする)ことに直結すると考えています。
まとめ
パーマカルチャー、パタン・ランゲージ、いずれもデザインの手法であり、自分のライフスタイルをデザインしていくという意味で「多重性」という言葉を使いたかった、というのが正直なところです。
あまのさんが提案してくれたおかげで、原則における背景を説明できる機会ができたことに感謝します。
原則の名前については、改訂する機会で、別名とかで補完できるといいなぁと考えています。そこまで売れ続けてほしいです!😆
皆様のサポートによって、より新たな知識を得て、知識と知識を結びつけ、実践した結果をアウトプットして還元させて頂きます。