2022.11.03 ビオトープに専門家をご招待
今日は、Twitter上で知り合った、愛媛で活動されている れおのむしのおとさんと、Gooさんに来てもらって、ビオトープを見学してもらいました。
ビオトープへご案内
お二人はそれぞれ昆虫(特にトンボ)と、植物(水草)の専門家であり、愛媛県レッドデータブック改訂委員会の委員もされています。そんな専門家の観点からビオトープの様子を色々見ていただきました。
私たちは「ビオトープ」と名目上呼んでいますが、今年の実態は休耕田だったセイタカアワダチソウが繁茂した場所を、春に草刈りをして水を引いたものの、株はそのまま残っておりビオトープのための整備などは特別していません。
そのため、セイタカアワダチソウやススキなどの陸生植物もまだまだ繁茂した状態に水田雑草が生えてきている状態です。
お二人に見ていただきましたが、植物としては一般的な水田雑草(コナギ、ウリカワ、キカシグサ、イグサ)と、ススキ、セイタカアワダチソウを中心に繁茂していました。水深を深くすることで、他の水草も発生するかもしれないとのことでした。初夏の水深が深い頃には、山側でシャジクモを見た記憶があるので、時期を見て確認したいと思います。
水生生物では、ツチガエル、イモリ、各種ヤゴ類を確認しました。
一匹だけクロゲンゴロウ(愛媛県絶滅危惧2類)も確認できたので、なんとか面目を保つことができました。このビオトープにおいては、クロゲン、ガムシはシンボル的な大型水生昆虫です。見つけて頂いて本当に安心しました。前回来たときにはクロゲンゴロウの終齢幼虫を確認してたので、新成虫なら嬉しいのですけどね。
小型ゲンゴロウ類は今回は確認することができませんでした。9月に訪れたときにはウスイロシマゲンゴロウを確認しました。初夏にはコシマゲンゴロウも確認しているので、今後中小型ゲンゴロウ類も増えてくれると嬉しいです。
9月に3匹確認できたガムシは、今回は確認できませんでした。残念!
れおのむしのおとさんは、トンボがお詳しいので、ヤゴを同定していただきました。ヤゴハンドブックを持っていてもヤゴの同定はかなり難しいので助かりました(笑)
今回はイトトンボ系のヤゴは成虫も幼虫も確認できませんでしたが、初夏〜秋にかけて沢山見かけていたので、別の季節にまた来てもらおうと思います。
ビオトープは広いので、水深が深いところ、浅いところのメリハリをつけると、環境の多様性が増し、多様な動植物が住み着いてくれるのでは?というアドバイスをもらいました。
また、オニヤンマのように数年間幼虫期間がある生物は、安定した水環境があれば定着するはずとのことでした。たしかに成虫は見かけるので、あとは安心して幼虫期間を過ごせる環境を作ってあげればよさそうですね。
ちなみに、前回訪問から一ヶ月以上たったビオトープのマコモやクワイは、枯れたり、イノシシに荒らされてしまって見る影もありません。
水田にとどまらず、イノシシ対策は必須ですね。
溜池の様子は?
次に、ビオトープの近くにある溜池にもお二人をお連れしました。ここはメダカが群生しているのですが、水深が深く、木々で覆われているため水草をみかけません。
れおのむしのおとさんが「ここにはクロゲンがいるはず!」と探していましたが残念ながら見つかりませんでした。その代わりに、ビオトープとは違う種類のヤゴを見つけてくれました。サナエトンボは同定が難しくとても勉強になります。タベサナエは愛媛県準絶滅危惧種です。
Gooさん曰く、長年枯れ葉が堆積していて、植物の種子が埋没している可能性もあるので、水を抜いてかいぼりなどをして清掃をすれば、水草が出てくるかもしれないのでは?という話でした。
たしかに何年も水は抜いていないようなので、機会があればかいぼりをしてみたいですね。水面に張り出している木々は、ある程度は伐採して日光が入るように手入れしたほうがよさそうです。カモも訪れるそうなので、どこからか水草の種子が飛んでくるかもしれず、それも楽しみです。
ビオトープとこの溜池は距離としては100メートルほどしか離れていないので、ビオトープが安定すれば、クロゲンゴロウやガムシに関しては、産卵・幼虫時期はビオトープで、越冬は溜池でというライフサイクルが実現できそうです。
秘密の溜池へのご招待
調査の後、Wさんの自宅で柿を頂いて、帰り道の途中にある、秘密の溜池にご案内しました。
実は、数年前に、ここのため池で息子と訪れて初めてクロゲンゴロウとガムシを見つけたことが、今回のビオトープのアイデアのきっかけとなりました。そんな思い出の場所です。
元々は棚田の水源として使われていたようですが、今では耕作放棄され、ため池だけひっそり残っている状態です。
お二人に調べてもらった所、いずれも愛媛のRDBで準絶滅危惧種のフトヒルムシロ、イトモ、シャジクモが確認できました。
河川と行き来はないのですがなぜか生息している魚(ヌマチチブ?)も確認しました。昆虫類ではタカネトンボ、クロゲンゴロウ、そして、ビオトープでは確認できなかったガムシ(絶滅危惧2類)を確認することができました。
この溜池の下の休耕田はぬかるんだ湿地帯となっており、じっくりは調査できませんでしたが、トンボ類が生息していそうでした。2年前に息子と訪れた時には長靴が抜けるくらいぬかるんでいたのを思い出します。
Gooさんが、ふと手にした花(アイキャッチ画像)は、リンドウの仲間のようです。調べてみるとホソバリンドウという湿地帯に生息する種類のようです。こういった美しい花も環境変化で一気に消えてしまいそうですね。。
豊かさの象徴として…
「このため池も放っておくと10年以内に無くなりそうだね」
お二人が話していました。
この溜池は、山の沢水が流れ込んでできているようですが、木々に囲まれているため、枯れ葉などの堆積物と、木々の根で堤に穴が開いてしまって水が抜け、植生遷移が進むのは時間の問題のように思います。
耕作放棄によって、存在すらも忘れられ、ひっそりと木々の間に存在する溜池には、周囲では見る機会が少なくなった生き物たちがまだ息づいています。そして、日本各地にこのような水辺が無数にあり、すべてを守ることは現実には困難なのかもしれません。
私には、自分が知る小さな環境を、自分のできる範囲で、できるだけ持続的に、保全し、次世代に繋げることしかできません。
これらの環境はとても脆弱ではありますが、生きとし生けるものたちがひっそりと精一杯命を繋いでいる彼らの家です。一方で、保全のための保全は、世代を超えた持続的な活動にするのは大変のように感じます。
世界が合理主義に飲み込まれ、この数十年たらずで急速に失われつつあるこれらの環境を、逆に豊かさの象徴としてうまく活かせる道を模索していきたいです。
皆様のサポートによって、より新たな知識を得て、知識と知識を結びつけ、実践した結果をアウトプットして還元させて頂きます。