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自分でバーを始めるならまずは揃えたいレコードリスト...から一つまみ

BRUTUSの2月15日号「音楽と酒。響く、聴く、語る、レコードとバーの話」が売れている。

最初発売日に本屋で手にとってパラパラとめくった時は、「結局個人の趣味嗜好だよな。まあ、いいか」と思ったのだが、同雑誌に付録として添付されているプレイリストを発表したピーター・バラカンのラジオでリスナーが買いに走っているを聴くにつれ、自分も欲しくなって、Amazonを見ると、既に在庫不足状態(2月16日現時点でも2月23日入荷予定)。やむをえず在庫が確認できた楽天ブックスで入手できた。

既にそのピーターのPlaylistSpotifyで、ストリーミングで手に入らないStanley Smith以外は聴くことができる

もちろんこのピーターのPlaylistも素晴らしいと思うが、それでは満足できず、自分がバーを始めたとしたら何を選ぶのか、を考えてみることにした。

ということで、いつも通りまず最初に選択基準を考えてみる。

1. バーで聴きたいと思う音楽を選ぶ。(当たり前だけど、ビーチやスキー場、通勤やコンサートホールで聴きたい曲とは訳が違う。)
2. アルバムが望ましいが、シングル曲も有りとする。(レコードとなるとアルバム単位になるが、最近はなかなかアルバム一枚通しで聴きたいものが減ったことによる妥協。)
3. いい曲だなあ、と最後まで聴いてみても良い曲を選ぶ。(その点でこれまで聴き過ぎた曲や定番曲はできるだけ避けた。)
4. バーを訪れる想定客に「お、これって誰?」と思わせる選曲を散りばめる。(単に顧客が知らない、あるいは珍しい曲では無く、シンプルに格好良いという理由で顧客が興味を持ちそうな曲。)
5. 時代は60-70年代が中心になるのはやむを得ないが、最近の曲までを含める。(若い顧客にも興味を持ってもらいたいという商売根性から。)

上記基準で考えたところ、何と236曲、17時間6分ものリストになった(2021年2月16日現在)。

基本は私自身のお気に入りの曲や無人島レコード、私を作ったシリーズから定番以外のものを選択した。236曲を「ベスト・セカンドライン」とか「ベスト・アメリカーナ」とか「ジンに会う10曲」とかジャンル別や飲むお酒の種類別にグループにまとめることも考えたが、エクレクティックなリストの方が聴いていて面白いように思うし、選曲の意外性もあるだろう。

またこのプロトタイプを友人に共有したところ、「バーだから2時間ぐらいが良いんじゃないか」とのアドバイスを受けた。合理的な考え方であり、リスナーの立場ならそれでも良いが、バーの経営を考えると、顧客は次から次への来る訳だし、2時間だけのリストを作る、というのでは商売が成り立たないだろう

先のBRUTUS誌でも、BUY BACK店主の薮氏とMartha Records Inc代表の福山氏の対談で、お店をやるには何枚いるか、という話があって、薮氏が2,500枚、福山氏が6,000枚ぐらい(ただし最初のお店は400枚ぐらい)、と言っている。薮氏によると、ロックバーやソウルバーなら2,500枚で良いが、ジャズやソウルや邦楽もとなるとそうはいかない、とも言っている。

そういう意味では236枚でも不十分だし、ピーターバラカンの32枚も少なすぎる、ということになるが、まあ少しづつ集めていくこととしよう。

ここでは236枚から、ひとつかみ10枚、「お、これって誰?」という意外性のあるレコードを紹介したいと思う。この10枚だけでは商売にならないが、これらを散りばめることでバーの価値が上がるのではないかと思っている。

1. Funhouse by Danny Gatton

94年に自殺したフェンダーテレキャスターの名人、Danny Gattonの93年のアルバム”Cruisin’ Deuces"から一曲目。随分昔のギターマガジン誌で高評価を受けていたことでCDを購入した。ラテンリズムにガツンと決めるイントロから恰好良過ぎる。

2. Place Your Hands by Reef

英国Glanstobury出身のバンド、Reefが96年に発表したセカンドアルバム”Glow”の最初のシングルとして発表した曲。ボーカルのGary Stringerの祖母の死への鎮魂歌だそうだが、とてもそういう曲には聴こえない。

3. Suitcase by Badfinger

悲劇のバンドBadfingerが過酷な米国ツアーの模様を歌った曲で作曲はギターのJoey Molland。アルバム”Straight Up”に収録されているが、この”BBC in Concert 1972-73"のハードな演奏はJoeyとTom Evansの両ギターが全面にフィーチャーされていて素晴らしい。彼らの好む音楽性嗜好がレコード会社に受け入れられなかったためかその鬱憤晴らしのようなアレンジ。ライブでの奔放さをアルバムでも表現されたら成功を勝ち取れていたかもしれない。

4. New Orleans Sinking by Tragically Hip

カナダはトロント出身のTragically Hipが89年に発表した二枚目のアルバム”Up to Here”からのセカンドシングル曲。イントロのギターリフが何とも格好良い。

5. Her Eyes are Underneath the Ground by Antony and the Johnsons

英国Anohiniの音楽プロジェクトであるAntony and the Johnsonsの2009年のアルバム”The Crying Light”の一曲目。アルバムジャケットはAnohiniが敬愛する伝説的な舞踏家の大野一雄で本アルバムは彼に捧げられている。

6. The Sway by Joan Shelly

ケンタッキー州ルイビル出身のJoan Shellyが2019年に発表した”Like the River Loves the Sea”の一曲目。

YouTubeで発表されているLost River SessionsのLiveも素晴らしい。

7. Words of Love by Peter Broderick and Friends

Peter Broderickが70年代から80年代に活躍したArthur Russellの曲を演奏したアルバムからの一曲。2019年の二度目の来日時にLiveを観たことがある。

8. Happiness by Molly Drake

2013年に完全未発表音源がリリースされたNick Drakeのお母さんであるMolly Drakeの曲。家族向けにひっそりと保存されていた音源だが、2000年のNick DrakeのドキュメンタリーをキッカケにMollyが脚光を浴びて音源が発掘された。Nick Drakeの音楽性に大きな影響を与えたことは間違い無い。

9. Mad World (feat. Gary Jules) by Michael Andrews

2001年の米国のサイコスリラー映画”Donnie Darko”のサウンドトラックとして発表されたTears for Fearsのカバー曲。本ビデオクリップの構図も興味深い。

10. It Could be Better by Byzantium

Peter Barakanの実弟であるMichael Barakan(現Shane Fontayne)が在籍した70年代の英国のサイケデリックバンドによる曲で、最近70年代のPub Rockシーンのコンピレーションアルバムである”Surrender to the Rhythm”に収録されていた。当時なぜこれがシングル盤にならなかったのかわからないが、発表されていたらこのバンドの命運は分かれていただろう。

私が選んだ236曲のPlaylistはこちら。

 

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