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2022年 年間アルバムベスト10

2020年から始めた年間アルバムベスト10(2020年はこちら、2021年はこちら)。

新型コロナが蔓延してから3年、聴く音楽の趣向もその頃と比較すると幾分変わってきて、今年は特にソウル、R&B系が多くなり、一方実績のあるMusicianの割合が私にしては比較的少ない。Veteran勢の高齢化で彼らの新譜が少なくなってきたこともあるのかもしれない。

1. White Jesus Black Problems by Fantastic Negrito

これまでReleaseしたアルバムがすべてGrammyのBest Contemporary Blues Albumを受賞しているFantastic Negrito。今年ReleaseしたこのAlbumはPandemicの中、自分のRootsを追って発見した驚くべき事実(7代前の祖父が白人のスコットランド人の祖母と禁断の愛で結ばれていたという話。詳しくはリンク先をご覧いただきたい。)を基に制作したもの。

今年は本アルバムを引っ提げて10月に来日したので恵比寿のLiquid RoomまでLiveを観に行ったが、Liveが予想以上に素晴らしかった。この人の奥さんは日本人で、結構来日しているらしいし、バックを務めるGuitaristも日本人のマサ小浜という大変な日本贔屓の米国人でもある。それでも流石に日本では皆聴衆がマスクをしていたのを同情していたのが面白かった。

2. Sentimental Fool by Lee Fields

今年で72歳になるNorth Carolina州出身のSSW。身体と声がジェームス・ブラウンに似ていることから“リトルJB”と呼ばれることもあるらしい。クール&ザ・ギャング、B.B.キング、ドクター・ジョン、ジョニー・テイラー、ベティ・ライト、ボビー・ウーマックらとの共演経験もある。LabelをSharon Jones & The Dap-Kings等で有名なDaptoneに移籍、本作はThe Dap-Kingsの中心人物であるBosco Mannが全面プロデュース。

3. Feel Like Going Home by Miko Marks & The Resurrectors

Miko MarksはMichigan州Flint出身で現在はCalifornia州のOaklandに住むカントリーシンガー。2006年にNew Music Weekly AwardでBest New Country Singerを受賞しているが、その後Country界では泣かず飛ばず。昨年14年振りに第3作”Our Country”を発表、本作は第4作目で新しいCareerを築こうとCountry以外にもGospel, Soulの影響が大きくなっている印象だ。

その意味では以前はPrinceのようなFunkをやっていたFantastic Negritoと似ている部分がある。Breakするには元々の自分のジャンルにこだわらず新しい分野を切り開く姿勢が必要だという訳か。

4. The Moon and Stars: Prescription for Dreamers

Tennessee州出身のValerie Juneは2017年作の”Order of Time”がBob Dylanに賞賛され、Rolling Stone誌やThe New York TimesのBest Album of the Yearに入った。ProduceはBobby CaldwellとCool Uncleを結成、近年はSt.Paul & The Broken Bonesを手掛けた奇才Jack Splashで、本作では彼女のRootsであるSoul、R&BにPsyche FolkやSoft Folk, Aflo BeatからTony ViscontiばりのStrings Arrangementまでを駆使している。本作ではNick Drakeの”Pink Moon”やJohn Lennonの”Imagine”のカバーをしており、今年はこれらをも含む”Under Cover”というAlbumも発表している。

5. Look - The Unknown Story of Danielle Du Bois by John Howard

2003年に1975年のデビュー作”Kid in a Big World”が突然発売されたJohn Howardの新作である。

本作はJohn Howardが作り上げたDanielle Du BoisというTransgender StarのDanielle Du Boisにまつわる12曲。1940年生まれのDanial Woodは1960年代にPop Starになったが、その後Parisに居を移しDanielle Du BoisとしてBrigitte Bardot, Pierre Cardin, Serge GainsbourgやMichel LeGrandと社交界で関わっていくという設定だ。初期のElton Johnのようなストーリー仕立てのアルバムが最近には珍しく面白い。

6. Just Like That… by Bonnie Raitt

デビュー50年、72歳になるAmericanaの代表的なスライドギタリストでシンガーでもあるBonnie Raittの21作目の新作。BassのJames “Hutch” Hutchinson(元Neville Brothers)、DrumsのRicky Fataar(元The Beach Boys)、KeyboardsのGlenn Patscha、GuitarのKenny Greenbergで構成される彼女のBandでLive感満載の余裕の音を作り上げた。

7. Carry Me Home by Mavis Staples & Levon Helm

本作はMavis StaplesがLevon Helmのスタジオ”The Barn”での”Midnight Ramble”セッションに参加した2011年の未発表レコーディングが遂に日の目を見たものだ。このセッションの約一年後にLevonは鬼籍に入っている。本ライブの最後はMavis StaplesがThe Bandの映画”Last Waltz”で歌った”The Weight”。ProduceはBob DylanのNever Ending TourのMemberだったLarry Campbell。

8. Discover Japan DX by 鈴木雅之

今年は3年振りのFuji Rock Festivalが開催され、そこで話題となったのが入場規制となった鈴木雅之の圧倒的なステージ。歌の上手さと観衆への心遣いが際立つ。
Apple Musicでその時のSetlistが公開されている。

9. Jacob's Ladder by Brad Mehldau

今年来日予定が新型コロナ感染で来年に延期となったBrad Mehldauだが、このアルバムはこれまでのものとは大きく異なる。二曲目の”Herr und Knecht”を始めとしてまさにProgressive Rock、というぐらいのProgressive Rock愛に溢れたものだった。どうも彼は元々Rush, Gentle Giant, EL&PなどのProgressive RockからWeather Report, Mahavishnu OrchestraのFusionやMiles Davisに入っていった人のようで、彼にとってこのRoots帰りは不思議ではないのだろう。本作にも同じNon Such所属であるChris Thileが参加、Rushの”Tom Sawyer”でVocalを務めている。

10. Minions The Rise of Gru by Various Artists

最後は楽しい一枚。映画”Minions The Rise of Gru”のOriginal Sound Trackは売れっ子ProducerのJack AntonofがProduceしたFunk, Disco, Soulの名曲を現代のArtistが蘇らせた曲群が占める。Brittony HowardがEW&Fの”Shining Star,” Thundercatsが Steve Millerの "Fly Like an Eagle," St. Vincentsが Lipps Incs の"Funkytown," Phoebe Bridgersがthe Carpentersの "Goodbye to Love," Jackson WangsがPatrick Hernandezsの”Born to Be Alive"等をカバーしている。 Original曲は一曲でDiana RossとTame Impalasの"Turn Up the Sunshine"

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これ以外でもいくつか今年記憶に残ったものを紹介しよう。

番外1. Brother Johnny by Edgar Winter

番外2. A Legacy of Rentals by Craig Finn

番外3. Get on Board by Taj Mahal & Ry Cooder

番外4. Jerry Jeff by Steve Earle

番外5. I Am the Moon by Tedeschi Trucks Band

番外6. Misadventures of Doomscroller by Dawes

番外7. Angels & Queens - Par 1 by Gabriels

番外8. Live at the Capitol Theatre by David Crosby &The Lighthouse Band

番外9. Here It Is: A Tribute to Leonard Cohen

番外10. For the Birds: The Birdsong Project

これらの曲はApple MusicのPlaylistで。


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