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「ベストセラーで読み解く現代アメリカ」から次に読むべき本を選んだ

先日音楽ガイドブックをよく読むという話をしたが、それに対して書籍ガイドブックはあまり手にしたことが無い。

これまで他人から「良い本ですよ」と言われて読んだが自分の趣味に合わなかったことが数回ありガッカリしたのと、音楽ガイドブックを参考に音楽を聴くのに比べると気軽さが無いことが原因だと思う。

今回読んだ「ベストセラーで読み解く現代アメリカ」は著者の渡辺由佳里さんが連載している「ニューズウイーク日本版オフィシャルサイト」の連載を中心にまとめた書籍だ。

渡辺さんの著書では、彼女が主幹を務める「洋書ファンクラブ」をまとめた「ジャンル別洋書ベスト500」を手にとったことがあった。彼女は兵庫県出身で助産婦の資格を持ち、その後英語教師を目指して留学、英語教師としての働き口が無いため日本語学校のコーディネーターを務め、外資系企業のプロダクトマネージャーを経て、日本で米国人と結婚し、1995年に渡米したユニークなキャリアをお持ちだ。

何よりも驚いたのは彼女が「グレイトフル・デッドにマーケッティングを学ぶ」の翻訳者であり、さらには同書の共著者が彼女のご主人David Meerman Scottだったことだ。音楽ファンである私は糸井重里氏が監修だったこの本に当然興味を持ったのだが、コスト削減(?)が理由で原書(しかもKindle)で読んだため翻訳者としての渡辺さんに全く気がつかなかった訳だ。

本書は全体が9章に分かれており、今年の3月に出版されたこともあり、最初に今年の米大統領選挙を意識して「アメリカの大統領」が置かれており、次に「アメリカの歴史」、「移民の国、アメリカ」、そして#Metooにも関わる「セクシャリティとジェンダー」、「居場所が無い国」と続く。現代アメリカについて語る構成としては当然のことだろうし、Black Lives Matter運動が最初に起こったことにも触れられている。

ブックガイドだから、当然たくさんの本が紹介されている訳だが、私が興味を持ち次のBooks to Readに載せたのは、上記に続く「競争社会の光と影」、「恋愛と結婚」、「民主市議のための戦い」で紹介された次のような書籍だ。

1. Shoe Dog -  memoir by the creator of Nike フィルナイト著
2. Great Boss - シリコンバレー式ずけずけ言う本  キム・スコット著
3. いま、希望を語ろう-末期がんの若き医師が家族と見つけた「生きる意味」 ポール・カラニシ著
4. Love Anthony by Lisa Genova
5. 幻覚剤は役に立つのか マイケル・ポーラン著
6. 宇宙の覇者 べゾスvsマスク クリスチャン・ダベンポート著
7. 英国人博士、大阪で主婦になる。 トレイシー・ショーン・グリア著
8. 当世出会い事情-スマホ時代の恋愛社会学 アジズ・アンサリ著
9. Preparation for the Next Life by Atticus Lish
10. レス アンドリュー・ショーン・グリーン著
11. Catch and Kill: Lies, Spies, and a Conspiracy to Protect Predators by Ronan Farrow
12. それを、真の名で呼ぶならばー危機の時代と言葉の力 レベッカ・ソルニット著

1は日本でもベストセラーになったし、ある人からお薦めされていたがまだ手をつけていなかったものだ。

2はジャック・ウエルチも言っていたCandour(率直さ、すげずけ言う)の効用についての本だ。実際原題が”Radical Candour"。

3はがんに侵された超エリートが見つめる生き様についての本。4のLisa Genovaの元々の推薦書はアルツハイマー病に関する本だったが、自閉症に関する本があるというのでこのLove Anthonyを選択した。

5はこれまで健康志向の著書が多かった著者が自らサイケドリックドラッグを試す本で、6は二人のIT億万長者が異なるアプローチで目指す宇宙の話。

7は偶然白人女性が大阪人のお主人と結婚したという話で、8はSNS時代の恋愛事情についてインド出身の知的なコメディアンが話す。

9は異邦人の女性とイラク戦争でのケガとPTSDのためドラッグと酒に溺れる元兵士との恋愛物語で、10は中年ゲイ作家のMidlife Crisisの話。

11は#Metooムーブメントの転機となったハリウッドの大物プロデューサーであるハーヴィ・カインスティーンの「ニューヨーカー」での告発記事をまとめた本。

最後の12はアクティビストでもある著者のレベッカ・ソルニットが、若い女性がフェミニズム運動をあまりにも軽視するなどの現在の危機を歴史から再考し、すりかえや冷笑に抗い、予測不能な未来への希望を見いだす、と言う本。

三冊を除いてすべて翻訳本があるが、やはり米国という国家の持つ広範な社会問題とそれに対して戦う人たちの多さに改めて感服する。

そして渡辺さんがご主人のお母さんなど米国人の近親者よりも余程たくさんの本を読んでいることが羨ましい。

さあもっともっと本を読む必要があるなあ、と改めて認識しました。




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