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ここにある幸せ ここにいる幸せ PERFECT DAYSを観て

久しぶりに映画館に足を運びました。第76回カンヌ国際映画祭で
役所広司さんが最優秀男優賞を受賞された作品『PERFECT DAYS』
私の所感は後ほどに。

この映画は、もともとは東京都が都内のトイレの清潔さをアピールする為のプロモーションフィルムとして ヴィム・ヴェンダース監督に
依頼された事が始まりだったとのこと。
ところが、ヴィム・ヴェンダース監督が
都内のトイレを見、出演する役所広司さんと
会うことで、これは映画に出来ると考え、
映画化に至ったことを、Voicyのちきりんさんの配信で知りました。

前置きが長くなりました。私の所感ですが、
この映画を観終わって、木漏れ日のあたたかい光が胸にじわじわと沁みる…そんな気持ちです
上映している映画館が私の住む近くになく、
行き帰りで3時間かけて映画館に足を運んだのですが、その時間は全く惜しくなくもっと早く
観に行っていたら、と思うとともに
この映画は10年後、20年後・・・と
歳を重ねて折りに触れ観たい映画となりました

まだご覧になっていらっしゃらない方には、
ネタバレを含むので恐縮です。
この映画では 平山さん(役所さん演じる)が朝、近所から聞こえる竹ぼうきの掃除の音、
鳥のさえずり、木々が風に揺れる音で目覚める
ところから始まります。
平山さんの部屋には文庫本、音楽、小さなタンス、布団、小さな植物たち、、、があります。
とても質素で整理整頓が行き届いています。
仕事は東京都の公衆トイレの清掃です。
仕事ぶりは、それはそれは丁寧で しかも無駄のない動き。

通勤中はお気に入りの音楽のカセットをかけて
朝のカフェオレから始まり、昼食はサンドイッチと決まっている。
昼食時には木漏れ日の差す公園のベンチで
空や木々を見て笑顔を見せる。
非常に丁寧に暮らしている平山さんは殆ど言葉を出すことはありません。淡々と、ただ淡々と映画は平山さんの毎日を撮っています。

私が心を惹かれたのは、平山さんの人間性の高貴なところが垣間見れるときや周りの人のあたたかさが感じられる時。
平山さんは どんな相手にも丁寧に接しており、
例え相手が酷い態度を示しても暗い表情は出しません。
それどころかあたたかい笑みまで浮かべる。

例えば、公園のトイレの清掃中にトイレの中で泣いている幼児をみつけ、
幼児と保護者を探しているとそこに母親が登場
幼児が平山さんと手を繋いでいた部分を、除菌ペーパーで平山さんの目の前で拭き、幼児を「探していたのよ!」と叱ります。
平山さんは歩き出した親子を優しい目でみつめています。すると、幼児が振り返って手を振ります。
他にも 平山さんが清掃中 トイレを借りる人々は、全員が慌ただしく入るも、全くお礼もお詫びも言わず、中には冷笑を浴びせる人もいるのですが、平山さんは空を見て木々を見つめ笑みを浮かべます。その経緯を見ていた姪は
平山さんを心から慕ってくれるところも。

映画は平山さんだけでなく、登場人物にも光を当てています。
柄本時生さん演じる同僚の清掃員は、動画を見ながら清掃したりと怠慢な態度を見せ、
お金を平山さんから借りたりしますが、気さくに声をかけてくる人に対しとてもフラットな
目線で声掛けを出来る人でもあるのです。

映画では 平山さんの素性も何も語られません
私には、平山さんは以前は裕福で何不自由なく暮らしていたのではないかと感じました。
そんな中、何かをきっかけに今、トイレの清掃員として働き、質素な暮らしをしている。
でも、きっと今を選んで幸せだからこそ、
平山さんは毎日同じ日常を淡々と過ごす。
そして自然を愛で、好きな音楽と本に触れる、
とても充実した時間を丁寧に過ごしているからこそ、いつも口角が上がり、笑顔でいられるのではないか、と。

映画を観て、こんなに生き方や仕事への向き合い方、人への接し方、年を重ねていく時に何が必要なのか、と考えさせてもらったことはありませんでした。
この映画は、年を重ねた方が観ると自分の生きてきた道と照らし合わせて、
そして自分のこれからの生き方について考えるきっかけになるのではないかと思います。

雑感ですが、映画を観て、東京にまた行きたくなりました。
映画に出てくる公園は、以前何度も足を運び
散歩した場所です。
そして、平山さんが自転車で通る道路も知っている所が随所に出て懐かしく思い出しています
トイレは本当に美しいトイレが多く、アート作品と言って過言ではないですが
実は入る勇気がなくて入ったことはありません
これを機に、勇気を出して ″今度″ 入ってみようと思います。

最後に。
PERFECT DAY ではなく 
『PERFECT DAYS』であることが
平山さんの日常の積重ねを映画にしている意味があるのではないかと思いました。
単なる1日のPERFECT DAYではない。
毎日が新しい小さな変化、それは木々が風で
揺れる音だったり、鳥のさえずりだったり、
木漏れ日でさえも一瞬一瞬が変化していることに気づける『PERFECT DAYS』を
過ごせている平山さんを描いているのだと
私は思っています。

私は平山さんのような高貴な人間性は程遠く、
今を必死に生きていて、本を読む時間さえ惜しく、ながらで読める耳読をしている程の時間を過ごし慌ただしく生きています。
でも歳を重ねていった時、私は
平山さんの清々しい『PERFECT DAYS』を
過ごせるような人になりたいと心から思います

PERFECT DAYS 公式サイトで
主人公 平山さんについての言葉と映像が流れます

今日も1日が始まります。
自分の機嫌を取り
気持ち良い1日を過ごします。

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