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悟りの漂いと慈しむ目線と底に眠る影 『PERFECT DAYS』を再度観て

PERFECT DAYSを観てから1週間以上経ち、仕事の休みがきました。
身体は疲れているのに、目覚めたら
"また平山さんの『PERFECT DAYS』を観たい"と思い立ち、
直ぐにスマホで席を予約。
行き帰り3時間弱かけ 観てきました。

今回は、『PERFECT DAYS』2回目を観て感じたことを書いていきます。
ちなみに、前回の記事は映画のざっくりした
あらすじと所感を書きました。よろしければ
お読みください。
また、今回も前回同様、内容について記載していますので、ご了承ください。

前回の初めて鑑賞した時とは違い、次に何が起きるか分かっている私。
今回は、前回気づけなかった部分や流れる音楽
役者さん達の細部の動きや会話、勿論平山さん
演じる役所広司さんの表情には特に注視して
観ました。

実は前回映画を観てから、私は日常を慌ただしく過ごす中で じわじわと平山さんの毎日を振り返って自分の感情が揺れ、というか平山さん
の所作や数少ない言葉が ふと浮かんでくるのです。

私は音楽に深い造詣がなく、残念ながら音楽を深く愛する平山さんの気持ちや映画との繋がりが今ひとつ理解できませんでした。
しかし、私は本が大好きです。
平山さんは古書店に立ち寄り、じっくり時間を
かけて本を1冊ずつ選び購入しているのですが
その中で 幸田文さんの著書「木」を購入し
じっくり毎夜読む平山さんを映画で観ました。
私は映画鑑賞し帰宅してAmazonで早速
ポチりました。(本来ならリアル書店で手に取りたいところですが)

父は著名な幸田露伴。私は恥ずかしながら、
著者の文さんと著書を映画の平山さんを通じて
知りました。
「木」は樹木を近く感じとれる感性を持つ著者が、日本全国 北海道から屋久島までを自身が巡り、出会う木に触れて木の行く末に思いを
馳せている言葉の数々が散りばめてあります。
木に対して "木はあるのでなく、そこにいる"
とし、木への尊敬、自然を見る目、そして
林業で生計を立てる人々...瑞々しく記されています。
なんとなく、私には平山さんが 木のように
しっかりとした軸を持って生きる人で、様々な
思いや過去は、太陽の光や雨となり平山さんの
木に降り、木は葉を茂らせ、風になびいて
木漏れ日を揺らす、、、。
幸田文さんの著書「木」に惹かれる平山さんの
心に、私は少し触れたような気持ちがしました


話を映画に戻します。
主要人物については前回触れた(柄本時生さん
演じる同僚の清掃員)は記載せず、
また後ほどに。

最初は甲本雅裕さん演じる居酒屋の店主。
平山さんに対して、両手を広げて「ハイ今日も
お疲れちゃん!」と笑顔で挨拶しながらジョッキ
のチューハイを差し出す。
酔ったお客さんがテレビの野球を見て、軽い
いざこざになりかけるも、「野球も宗教も
見方は色々だよねー」と笑顔でいなす。
そのやりとりを平山さんは笑顔で見守っている

アオイヤマダさん演じるガールズバーキャストのアヤさん。アヤさんは、その時に感じた事が
直ぐ表情に現れる。アヤさんの仕草は、実は
アオイヤマダさんの癖だったところを、
ヴィム・ヴェンダース監督が気づき映画のアヤさんに取り入れたとのこと。
ダンサーでもあるアオイヤマダさんは、自然に
振舞えるよう監督から気配りされ感動したと。
アヤさんも多くを語りません。しかし何気ない哀しげな表情と涙。アヤさんに対して
穏やかに丁寧に対応する平山さんへのアヤさんの気遣いを感じました。

田中泯さん演じるホームレス。映画ではホームレスに目を留めるのは平山さんのみ。
ホームレスという設定ではありますが、平山さんが出会う田中泯さん演じるホームレスは公園内の大きな木の下で、木漏れ日がさす中、
ゆらゆらとふわりと踊っています。
その姿を見る平山さんの目はあたたかく笑みが
溢れます。
単なるホームレスには私は感じられず、何となく木の精にも見えました。
後半、渋谷(だったと思います)スクランブル交差点中央でフラッと現れふわりと踊るホームレスの姿に目を奪われる平山さんがいました。

浅草にあるスナックのママ役で石川さゆりさんが歌うアニマルズの「朝日のあたる家」(The House of the Rising Sun)は平山さん同様に
思わず目を閉じ聴きたくなります。当然ですが
ママの歌の上手さに聴き惚れます。

大切な登場人物 姪のニコ。中野有紗さんが
中学か高校生を瑞々しく演じています。
ニコは平山さんを心から尊敬し大好きです。
平山さんの清掃する姿を見て、心がギュッと
なっているであろう表情と、トイレ掃除を平山さんに一緒にしたいとお願いしやってみたり
平山さんがランチを食べ、周りの木々を愛でる姿に「この木は叔父さん(平山さん)の友達?」
と屈託なく笑顔で質問します。
ニコは平山さんの妹(麻生祐未さん演じる)の娘
家出をし平山さんの自宅に泊めてもらうニコを
お抱え運転手付き黒塗りレクサスで 平山さんの
妹が迎えに来ます。
妹からトイレ清掃員勤務について聞かれた
平山さん。
背筋がピンと伸び凛々しく、誇らしげに頷きます。清掃の仕事に自信と誇りを持つ平山さんを
感じました。
妹が老人ホームにいる父に会いに行って、と
平山さんに伝えますが、激しく首を横に振る平山さんが。
平山さんの家系は非常に裕福であり、妹と姪は裕福な暮らしをしていることが分かります。

ニコも妹とも、平山さんはハグして別れます。
別れた後、平山さんはその場で立って声を出し
泣いていました。

平山さんは眠ると夢を必ず見ています。木漏れ日と同時に背景に映り込む文字。例えば "影"の
1文字。又 背景に慌ただしく歩くスーツ姿や
レクサスのタイヤが動く、或いは 幼児と手を
繋ぐ大人、、、。
何故か夢はモノクロで薄暗く、影が多いのです

影の言葉で言うと、映画の後半に出てくる
三浦友和さん演じる男性と平山さんの影踏み。
ちなみに三浦さん演じる男性は石川さゆりさん
演じるスナックママの元パートナー。
何となく平山さんは 恋心をスナックママに抱いているように感じた私。
三浦友和さん演じる男性がスナックママとハグする様子を目撃し、平山さんは落ち込みます
しかし事情があるハグであり、深い関係ではなく、平山さんに少しホッとした感情が垣間見れます。

渋い大人の男性2人がユーモアとチョッピリ真剣に影踏みする姿は愛おしく感じました。
一方で影について饒舌に思いを語る平山さん。
影についての自分の考え方を語ります。

平山さんは映画の前半は、驚く程喋りません。
人嫌いなのか、誰とも関わりたくなく話さないのかと錯覚してしまう位です。
しかし平山さんは、喋らずとも様々な人と会釈
やほんの少しの囁くような声で交流はしますし
大切な姪には自ら多く語ります。

例えば、常連で通う居酒屋で平山さんの横に
座ったお客さんに、平山さんが先に帰ろうと
席を立つ時、お互い会話はなくとも軽く
手をあげ会釈します。

トイレ清掃中に、外国人の方が使用法が分からず英語で困った言葉を漏らすと、その言葉に即
反応した平山さん。
使い方を体現して見せ 外国人は難なく使用出来
笑顔に。(この場面から
平山さんは英語は堪能であると想像します)

平山さんは毎日行く銭湯で出会うお爺さん達と
顔見知り。
軽く会釈し、お爺さん達の会話の様子を微笑みつつ自身はバブル湯に顔の下半分までつけて、ブクブク、、。
この銭湯のシーンでのクスッと笑えた場面は
銭湯にあるプラスチック製の椅子がお爺さんが
立ち上がる時にお尻に張りつき、1歩踏出すと
床に落ちる場面。
クスッと笑えました。

話があちこちしたのですが、
映画の最後の平山さん演じる役所さんの演技は圧巻。
1度目の鑑賞では涙がスーッと流れた私。
今回2度目は涙がとめどなく溢れ、
エンドロールをしっかり観ても、涙が溢れ
席を立つには時間がかかりました。

最後に。
映画の最後は
平山さんが朝日を見ながら出勤する場面。
車内で平山さんの選曲した音楽が流れます。 

Nina Simone の「Feeling Good」

It’s a new dawn
It’s a new day
It’s a new life for me
And I’m feelin’ good

 新しい夜明け
 新たな一日
 私の新たな人生
 なんていい気分!

平山さんのそれまで生きてきた道と 今。
葛藤はあれど清々しく思える平山さんの心が
あのラストシーンの表情に通じるのだと
私は思っています。
そう感じながらラストシーンを観ていたら
涙がとめどなく溢れたのです。

追記
この映画で何度も同じ言葉を平山さんと姪の
ニコさんが、自転車を互いにジグザグに漕いで
夕焼け空の下 前に進む場面があります。
『今度はこんど。今はいま』

この言葉は、ニコさんに平山さんが
「ニコのママと自分は違う世界に生きてる」
との話から始まります。
ニコさんは
「自分はどちらにいるの?」
と質問。
平山さんは黙っています。
そして、ニコさんは2人が今立ち止まっている橋の下を流れる川を差し
「この先は海?」と又聞くのです。
平山さんは「そうだよ」と答えます。
ニコさんは「行く?」と又聞きます。
平山さんの答えは
「今度ね」と。
ニコさんは「今度っていつ?」と。
そして平山さんは笑って 

『今度はこんど。今はいま』

と。
そこから2人は『今度はこんど。今はいま』と
言いながら進みます。
この会話の解釈に正解はないでしょう。
単に "また今度ね" の意味でないのは明らか。
いつかは明確に言えないけど、今度ね。
今を先ず生きよう、、、なのか。

さて、、、大変長い記事となりました。
ここまでお読み下さった方、
本当にありがとうございます。
感謝の気持ちでいっぱいです。

平山さんの『PERFECT DAYS』を再度観て
また、観たくなる私がいます。
2度目の鑑賞は気づける部分が出てきて嬉しく
平山さんを近くに感じる気持ちになれました。

この映画は見終わってから、じわじわと
様々な想いや生き方について深く考える意識が
芽生える私がいます。
何より、役所さん演じる平山さんに、
何となく 悟りの空気感を感じ、また
会いたくなるのです。

今日も1日が始まります。
自分の機嫌を取り
気持ち良い1日を過ごします。

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