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いくつかのショートストーリー

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さらりと読めるお話です。 超短編小説/ショートストーリー/ショートショート
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2022年1月の記事一覧

メタフィクションのふたり

 ある診察室にて。
 「どうぞ」
 医師の合図のあとに一人の男が入室する。
 「失礼します」

 医師、男が座るやいなや言葉を投げかける。
 「灰色の猫」
 男は何のことだか分からずキョトンとする。
 数秒の沈黙が続いた。医師はなぜか心が放り出されたような、虚しい表情を浮かべていた。
 医師は気を取り直して男に訊く。
 「本日どうされました?」
 「えーっと、ずっと誰かから見られているような気がす

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