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若い女の子、浮気、お金、出世

若い女の子、浮気、お金、出世

DXだのビズリーチだのメタバースだのちょうちんのと、時代がどう変わろうが男の躓く理由は変わらない。

『東海道四谷怪談』は伊右衛門が「若い女の子、浮気、お金、出世」に目がくらみ、妻お岩との結婚生活を「無かったこと」にしようとしたことから起こる。

怖かったー。定宿ホテルのバスルームのこの絵がお岩さんに見えるくらい怖くて、夜なかなか寝付けなかった。

絵に罪はありません(笑)

「お岩さん」というだけで日本人ならみんなが「わかる」というほどの有名なホラー。でもよく考えてみるとなぜ「東海道四谷怪談」なのか。

「東海道」というのは東海道新幹線の東海道であり、なぜそれが四谷の怪談のアタマにくっついているのか、確かに気づけばおかしな話である。

思うに、初演された江戸時代、「東海道」というのはみんな知ってる。江戸と大坂をつなぐ日本の動脈だ。知ってるけど、歩いたことはない。お伊勢参りにでも行くならともかく、まず普通の人は「名前は知ってるけど、体感がない」ネーミングだった。

「四谷」知ってる。雑司が谷四谷町だ。そこの怪談なんだろう。だけどアタマにくっついてる「東海道」とは・・・。あ。そうか、四谷に限らず、「世間」って意味だ。

世間一般、男なら躓く理由で、女房子どもを不幸にする話ってわけだ。

ということで、「東海道四谷怪談」、初演の1825年から198年経っても、男は躓く。人間ってのは変わらない。変わらないが、演じる役者はどうだ。

お岩さん演じる坂東玉三郎さんは今年御年73歳、伊右衛門の片岡仁左衛門さんは79歳。二人の人間国宝の身体能力は全く衰えていない。

歌舞伎は基本、座敷を立ったり座ったりする。これ、現代日本人はほぼやらない行動だ。畳の部屋、ないから。フロアリングでテーブル椅子生活。

座敷に正座したあと、立つ。

キツいよ。

これを演目によるが、何度もやる。
体幹鍛えてないと、まず無理だ。

ラストシーン、逃げようとする伊右衛門をヒトダマがつかまえ、引き戻す。背中から引っ張られる伊右衛門のイナバウアー動き。79歳であれをやすやすとやってのけるのは、日ごろの鍛錬の賜物しかない。

歌舞伎役者は一人ひとりがフリーランス。売れなきゃ、お声がかからないのもフリーランスと同じ。

そのために彼らのやっていることを推測すると;

  1. 食生活を始めとする節制

  2. 身体の鍛錬

  3. 新しい情報に触れ、脳を活性化させる

2と3は意識的に実行しているが、1は自信ない。食べたいものを、食べたいだけ、好きなだけ食べてる。お酒も飲んでる。うーん。ここかなあ。

エコノミスト10月5日付記事『さらばiPhone。生成AIに必要なのは新しいデバイスだ』が面白かった。筆者は「スクリーン時代の夜明けか?」とサブタイトルしてる。

要するに、Googleにせよ、Facebookにせよ、TikTokにせよ、You Tubeにせよ、ビジネスしてる舞台は全部iPhone(スマホ)であり、間借り人気分は否めない。
ビジネスの主導権を握ってるとは言い難い。
そこへ出現したのが生成AIとヘッドセットに代表される新型スクリーン体験を提供するデバイスだ。

もう、うちら、アプリのちっちゃい世界だけでジタバタするの、やめたいよね。だからこれからはソフトウェアじゃなく、ハードウェアで新しい競争戦略を作っていこうぜ。

ということのようだ。

ただ、歌舞伎の歴史を振り返ると、ハコつまり劇場は江戸時代からずっと変わってる。電気のない昔はライムライト、江戸っ子に言わせると「れえむれえと」だ。舞台(ぶてえ)のとっつきで石炭を燃やす。

現代の名古屋・御園座

照明器具なども大きく変化したが、変化しないのは演目、ソフトウェアだ。
そりゃもちろん、役者は「なぞる」ことなんてやらない。自分の世界観を全身で表現する。それでも、中を流れるものは江戸の昔から変わりゃしない。

若い女の子、浮気、お金、出世

男は今も昔も、おバカさんなのである。

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