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ヒッチハイカーになりたい
「こんにちは! 阪本です。昨日お借りした傘、返しに来ました。ありがとうございます。おかげで助かりました」
借りた傘を返却しに歯科医へ。
![](https://assets.st-note.com/img/1714633345359-QH1rHP93FL.jpg?width=1200)
こうして少しずつ顔と名前を売り込むのである。
「悪いようにはされない」
というのは、こういう地道な努力から生まれる。
そのまま帰宅してもいいのだが、成瀬の訓えに従い
「できるだけ地元にお金を落とす」ポリシーで、
商店街にある西日本書店で続編を購入。
![](https://assets.st-note.com/img/1714633456426-uTVXzFtpiz.jpg?width=1200)
どこかでお茶しながら読みましょう。
これも、全国区チェーンのドトールとかではなく・・・と思ったらドトール閉店、あとに雀荘が工事中だ。
少し歩いて坂井珈琲。コーヒーフロート550円。
PayPayかキャッシュのみなので現金で支払った。
「地元にお金を落とす感」大で、満足する。
端っこの席に陣取り、至福のひとときを。やっぱり成瀬はいい。
そろそろ帰るか、と立って、上着着て・・・やってたらおばさんが前に待ち構えている。
「?」
「端っこ、座ろうおもて」
他に席、いっぱい空いてるのに。
「あ。はい。いま立つとこですから」
「ひょっとして・・・?」ぼくの顔をのぞきこむ。
「はい?」
「違うわ」なんやねん!
こうして大阪では知らないおばさんとも自然と漫才になる。
西日本書店の前を通り過ぎたとき、あるアイデアが浮かんだ。それは今日検証してみる。
一号線沿いに歩く。と、ヒッチハイクの看板掲げる男が。
「東京へ 途中まで乗せてください」
瞬間、「こいつ、甘えてる」と思った。
ヒッチハイクが甘え、ではない。
彼の立っている側が、西向きの車線なのだ。
東京は東。江戸時代の江戸の頃から、大阪より東にある。
立つ場所が逆。
「地元民じゃないから仕方ない」
とは思わない。
今どき、スマホにはコンパスがある。東か西かくらいは誰でもわかる。
成瀬は言う。
「何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」
「たとえばわたしはパトロールを好きでやっているが、警察官になりたいとは思ってない。会社員になったとしても、パトロールはできるだろう。だからわたしが何になるかは未定だが、地域に貢献したいとか、人の役に立ちたいとは思っている」
「東京へ」の看板掲げてる彼はヒッチハイカーになりたいのだ。
ヒッチハイクしたいわけではない。
本気でヒッチハイクしたければ、自分がどっちへ向いているのが乗っけてくれるドライバーの負担にならないか、最優先に考える。
彼がいま立っている場所で、仮に誰かが拾ったとする。
西に向かっているドライバーは、どこかでUターンしなければならない。
あるいは、迂回か。
「ヒッチハイカーになった自分」に自分で「いいね」押してる。
だから甘え、という。
教えてやろうかどうか迷ったが、何が起きてもそれは旅の楽しみだろう。なので放置した。
起業もそうで、「起業家になりたい」人は山ほどいる。
でも、起業を動詞にした途端、お金の計算、商品開発、顧客創造、税務署とのやり取りなど、地味でめんどくさい仕事をやらなければ前に進めない。
人は、小さな問題ですら、できれば逃げたいもの。まして問題てんこ盛りの状況など、とんでもないと考えるのが普通だ。生活はきちんとしていて、予測可能であって欲しい。そう考えるのが人情というもの。ビジネスパースンも例外ではない。秩序こそが成功の道、そう習った。折り目正しさと正確さ。家事や簿記ならそれもいいだろう。
創業したばかりのビジネスはいかなる予想、予測、パターンも当てはまらない。粗削りで、驚きの連続、予想もしない結末ばかりだ。しかしよく考えてみればこの世の中すべて同じで、ビジネスの世界だけが例外ではない。
ハチャメチャな問題への取り組み(解決とは限らない)こそが、起業の面白さ、醍醐味であり、つまるところそういう「何をやるか」の積み重ねが、毎日を明るくしていく。
さて。くだんのヒッチハイカー、無事、東へ行けただろうか。今頃福岡だったりして。それはそれで面白い。
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