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キィワードは「異界」

本を読んでて眠くてたまらなくなることは滅多にないのだが、この本だけはあかんかった。眠くてねむくて。

ただわかったのは、日本の新聞社の報道力がものすごく落ちている、ということであり、それは既に政権報道やらこの2年間のパンデミック報道で感じてわかっていたから新しい発見でもない。再確認だ。
大組織内のごちゃごちゃはぼく自身、旭化成で嫌というほど体験している。だから今さら、時間使って読むのも。

いま轟音立てて世界が変わっている。

そこで必要なのは「異界」であり、惹かれるのは「異界」。

神戸女学院。
高校3年生、秋。同級生と受験でややこしい時期に付き合い始めた。そのガールフレンドの選んだ大学。入学し、直後にフラれた。
春のバザー、遊びに行った。「女子大」という響きに憧れて。
そういう「あかん」姿勢にバチが当たったのか、見事にフラれた。フラれたけれど、神戸女学院近辺の阪急沿線の空気感、好き。

以来、ずっと「手の届かないけれど大好きな憧れ」としてぼくの中にある。

その空気感は映画『阪急電車』によく出ていた。好きな映画だ。

神戸女学院は、1875(明治8)年、キリシタン禁止令が解かれた直後、アメリカからやってきた2人の女性宣教師が開いた。
いまでこそ、「ネイティブのアメリカ人に英語を教えてもらったら就活に有利」とかいう動機はあるかもしれないが、時は明治の始めである。
そこにニーズというものは無かった。
まさに神戸女学院は「異界」だった。
わからない魅力に満ちていた。

だからこそ、7名の女性が手を挙げ、入学した。彼女たちに「なんで?」と聞いてもちゃんと答えられなかったはずだ。

「なんか、魅力を感じたんです」くらいしか、うまく言えなかったと思う。

大組織は腐っている。その通り。今朝もある役所からのメール添付書類が暗号化されたZIPで扱いに困った。パスワードが別メールで飛んできて、何の書類かというと、請求書である。今度ぼくが利用する会議室の。
ホワイトボード580円は利用後でないと今請求できないから、後日あらためてその分の請求書を発行しますので振り込んでください。

あのね。

580円振り込むのに手数料110円かかるんです。純利益110円稼ぐためにどれだけ苦労すると思ってんですか(笑) そしてそうやって稼いで納めた税金であなたたちの組織が成立しているわけで。後日あらためての請求書発行や郵送料の出どころも税金だ。

これ、今に始まったことではなく、ここ8年ずっと言い続けているが、変わらない。変える気がない。役所で最も嫌われるのは「変える」ことだから。

この前も、ある役所からのメールで「講師阪本のプロフィール」を開くのにパスワードが必要だった。困る。スマホで見れないから。

「ZIPで暗号化してメールする」というのは、日経編集部もそうだった。大組織は「過去」にいる。異界の魅力なんてない。

これからは、「何だかよくわからないけど、面白そう」という「異界」を作り、「つまらないこの現実」との「回路」を通す。それがめちゃくちゃ面白い。楽しい。キィワードは「異界」です。

*参考「倉吉の汽水空港でこんな話をした」内田樹、『コロナ後の世界』収録

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