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工業製品への文字入れ技法(2)
前回の記事では光とインクを用いる文字入れ技法を紹介しました。
今回は金属を主に用いる文字入れ技法を紹介します。
機械彫刻
概要:
木材や金属製の部品に対して、CNCフライスやパンタグラフ彫刻機と言った加工機を用いて文字入れする技法です。ボールエンドミルやエンドミルと呼ばれる刃物で金属を削って文字の形状を作ります。文字形状の周囲を削るか、文字形状の内部を削るかで表情を変えられます。印鑑でいうところの陽刻と陰刻ですね。
文字部分の特徴:
製品と文字の素材が同一なので文字が消えにくい。
彫刻単体では色の自由度は無い。
加工する素材がステンレスのような削りにくい素材(難削材)だとエンドミルの寿命が短い、加工に時間が掛かる等の理由で部品単価が上がる傾向があり、安価な製品にはあまり使えない。
回転する刃物で削るため、凹文字の場合は文字の角はRがついてしまう。
ピン角にする場合はエンドミル以外での追加工が必要。
応用例:
この方法のために作られたそのものズバリな「機械彫刻用標準書体」という書体がJISで定められており、古い看板や歩道橋の注意書きなどによく用いられている。
凹ませた文字箇所にインクを入れると表面張力でぷっくりと綺麗に凹むのでリッチな表情になる。
工業彫刻(金型への彫刻)
概要:
金型に文字を掘り込み、そこへ溶けたプラスチックや金属などを流し込んで素材に転写するという技法です。たい焼き機の型がイメージしやすいかと思います。金型に熱で溶けた素材を流し込むこれらの加工方法では冷え固まった後にとり出せるように抜き勾配(プッチンプリンのような台形)をつける必要がありますが、文字部分も例外ではなく抜き勾配が必要です。金型から真っすぐとり出せない形状になる箇所(アンダーカット)に文字入れをしたいときにはスライドコアを用います。
文字部分の特徴:
金型品なので大量生産に向く。
製品と文字の素材が同一なので文字が消えにくい。
文字自体は文字が乗る面に対して凸凹のどちらにも出来る。
文字部の凸量、あるいは凹量によっては文字を入れた裏側にヒケが発生する。
文字は鏡面仕上げ、周囲はシボによる梨地仕上げなど、質感の変化を付けることが出来る。
同一素材になるため文字と地の色に差を出すことが出来ない。
金型で成形する場合の制約を受ける。抜き勾配の設定が必要になる。
応用例:
スライドコアを用いればアンダーカット箇所にも文字入れが出来る。
環境規制に適合していることを示すロゴマーク(CEマークやWEEE指令マークなど)や使用時の注意書き等を出荷国別に入れたいときにスライドコアを用いる場合もある。
刻印(打刻)
概要:
非常に硬い金属に左右反転した文字形状が彫られた棒をハンマーで叩くことで文字入れする技法です。指輪やネックレスなどのアクセサリーや革製品などで用いられます。どちらかというと一点ものに使われる技法ですが、一応ご紹介します。大量生産したいときは後述のプレス加工を用いることで実現できます。
文字部分の特徴:
製品と文字の素材が同一なので文字が消えにくい。
一点ものの製品にも文字入れが出来る。
色の自由度は無く、刻印だけであれば素材色そのままになる。
プレス加工
概要:
文字やロゴを彫り込んだ金型を板状の金属製品にプレス機で押し付けることで文字を入れる技法です。キッチンで使うステンレス製の計量カップの容量表示、食器類のブランド表記あるいは板金製品の型番、製品名などに用いられます。
文字部分の特徴:
製品と文字の素材が同一なので文字が消えにくい。
文字色に自由度は低い。
薬品を使わないので食器、調理器具に使用しても特に問題ない。
二色成形
概要:
二種類の異なる樹脂を順番に射出成型することで文字と周囲の色に差を出す技法です。製品形状の成形と文字入れが一工程で済みます。身近な製品だと歯ブラシに用いられています。
文字部分の特徴:
製品と文字の素材が同一なので文字が消えにくい。
樹脂は色の自由度が高いため、文字の色にも自由度がある。
透明な樹脂と光源を用いれば光る文字も作ることが出来る。
焼印
概要:
金属で作られたな刻印を炎や電熱線で熱し、皮革や木材、あるいは饅頭のような焦げる素材に押し当てて文字の形状に焦がす技法です。ここで用いる刻印自体は切削以外にも鋳物や板金などで作られます。英語ではbrandと呼び、ブランドやブランディングの語源でもあります。
文字部分の特徴:
素材を焦がす事で文字入れするので、色の自由度は低い。
焦げる量(色の濃さ)は調整できる。
表面が変質しているので耐久性がある。
その他、概要だけ紹介
筆者自身が知ってはいるものの扱ったことが無く、かつ自分の言葉でキチンとお伝え出来ない技法も一応ご紹介します。この書き方で間違ってたらごめんなさい。。
昇華印刷:
熱を用いてインクを蒸発させ、布やプラ部品の表面より内側に染み込ませる技法です。高級キーボードの文字印刷に使われているようです。
ホットスタンプ:
金属を薄くのばした箔や顔料で印刷したフィルムを立体物を熱で蒸着させる技法です。
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ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
この記事を読んだことで読者の方の生活の中に新しい気づきを与えることが出来れば嬉しいです。
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