あなたと、知らなかった自分と。
陽射しが小道に照り返り、もうすぐ訪れようとしている夏に挟まれたような気分だった。夏は暑くて好きじゃない。
中でも、夏に差し掛かるジメジメとしたこの季節が一番好きじゃない。だが、頭の上でうねるパーマにとっては好都合のようだ。
***
恋人と、久々にバドミントンをした。
何年ぶりだろうか。
記憶している範囲で言えば、4年前以来だろうか。いや、あの時は結局し損ねたから、もっと前ということになる。
恋人を自宅の2階に残し、トイレに行ったついでに何か遊べるものはないかと探し出した。
サッカーボールを蹴り合おうか、確か中学生の時に祖母に買ってもらったフットサルのボールが有った気がするな。と探してみたが、いつから外に放置していたのだろう、表面がボロボロになってしまっていて、空気も皆無だった。
じゃあ残るはバドミントンかフリスビーだな。(中学生か?)
裏の物置には、バドミントンのセットとフリスビーが一緒の袋に入っていた。ここで一度考えた。
これを持って2階に上がって「やろう!」と言えば、恐らく喜んでくれるとは思うが、彼女も21歳、そしてこんな暑い日では流石に喜ばないかもしれない、一旦置いておこう。
取り敢えず手ぶらで階段を上がり、クーラーの効いた自室に入ると、「何か遊べるものないかなーと思って探してみたけど、サッカーボールはパサパサになってたわ」と言った。
そこから話す必要は無かったが、まあいい。
「いいね。サッカーしたい」と恋人が言う。
お、これはバドミントンもいけるか?
「バドミントンなら有った」
と僕が言うと、
「バドミントンしよ」
と恋人が言った。
初めから持って来れば良かったかもしれない。
***
微かな風に涼しさを感じながら、予想以上の暑さの中ラケットを振った。
バドミントンに風は必要ないが、夏を控えた僕らには必要だった。
汗が頬を伝う。前髪の内側が濡れていく。ズボンの中に熱気が籠っていく。
これは立派な夏じゃないか、2ヶ月先が思いやられる。
ラケットを振った時のブォンって音が2つ、夕暮れ前の閑静な住宅街に響いていた。
少しだけのつもりだったが、珈琲と煙草の休憩を挟みながら案外長いことしていた気がする。
日陰に行くと、視界に日光の残像が緑色に残った。
シャワーを浴びて、少し休憩してから、お互いにバイト先に向かった。バイトに出かける時間でも空は明るい。日が長くなったなぁ。
***
外で遊ぼうなんて僕らしくないな、と思いながらバトミントンに誘ったわけだが、想像以上に楽しかった。
恋人もとても楽しそうだったので、思い立ったが吉日、”らしくない”を捨てて、恋人と汗だくな昼下がりを過ごすのもありだ。
今の恋人と付き合ってから、良い意味で子供っぽいところが出てきた気がする。無邪気になれる相手がいるということは、とても幸せのように感じる。
去年の夏はシャボン玉で遊んだっけなぁ。
夏はこれからだから、まぁ暑いのは嫌いなので憂鬱ではあるけれど、何して遊ぼうか。
お互い、今年の夏は大変だけど。
3回目の夏、そろそろやってくるね。
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