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松竹映画「還って来た男」(1944)

(カット=http://www.log-osaka.jp/article/index.html?aid=290&p=3

(運動会のマラソンに飛び入りした主人公(佐野周二)が一等賞を取り、貰った景品を、世話になっているレコード店の娘にあげるシーン。ブルーノ・ワルターと「死と乙女」のポスター、ベートーヴェンのライフ・マスクに注目!)

 昭和19年の松竹 (マツタケではない) 映画に、「還って来た男」(佐野周二・主演) という作品があります。これが、とってもいい映画なのです。もうビデオを何回見たか分からない位・・・
 何より嬉しいのは、この作品が我が青春の都・京都を舞台にしていること。戦前の京都の町並みが、何とノスタルジアを掻立ててくれることでせう。(いつの間にか文語体になって来た) 次に、映畫の中に昔のレコード店が出てくること。ベートーヴェンのライフマスクが飾られた店内にはブルーノ・ワルターやマーラー、R.シュトラウスなどのポスターが貼られ、「運命」(演奏は何と当時敵国だったアメリカの、1939年録音のトスカニーニ/NBC !! )「雨だれの前奏曲」(コルトーかな? ) そして「死と乙女」などの名曲が惜し気もなく流れる・・・この「死と乙女」の演奏が絶品なのです。胸を揺さぶるポルタメント!! (演奏者はブッシュかカペー、それともレナーか? ) 今私は、この映画の最初に出てくる石段の坂道や「夕陽丘國民学校」などが何処にあるのか、そして現在どうなっているのか知りたくてなりません。もしご存知の方がいたら是非教えてほしいんですけど・・・。
今回はたいそうマニアックな内容になってしまいました。
 ちなみにこの「還って来た男」は鬼才・川島雄三監督の第1回監督作品で、音楽はあの大澤壽人 (知ってる?)が担当しています。この3月16日に大阪で上映されるイベントがあったそうで、私のHPの大澤に関する文章 (http://www.medias.ne.jp/~pas/ozawa.html ) を使わせて欲しいという依頼が舞い込み、快諾しました。仕事が無ければ絶対見に行ったのに!! (冒頭の写真は、そのイベントの紹介ページに掲載されていたものです)

 余談ですが、この映画に写っているベートーヴェンのライフマスクと全く同じものが、私の部屋にも飾ってあります。40年ほど前、京都の古道具店で購入したものなのですが、ひょっとしたらこの映画で使われたものなのでは・・・などと夢のような想像をしています。

『還って来た男』メモ
1944年/松竹大船/67分/白黒 
監督:川島雄三/原作・脚本:織田作之助/製作:マキノ正博/撮影:斎藤毅/音楽:大澤壽人
出演:佐野周二、笠智衆、田中絹代、吉川満子、小堀誠、三浦光子、日守新一、山路義人、坂本武
◎織田作之助が自作小説「清楚」「木の都」を自らシナリオ化した、盟友・川島雄三の監督デビュー作。

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(http://www5c.biglobe.ne.jp/~nuage001/photo%20kawashima%20kaetekitaotoko.htm)

(映画冒頭と最後に出て来る印象的な坂。筆者はずっと京都東山区の坂と思い込んでいたが、上記HP情報から大阪市天王寺区下寺町にある「口縄坂:くちなわざか」である事がわかった。貴重な情報に感謝し、転載させて頂きます。)


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