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山菜夜話

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山菜について書いています。山菜耽美主義を目指します。
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2021年12月の記事一覧

山菜夜話13 フジ その2

フジの花の開いたものを採取しているときに、眼のなかに波紋のようなゆがみが広がっていくのを感じることがある。まるで油膜が溶け出してくるように、眼球表面で光の屈折が波紋状に変化することで、視界にゆがみを生じてしまっているようだ。一瞬、中心性網膜症とか黄斑変性症とか、こむずかしい眼の病気や異常を疑ってしまうが、しばらくすると、その波紋のようなゆがみの症状は何事もなかったように治まってしまう。原因はなんなのか、状況から考えてこれはフジの花しかないだろうと、いろいろ調べてみたところ、ど

山菜夜話12 フジ その1

フジという植物は、公園や憩いの広場に藤棚が作られるなど、園芸植物としても有名であるが、山菜としても一級品の味覚を持っている。ワラビ採りに赴いたときなどに、藤の花に巡り合えれば、実に爽快な気分となれる。西行法師の「願わくは花の下にて春死なん」の歌にある花とは、無論、桜のこととは思いつつも、藤の花のシャワーを浴びていると、藤の花の春ということだっていいじゃないかと思えてきて、萱場の大地のぬくもりの上に大の字になって、降り注ぐ藤の花の輝きを仰ぎ見ている。ウグイスがしきりにさえずり、

山菜夜話11 ウド

山菜と言えば、暗くじめじめした雪解けも終わりきらないような湿地の片隅に、恥ずかし気に顔を覗かせるような山菜が多いけれども、日当たり斜面に堂々とその姿を現すウドという奴は、その色彩や姿形も相まってどこか健康的な植物のように見える。太陽に愛されているかの山菜の趣きに満ちている。栽培品の東京ウドが有名な関東圏の人たちには、軟白ウドの方が目にする機会が多いのだろう。軟白ウドの方をウドと呼んで、山でとれた野生のウドをヤマウドと別名をつけて区別したりする向きがあるようだけれども、本来、太