ひとは言葉によって言葉を乗り越えることが出来るか。
頭の中にわだかまりとして残り続ける負の符号の言葉の存在を打ち消すために、力強く心に響く言葉を求めて生きていた季節が確かにあった。
頭の中にわだかまる負の符号の言葉の存在を打ち消すために必要なのは、取り繕われた正の符号の言葉などではなく、懊悩の果てに紡ぎ出された負の符号の言葉なのではないかと漠然と考えていた。
マイナスの符号の数字に、いくらプラスの符号の数字を掛けあわせても、マイナスの符号は微動だにしない。
マイナスの符号を、プラスの符号に転じる唯一の方法は、同じようにマイナス