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山菜夜話

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山菜について書いています。山菜耽美主義を目指します。
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2021年10月の記事一覧

山菜夜話10 ジョンナ

ジョンナとは、図鑑などでこれを見て、わかりやすそうな名称だったので、対外的にはこれを用いるようにしている。図鑑などに掲載される際の正式な名称は、ヤマブキショウマである。土地によっては、イワダラなんていう風情のある別名などを用いるところもあるようだ。秋田の山の奥の奥の生まれだった私の父は、これをアカハギと呼んでいたのだが、一般的な図鑑には、アカハギという名称は、別名としても掲載されていることはなかった。アカハギという名称で育ってきた私であったが、対外的にアカハギでは通じないとい

山菜夜話9 シドケ

シドケとの出逢いには、いつも何がしかのドラマがある。小滝のほとりの苔むした岩のかたわらに育つ、シドケの草姿を偶然に見つけたときは、思わず、はっと息を呑む。飛沫を浴びて、シドケの葉は濡れそぼり、茎はますますその透明感を増して、枝沢の風景を飾るかのように、しとやかにたたずんでいる。モミジの樹の萌え出しか、ひこばえのようにも見えなくもないその姿につけられた、シドケの正式な呼び名はモミジガサである。名前もまた風情のかたまりとなっていて、眼で見ている光景に対して、概念上からも興を添える

山菜夜話8 アイコ

アイコの正式な呼び名はミヤマイラクサである。略してイラなどと呼ぶところもあるそうであるが、雑草としてよく見かける一般的なイラクサなどとはまったく異なる種類である。イラクサのイラとは、イラ蛾などと語源は同じで、刺毛のことを指している。秋田を中心として、東北ではアイコの呼び名で呼ばれることが多いのであるが、この厄介な刺毛を持つ厄介な山菜のことを、何故、わざわざ女性の名前である愛子などと名付けて呼んでいるのか、由来のほどは不明である。秋田では、ボンナやシドケと並ぶ、山菜の御三家であ