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「余命1日の僕が、君に紡ぐ物語」―あとがき:岸本アキラ

はじめましての方ははじめまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。

岸本瑛と申します。このたびは私の新刊、「余命1日の僕が、君に紡ぐ物語」を手にとっていただいて、誠にありがとうございました。

手に取っていないけどこの文章を読んでいる方はぜひ手に取ってくださるとうれしいです。


さて……上述した新刊を読まれた上で、この文章を読まれている方はこう思ったのではないでしょうか。


「お前本編とキャラ違くね?」


そらそうですよ。新刊はいわば回顧録みたいなもんなので、普段の私の言動や内心が描かれているのです。でもここはあとがきなので、私から読者である皆様へ直接話しかけている感じとなります。


そんなときは良識ある敬語も使うのです。私は確定申告とかもやって住民税も払っている大人なのです。


さて、新刊はいかがだったでしょうか。……ああ、最後の問いかけはキザなうえになんか調子こいてて、良識ある大人が使う口調じゃなかったですね。そこは見逃してやってください。書き終えたことでテンション爆上げだったもんで。あと、元々はもう5年くらい前に書いた小説なんで、当時は若かったんですよね。


5年前? と思われたお方。そうなのです。実はこの本、以前一度双葉文庫さんから刊行された小説を改題・改稿して新潮社さんより再刊された本なのです。


なかなかにヘヴィな状況下で書き上げたこの小説は、おかげさまで一部の方にはとても好評をいただき、熱い感想もたくさん目にしました。売れ行きに比して、かなり沢山の感想でした、


そのおかげで、再刊行となったわけです。これはわりと珍しいことなんですよ。


あ、もちろん、再刊行にあたり、かなり加筆しました。当時のことを思い出しながら……なんてことが不可能なのはおわかりかと思いますので、メモや「引継ぎ」を読み返して、こう、膨らませて? あるいはもっと過去におきた出来事を回想として加えたり。


しかし、もう5年前とはヤバいな……。29歳だぜ俺。もうすぐ30歳かよ、ジミ・ヘンドリックスより年上になっちまったぜ。とか思います。


で、この記事ですが。これは編集者の熊川さんから「あとがきもつけようぜ!!」と言われて書いたものの、やっぱりああいう内容なので小説のラストのあとに「あとがき」が入るのもなんか余韻を乱すかもしれないと結果ボツになったものです。


でもせっかく書いたので、修正したうえでこうして宣伝も兼ねた記事として投稿しています。いわば、別冊に入れたあとがきです。


で、あとがきって作者の近況とか書いたりするじゃないですか。


双葉文庫版を読んだうえで新潮社nex版を買ってくれた人もいるかもしれません。そしてそんな人は「あの主人公、というか作者はその後どうしてんのかな?」と思ったりするかも? ということで私の近況などを報告してみます。


とか言っといてなんですが、普段なにしてんでしょうね私。そんなことあんま意識して生きてないじゃないですか、普通。


うーん。

とりあえず昨夜は馴染みのバーに行ってアイラモルトを飲みました。旨かったです。今日は昼頃起きて小説書いて、筋トレして、サウナ入って、ラーメン食いにいきました。今はこれを書いています。


お前変わってねぇじゃねぇか、とお思いでしょうが、そうでもないです。

馴染みのバーはマスターの田中さんのほかにイケメン大学生がバイトで入ってるし、私はあのときより多くの出版社とやりとりしています。前よりちょっとだけ売れるようになりました。やたらと試作品のデザートを食わせてくる人が近くにいるせいでちょっと太りかけたのですが、鍛えなおしてまた腹筋を割りました。すごいでしょ。



あとは周りの人の話を少し。

妹は……、ああ、その前に妹は本当は日向って名前じゃないですよ。当り前じゃないですか。妹は大学を卒業して、なんかベンチャーな感じの会社に就職しました。ファッションに関係するアプリかなんか作ってるそうです。クソ文系の兄を反面教師として、IT的なスキルを習得した結果だそうです。詳しくは知らないですけど、ちゃんと社会人やってるっぽいです。はいはい良かったですね。そういえば彼氏作るって言いだして二年くらい立ちますけどそっちはどうなってんでしょうね。


修は、ああ、アイツも本名は別だけど、アイツのことは知っている人も多いかもしれませんね。先月もなんか雑誌に出てたし、イケメン物理学者って時点でバレバレですよね。この前キャッチボールしたとき、なんか物凄いことを言ってました。ここで俺が発表するわけにはいかないので、そのうち出るであろうニュースとかで驚いてください。


でも俺だって負けねぇぞ、見てやがれ。と思ったし、本人にも言いました。あいつはいつも通り爽やかに微笑んで「了解」とか言ってました。ちくしょうイケメンめ。


と、こんな感じで私と私の周りは五年後を過ごしています。


大人になってからの五年って、わりと短いですよね。日々をなんとか乗り越えて、あるいはやり過ごして、あるいは逃げ延びて、生きているだけであっという間に時は過ぎていきます。でも、「あっ」の間にはきっといろいろな出来事が起きている気がします。


それはきっと、昨日から今日に、今日から明日へと、その人が続けてきた大切なバトンリレーなんですよね、……多分。



小説本編で伝えようとしたことをあとがきで書くのは野暮だし無理なので、この辺にしときますが、こんなことを実感とともに思えるようになったあの日々のことは、覚えていたいです。


忘れ続けた日々のことを、覚えていたい。

なんだか詩的ですね。作家っぽい。


これを読んでいる貴方の五年間はどうでしたか? 実はいろいろなことがあったのではないでしょうか。そして貴方自身も少し変わったのではないでしょうか。


嬉しいこと、悲しいこと、ムカつくこと、辛いこと、愛しいこと。

きっとどれも、大切なこと。貴方を、形作るもの。


私は、相変わらずバカです。そしてハードボイルドに憧れています。


だからってわけじゃないけど、今日は昨日より、明日は今日よりカッコよくいたいです。


実際は今でもしょっちゅう二日酔いするし、新作が過去作より売れなかったり、停滞や後退ばっかりですけど。でも気持ち的にはカッコよくなっていきたいのです。


この本もせっかく再刊したので、バカ売れして重版しまくって映像化しねーかなー、とか思ってます。主演はなんかこう、イイ感じに売れてる俳優さんとかで。妹に「本人と全然違うじゃん」とか言われるくらいのイケてるメンの主演とかで。


ベストセラー作家って響きは素敵です。あと重版したら印税でバイク買いたいです。CB1100スーパーブラックバードが欲しいのです。


そしてそれよりも、この物語を多くの人に読んでほしいです。そのためには初動の売り上げなのです。


なので、買ってくれたり、読んで面白かったら友達に勧めてくれたりしたら嬉しいです。あと普通にお手紙やSNSでの感想もお待ちしております。


いやマジでお願い。今どき珍しい私小説な本作なので、ちょっと恥ずかしいではあるのですが、五年前に一度出したし、もう割り切っていくぜと思ってます。


ああ、バカ売れといえば、あとタイトルについても少し書いておきます。

元々は「僕は僕の書いた小説を知らない」というタイトルだった本作ですが、再刊にあたり「余命1日の僕が、君に紡ぐ物語」に変更になりました。


タイトルを変更することで、以前はリーチできなかった読者さんに届くかもしれないですからね。


「タイトルは変えようぜ!」

「わかりました変えましょう」

「どんなタイトルにするつもりだ?」

「え、俺が考えるの?」


という経緯を得て、私はいくつかの案を出しました。うち一つはかなり気に入ってました。

こりゃいいタイトル思いついたぜ! 俺天才じゃねぇの!? と思ったのですが、それはボツを食らいました。


で、ある程度のオーダーを受けて再考したのが今のタイトルです。

わりとそれっぽい感じになったのではないかと思ってますし、本文とのリンクもあるかと。



えーと、大体こんな感じですかね、あとがき。


あー、そういえば、作中の登場人物のうちで一人、言及してない人がいますね。

いや、まあ、うん。なんかそれはここで詳細を書くとあまりにもクールじゃない感じがするので、勘弁してください。でもこのあとがきの中にちょっとヒントがあるかもしれません。


と、まあそんな感じでした。


最後にあらためて宣伝をして終わります。お前宣伝ばっかりかと思われそうだけどその通りです。書いたのは、読んでもらうためだから。


新潮文庫nexより5/29発売、「余命1日の僕が、君に紡ぐ物語」

公式URL:https://www.shinchobunko-nex.jp/books/180264.html



作者が、本当は好みではない流行の売れ線に作風を寄せることを指して「魂を売った」

とか言うことあるじゃないですか、あれ、個人的にはちょっと変だな、って思うんですよ。


作者の経験や思い出、想いがダイレクトに反映された物語を書くことのほうが「魂を売った」

という表現にしっくりくる気がしています。だって、作者のむき出しの魂の欠片が物語となり、それが本として売られて、買ってくれる読者がいるわけなので。


この小説は、まさにそんな物語です。

俺の魂を売るので、買ってください。



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