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日本人にもっとクリティカルシンキングを

友人に誘われて、社会人向けの勉強会に足を運びました。実際に参加してみてすぐに気づいたのは、それは情報弱者の方々をターゲットとしたセミナーでした。テーマに関する具体的な内容は非常に薄く、根拠の曖昧な精神論のような話が続き、私はうんざりしてしまいました。

驚いたのは、多くの参加者が、その怪しげなセミナーの主催者が提供する有料プログラムにその場で入会をされていたことです。セミナー後の懇親会で彼らと話す機会がありましたが、盲目的にセミナーの内容を信じられている印象でした。そこそこの社会経験を重ねられたであろう年齢の方々でしたので、なかなかショッキングな光景でした。

何かの主張に対し、そのまま鵜呑みにせずに、自分で吟味する力はクリティカルシンキングと呼ばれ、訓練によって身に付けられるものです。私は以前、国内の中学校で、そこの先生方と生徒にクリティカルシンキングについて講義をしたことがあります。クリティカルシンキングの意識が芽生えるだけでも全然違いますので、一回の講義だけでも生徒らのその後の様子に随分と変化があったそうです。

米国の学校では「論理は適切か?根拠は何か?」という視点で本や記事を読むことが求められ、物事を批判的に判断しようとする意識がつくようです。しかし日本の学校教育ではこのような訓練は欠けているのが現実です。ソーシャルメディアやAIの発展に伴い、ますます情報を適切に判断する能力が求められる時代において、特に若い世代にはこの能力をもっと学んでもらいたと思いますし、私も自分にできる形で貢献できればと思います。時間があれば考え方を本にでもまとめてみたいものです。

執筆:真鍋希代嗣 (京都大学 特任准教授/東京在住)

※この文章はワシントンDC開発フォーラムに2023年8月に寄稿したエッセイを転記したものです

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