進路選択に迷ったら: 国連に行くか起業か選べと言われて
将来やりたいことがいくつかあり、どれを選ぶか悩んだことがあります。いま振り返ると、もっと柔軟に考えられたのではないかと思います。
同じように進路選択に悩む方のために、キャリアに対する一つの見方を共有できればと思います。
国連に行くか起業か選べと言われて
文系の大学院生として就活に苦労しつつもなんとかコンサルティングファームに入社した4月。人事部との面談でキャリアプランを聞かれました。
改めて将来の目標を問われ、頭に浮かんだことがついそのまま口に出してしまいました。
どちらもコンサルのキャリアと関係ありません。入社1ヶ月目で「会社を辞めます」と言っているようなものでした。
人事のシニアマネージャーは私の言葉を聞いたあと、腕を組んで数秒黙り込み、こう言いました。
会社のことよりも私のキャリアを考えてくれたことは嬉しかったです。しかし、自分の中で曖昧にしていたことをはっきりと指摘されたようで耳が痛くもありました。高校時代にも先生から「早く将来を決めなさい」と言われていたことを思い出しました。
就職したばかりだというのに、私は再び進路について悩み始めました。
冒険小説的キャリア
自分のキャリアをどう育てるかについて、①冒険小説的な考え方と、②短編集的な考え方があると今は考えています。
冒険小説的キャリアとは、人生に一つの大きなゴールを定め、それに向かって進む生き方です。自身のキャリアをしっかり設計しようとする人にはこの考え方が多いです。
私たちは普段から「ゴールから逆算しろ」と言われるので冒険小説的な考え方はしっくりきます。目標に向かって前進していると安心します。
多くの進路指導もこの考え方を前提としているように思います。
短編集的キャリア
冒険小説的キャリアに対し、「20代はこれを、30代はあれを」というように各フェーズでやりたいことやるような設計を短編集的キャリアと呼んでみましょう。人生を一冊の本と見立てたとき、異なる短編小説が複数並ぶような生き方です。
以前、日本の高校生を連れてアメリカを訪れ、ジョンズ・ホプキンス大学の社会人学生らとの座談会を企画しました。参加された社会人の多くがキャリアチェンジを目的に、会社を辞めて大学院に留学されていました。
座談会後、ある女子高生がこう言ったのが印象的でした。
彼女はまだ高校生でしたが、多くの若い方が同じように考えているでしょう。私も冒頭の人事面談のとき、どちらか一つを選ばないといけないと思っていました。
しかし、人生100年時代と言われる現代、実際に同じ仕事を長く続ける人はそう多くないのでないでしょうか。
一つの人生で複数の仕事を楽しむという考えをキャリアの初期から持ってもよいのです。それが短編集的キャリアです。
もし複数のやりたいことがあるとき、数年で考え、順番に全てやると考えるのはいかがでしょうか。
経験のない分野で仕事を見つけるのは容易ではありませんが、だからこそ先を見据えて仕事の幅を増やしたり、スクールに通うなどの準備が必要であり、そのために短編集的なキャリアの捉え方が有効です。
短編集的にキャリアをとらえることの一番のメリットはやりたいことを一つに絞らなくてよいことですが、キャリアを長期的に考えられることも大きなメリットです。
若いときのビジョンは、パイロットになりたい、大企業に入りたい、起業したい、といったキャリアの一点だけを見がちです。
短編集的に考えることで、かえって長期的な視点を持てるようになります。また、一つの人生を何通りにも楽しめる機会があることにも気付けます。
エッセイ的キャリア
冒険小説的と短編集的のキャリアの考え方を説明しましたが、2つともキャリアを自分で設計しようという意思が強い考え方です。
実はほかにもエッセイ的というのもあると考えています。そのときどきの自分の気持ちに従い、好きなように人生をつづる生き方です。
昔、コンサルティングファームの優秀な同僚にキャリアプランを聞いたところ、意外な答えが返ってきました。
彼のように、あえて計画せずに生きるのも素敵な生き方です。
Life is a blank page
さて、本稿では短編集的なキャリアを中心に話しましたが、どれが正しいということはありません。
人生は親が与えてくれた白紙のノートです。あなたが好きなものを自由に書いてください。
各キャリアの考え方を何と名づけるか迷い、noteには書くのが好きな人が多いので小説になぞらえました。他によいネーミングがあれば教えてください(冒険小説にも短編集はある、という細かいツッコミはご容赦を)。
エピローグ
国際機関と起業のどちらを目指すか悩んだあと、私がどのような結論にいたり、その後どのようなキャリアを歩んだかをご紹介します。
新卒入社の研修の間、私は国際機関への就職について調べ、自分が国際機関に行くには相当な時間がかかることがわかりました。語学をマスターし、専門性をつけ、社会人留学も必要でした。
しかし、だからこそ国際機関を目標にすることにしました。起業も簡単ではないですが、資格がいるわけではないので、いざとなればいつでも挑戦できると思いました。経験の幅を増やしてからの方が起業の成功確率が上がるとも考えました。
そしてその8年後、世界銀行という国際機関でお仕事させていただく機会があり、さらにその4年後、起業するに至りました。国際機関と起業の両方に、時間軸をずらして挑戦した形となりました。若いときに散々悩んだからこと出来た決断だったと思っています。
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