見出し画像

【連載】 第4回 こうしてとやま犬はうまれた #2

喜代多旅館の「商品開発プロジェクト」がきっかけで生まれた当館マスコットキャラクター、とやま犬(とやまいぬ)。

そもそも、とやま犬はマスコットキャラクターをつくるという意識で考案されたものではありません。「富山県の形が犬に見える」とひらめいたスタッフの思いつきで、たまたま誕生したキャラクターです。

画像1

生まれて間もない姿(上記画像)は、富山県の形に犬の顔とお尻の穴が書き足された、非常にすっきりとしたキャラクターデザインです。(これはこれでアリだと感じますが、この後、難点がでてきます)

「知名度が上がったら、お尻の穴にあたる市町村から苦情がくるかもしれないから、描かない方がベター・・・?」今振り返ると妄想が先走りすぎてしまっていますが、そんな心配もしていました。

画像2

どうやら、お尻の穴はとやま第2の都市である高岡市にあたるようです。高岡は、高岡銅器や高岡漆器といったものづくりの産業の歴史をもつ工業都市。富山市とはまた街の趣が異なります。

そんなとやま犬を商品化する

こうして生まれてしまったとやま犬は、その誕生から間をおかず、なんらかの形で商品化することが義務付けられていました。商品開発プロジェクト内で生み出されたものである以上、キャラクターだけではなく、とやま犬をあしらったグッズなり、売上が見込める「もの」をつくる必要があったのです。

担当スタッフは当初、とやま犬をTシャツにプリントした「とやま犬Tシャツ」を作ろうと考えていました。しかし「知名度ゼロのキャラTシャツが売れるのか」という懸念から方向転換。結果、とやま犬はラインスタンプとしてグッズ化されることになりました。

なぜラインスタンプなのか

ラインスタンプが選ばれたのは、作成にかかる原価コストを低く抑えられるということが理由です。商品開発の目的として、商品をつくることは勿論ですが、それ以外に、数字に対する肌感覚を身につけるということがありました。

この場合の数字とは、大まかにいえば「売上−コスト=利益として残るお金」ということです。商品が1つ売れた場合、獲得できる利益を算出することができる限界利益という考え方も、プロジェクトチームで学びました。こうした結果として、とやま犬のグッズ化第1弾は、商品開発における投資がミニマルに抑えることができるラインスタンプが選ばれたというわけです。

売れなかった場合でも在庫を抱える心配がなく、発送作業も必要ない。またユーザー視点でも手軽です。どこにいてもインターネットがあればすぐに入手が可能で、その価格もジュース一本程度の価格(最低価格は120円)というメリットがあります。

オリジナルキャラクターのグッズ第1弾として、ラインスタンプはコストパフォーマンスが高い商品化の方法だったのです。


そして、スタッフは金脈ではなく壁に行き当たります

とやま犬を考案したスタッフは「富山県の形をした犬のキャラクター」というアイディアを思いついた時「金脈を掘り当ててしまった」という感触があったそうです。富山県の形をしたちょっと変わったご当地ゆるキャラ、いける、と。

そうして、Tシャツから高コスパのラインスタンプに目標変更したスタッフは、さっそくそれ用のイラスト作成に取り掛かりました。絵心にはそこそこ自信があったようですが、イメージをノートに描き始めて間もなく手が止まりました。富山県の形をしたキャラクターは、スタンダード以外のポーズがとても描きにくかったそうです。

画像3

上記はとやま犬のラインスタンプのラフスケッチの一部です。色々なポーズを重ねるほど、ただの犬になってなってしまっています。「文言を変えて絵柄は似たようなものを使い回せば、なんとか形にはなるだろ」心の中でそんな悪魔の声が何度もしたと、担当スタッフはのちに語っています。

画像4

画像:とやま犬完成一歩手前までのイメージスケッチ。3枚目あたりで少し疲れが感じられます。

これは持論になりますが、クリエイティブや表現というのは、手放さずに考え続けていると、ふと、これだというものに行き着くことが往々にしてあります。(クリエイティブや表現に限らないかもしれません)何かを決めないということは、それを頭のどこかに置いておいて、時折取り出してはあーでもないこうでもないと、考え続けなければいけないので、常にちょっと苦しい状態です。つまり、これだ、というものに行きつくまで手放さずに苦しい状態であっても向き合い続けることが、よりよいクリエイティブや表現を生み出すためのひとつの要素である気がします。

と、こんな感じでとやま犬は今の姿になりました。

STAMP_toyamainu_main_メイン用

結果として、今とやま犬のラインスタンプは、「とやま犬 2020冬コレクション」として、32個セット120円で販売されています。

スクリーンショット 2021-02-06 19.06.57

言い忘れていましたが、「だやい」、「まっとっちゃ」、「はらうい」などの富山弁も、ほどよくちりばめています。県外のお友達にいきなり送りつけたりして、使ってみてくださいね。

******
喜代多旅館 お土産ラインナップ

最後に、前回の記事でも少し触れた、スタッフによる商品をご紹介します。とやま犬ラインスタンプを含めると6個中3個がデジタル、という結果になりました。

◯Cotton Sacoche / MANDE BAYAKU(通称:まんでばやくサコッシュ)
 当館の人気ナンバーワン商品。アジアンテイスト風味の富山弁サコッシュ。大きすぎず、小さすぎずちょうど良いサイズ。

◯もふもふポーチ(しっぽ型チャーム付き)
もふもふ、もふもふ、もふもふ、もふもふもふふももmofuffff、、、現場からは以上です。

◯オリジナルトートバッグ【ドイツ語ver.】
“durch die Blumen sagen”

◯Ryokan: a Japanese style inn (English Edition)(キンドル電子書籍)
出版ってできちゃうもんなんですね。喜代多旅館の外にも飛び出してます。
出版にこぎつけるまでの過程は、こちらの記事でご紹介しています。

◯野菜スタンプで作ったラインスタンプ(ラインスタンプ)
旅館併設のビストロカドゥーで余った野菜の端切れで、スタンプ作ってみました。再利用で違うものに生まれ変わるなんて、まるで喜代多旅館。

※一部商品は、イベント限定品のためこちらに記載していないものもあります。

******

今回はこの辺で。お読みいただきありがとうございました。

→次の記事へ 【連載】第5回 喜代多旅館の虹は なに色?








休んでかれ。