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陸幕が本年度発注したカール・グスタフM3はウクライナ提供すべき。


来年度の政府予算案では防衛予算においてカール・グスタフM4が調達されます。
これは実は概算要求ではM3でした。9月の段階で防衛装備庁にES&D誌のために確認した際も「来年度の調達はM3、合わせてM4の調査費も要求する」というお話でした。もっともぼくはその時点でM4に切り替えるという情報を掴んでいましたが。

M3の問題は浜田大臣にも質問しました。
浜田防衛大臣会見令和5年6月20日(火)における質問
https://note.com/kiyotani/n/n211b57c55403

>Q:カールグスタフのM3の調達に関してなんですけれども、カールグスタフ、2012年から調達始まっているんですけれど、途中で5年間まったく調達0となってまして、本年度の予算で260ぐらいいきなり大人買いされているんですけども、途中0というようなことがあるとなれば、これは本当に必要だったのかという疑問があると思うんですね。防衛省の調達というのは、普通の国だと例えば一定期間にこれだけ買ってこれだけの期間で戦力化する、総額いくらだというのが決まって、国会で初めて認証されて、メーカーなり商社と契約をするというパターンだと思うんです。こういうことがあるとメーカーや商社が安心してお仕事できないんですよ。防衛産業の一つの問題点というのは、そういうきちんと他の国と同じような調達システムがないからではないでしょうか。大臣そういうふうにお考えになりませんか。

>A:色々な御指摘を受けてですね、我々も努力をしながら改善をしてきているところであります。今、御指摘の点については、私も今手元に資料ございませんので、適格な答弁はできませんけれども、しかし、我々とすればそういった御指摘を積み重ねることによって、更により良い調達をですね、考えていきたいというふうにも考えておりますので、今、御指摘いただいた件については、また、我々もしっかりと考えさせていただきたいと思います。

それが政府案ではまさかのM4を19億円で172セット調達。合わせてM4の調査費1.2億円に変わっていました。普通であれば調査費を計上して、調査を行ったうえで、
早くてその翌年度からの調達となります。調査費用と調達費用を同時に要求して同年度でおこなうというのは大変異例です。

これは短期間に装備庁と陸幕で慌ただしい動きがあったということです。界隈ではぼくのせいだという話もあるようですが、実のところは不明です。なにはともあれ、これ以上M3の調達を行うという愚行が重ねなくなったのは幸いでした。

さてそこで、問題となるのは本年度に「大人買い」したM3です。2023年度はM3を325門、35億円で調達しています。サーブ社せ生産ラインを閉めたいというタイミングで旧式化するM3を大人買いですから。

しかも過去5年間も調達を停止しているにもかかわらず、です。
2012年度 3門 0.3億円 
 2013年度17門 2億円   
 2014年度24門 3億円  
 2015年度 6門 0.6億円 
 2016年度 3門 0.3億円  
 2017年度 0門 0円
 2018年度 0門 0円
 2019年度 0門 0円
 2020年度 0門 0円
 2021年度 0門 0円
 2022年度 8門 1.1億円 
 2023年度 325門 35億円  

そもそも2012年度の段階ではサーブがM4の開発を進めていたことは陸幕は知っていわけです。わすか数年待てば新型が導入できるのにM3を調達しました。
そして調達数は毎年少数でその上途中で5年も調達を停止していました。これでM3の調達が完了しないのは明らかです。当事者能力の完全欠如です。

しかも本年度は岸田政権が防衛費を大幅に総額したために、M3を大人買いしたわけです。5年も調達停止し、大量発注するならばM4に切り替えるべきでした。それをやらずにわざわざ大金掛けて旧式化するM3を調達しました。
流石に来年度の予算では陸幕は内局からあれこれ言われたようです。

さて問題は陸幕が35億円で大人買いした325門のM3です。
これをそのまま装備化すれば普通科の弱体化は明らかです。特に水陸機動団や空挺、特殊作戦群の皆さん、M4より3キロ以上重くて、空中炸裂弾の使用もできないM3使いたいですか?

そんなわけで本年度発注したM3をウクライナに譲渡すべきです。以下のパトリオットの譲渡が

日本供与パトリオット、ウクライナに間接支援 米の要請
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA19E6W0Z11C23A2000000/

>政府は米国への輸出を計画する迎撃ミサイル「パトリオット」について米国から欧州など第三国への移転を認める案を検討する。ロシアへの抑止力を高めるため軍事力を強化するポーランドなどが候補に挙がる。米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)加盟国との関係を深める。

>日本から受け取った国が第三国に渡すことも日本の事前承認を条件に認める。戦闘中の国・地域は除くため戦時下のウクライナやイスラエルには直接送れない。
>米国は不足が指摘される自国の在庫を補う目的が大きい。米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・カンシアン上級顧問は10月中旬のリポートでウクライナやイスラエル、台湾がパトリオットを使っていると指摘した。

>第2段階は日本からパトリオットを受け取った米国が別の第三国に渡すことを容認する案だ。NATO側が日本側に要望した。年明け以降に米国などの具体的なニーズを踏まえて移転の可否や決定の時期を判断する。


こういうスキームは可能ではないでしょうか。日本が発注したM3をウクライナが、日本からの援助金でサーブから買い取る。その代わり、ウクライナは日本からの支援金から35億円を返還する。サーブからも支払い済の35億円を返還してもらう。そのカネで、さ来年度により多くのM4を調達する。

こうすればウクライナは事実上ただでM3が手に入り、我が国は旧式化するM3を大量に長期使う必要がなくなります。これまで調達した61門のM3は普通科以外の部署に配備する。そうすれば普通科はM4のみを装備して、教育も兵站も1本化できます。

逆に申せばそれをやらないと、今後30年陸自は旧式化したM3を使い続けることになります。


Japan In Depthに以下の記事を寄稿しました。
他国の10倍の価格の防弾板で調達が進まぬ陸自最新型防弾ベスト
https://japan-indepth.jp/?p=80255


東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
「次期装輪装甲車」選定に見る防衛予算の無駄遣い
国内生産で単価高騰、浪費される防衛費の実態
https://toyokeizai.net/articles/-/722024?page=2


■本日の市ヶ谷の噂■
12月22日、日本テレビ系列「沸騰ワード10」で、カズレーザーが衛生学校(三宿駐屯地)を訪れ、衛生教導隊が保有する野外手術システム等を体験。だが対応した衛生教導隊長だった井上3佐は過去に飲酒運転をし、停職の懲戒処分を受けたにも関わらす、何事もなかったかのようにFOC選抜試験に合格し、しかも3佐に昇任した人物。衛生学校の現総務部長 近野敏之1等陸佐(薬剤官)は、陸幕衛生部勤務を経て、朝霞駐屯地に所在する「東部方面衛生隊長」時に、パワハラで懲戒処分を受けるも、普通に総務部長として勤務、との噂。

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