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「成長に大事なのは遠くの目標よりも現状の適切な認識かもしれない」という仮説(「脳の大統一理論」の読書感想文として)

元は、コテン深井さんのポッドキャスト「a scope」に著者の乾教授が出ていたことをきっかけに興味をもった。

最近、「成長に大事なのは遠くの目標よりも現状の適切な認識かもしれない」という仮説を持って色々みているのだけど、予測と観測の誤差の最小化を脳が行なっている、というこの理論から、もしかして、この仮説を説明できるんじゃないかな、という気がしたので本を読んでみた。

自由エネルギー原理は、元は物理学の理論なので、なんでそれが「脳」と関係あるんだろう?と(この手のものにはたまにとんでも理論が潜んでることがあるので一定警戒しながら)読んだけど、脳の処理を数学的に表現すると、物理で使っている式と同一の形式で表現できる、という意味での「自由エネルギー原理」ということで、けっこう納得感あって、そして内容は面白かった。

理論の裏付けとなる実証がどれくらいなされているのかは、さすがに入門書のこの本には書かれていなかったし、自分で原典に当たるほどの元気(そして文献へのアクセス権)は、ないのだけど・・・

一言でいうと、脳の自由エネルギー原理とは、予測信号と観測信号の差を最小化させることによって認識が成立している。ということで、この理論を使うと知覚だけでなくて運動も説明できる、という点も踏まえて「大統一理論」と呼んでいるようだ。

個人的にはこの理論を「アブダクション」に展開して説明しているところがめちゃくちゃ面白くて、

(自由エネルギー)=(生成モデルの複雑さ)−(生成モデルの正確さ)

という式で表現できる。

エルンスト・マッハの「自然科学の目的は、事実に対するもっとも単純な概念的表現を得ることだ」という言葉が紹介されていて、これを科学哲学的に是非を議論するのじゃなくて、数式で表現するとこうでしょ?と導出しているのがとてもよかった。

冒頭で書いた「成長に大事なのは遠くの目標よりも現状の適切な認識かもしれない」という仮説については、別に本には書いてないが、このアブダクションに関する理論と同様に考えることができるような気がしている。

そこで僕なりに解釈してみると、仮説を立てて、実験してフィードバックを得て次に活かす、というプロセスで課題に対処しているとすると、それは、予測と観測の誤差を最小化するプロセス、と言い換えることもそんなに変じゃない気がしている。

そして、現状の適切な認識は、予測精度の向上をもたらすので、誤差を最小化させるプロセスをうまく回すのに寄与しそう。
(だからといって遠くの目標を立てることの重要性が低い、ということではないのだけど)

それにしてもヘルムホルツの自由エネルギーとか懐かしいわ…転職のときにアトキンスを誰かにあげしまったの、やはりもったいなかったな…

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