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時間が経ってタイムレスな価値を手に入れた

9月21日より新宿末廣亭を皮切りに、三代目柳亭小痴楽師の真打昇進披露の興行が始まっている。噺家が、一人前として認められるお祝いのお祭りである。お祝いのお祭りだから、所属する協会を横断して、いろいろな噺家が登場する。もちろん、門出を祝いにお客も寄席に行くのだ。
ワタシも初日に新宿末廣亭へ。小痴楽さんの出演は夜なので、早めのお昼すぎに行ってみると、もうすでに満席で立ち見。。。夕方になんとか2階席に座れた。
それほど人気のスター性を持っている噺家さんなのだ。
最近は、1人で真打昇進披露興行を行うのはめずらしい。興行は、約40日間続くので、1人では集客が難しいという問題もある。そう考えても、小痴楽さんへの期待値がわかる。

噺家は、前座→二ツ目→真打ちという階級制になっている。小痴楽さんは、16歳で入門し、今年30歳で真打ちになった。父である柳亭痴楽師に入門を申し出た直後に、父が倒れるという出来事があり、それでも紆余曲折ありながらここまで来た。

一人前になるまでに14年が経過している。この14年のドラマを見てきた師匠たちが、昨日のことのように昇進披露口上で、小痴楽さんの人となりを話してくれる。
爆笑と涙が入り混じった、なんとも温かい口上だ。

もう聴いていると関係性は、ほぼ親子だ。
今の世界は、流動性があって、すべてのスピードが早くなっている。競争をしてるので、当然のことである。落語の世界は、十数年かけて、1人の人間を丁寧に育て、育っていく社会だ。口上の風景は、彼らがそんな世界に誇りを持っているように感じる。

その月日と、落語という共通言語が家族にするんだと思う。もちろん噺家たちもある種の競争だ。ただ、勝ち負けを一度や二度の勝敗では決めない、個性を排除しない社会。インクルージョンな側面があるんじゃないかと思う。
だから、応援したくなるし、愛したくなる。

落語という社会は、短時間で消費されることを拒絶したから、古臭くなったかもしれない。でも、強さがあって、時間が経ったからのタイムレスな価値が、存在しているのも事実だ。

その象徴のような、真打昇進披露興行からビンビン感じる。

初日の演目は、「大工調べ」。柳亭小痴楽師匠の淀みない江戸弁には、涙を堪えて思いっきり拍手した。この歴史的瞬間に、立ち会えたことをワタシは誇りに思う。

11月20日が、東京で最後の真打昇進披露興行だ。

コチラの方がステキに綴ってるので、併せて見てほしいです。



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