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あたらしい可能性を共をつくる「対話」③三つのお稽古

前回は、どんな時に対話を使えばいいかをお話しました。

今回は、対話とは実際に何をすることなのかについて説明します。それが「対話の原理」です。

対話の原理

世界の各地で、組織や社会において意味のある変革を起こすために「対話」を実践してきた人たちがいます。

そのような成功事例たくさん観察してみたところ、それらにはパターンがあることがわかりました。くりかえし現れている共通項です。その話し合いのコツは「対話の原理」と言われています。

3つのお稽古

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3つはそれぞれ、口を使う、耳を使う、目を使うというイメージで捉えると理解しやすいでしょう。詳しく一緒にみていきます。

1 意図を持って話す👄

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意図というのは、あなたの願いやねらいのことです。

大切だなぁと思っていること。逆に言うと、「いつでも、どこでも、誰でも話せるようなこと」ではありません。「今だから、ここだから、あなただから」話してみようかなと思うことを、お話ししてみませんか。

具体的には2つあります。

①経験に基づいて:私たちは普段からSNSやニュース、本で多くの情報に触れています。それも尊いことですが、「調べれば誰でも言えること」です。限られたこの時間では、ぜひどこかの誰かが言ったかっこいいことではなくて、あなたの声や経験談、気持ちを聞かせてください。あなたがいつ何を見て、聞いて、触れたか。それは世界で、あなたしか知らないことです。それを持ち寄ってみませんか。
また、ここではなにかを「自分ごとにする」必要はありません。「自分のこと」を話してください。「自分ごとにする」と言われるとプレッシャーを感じて、「なにを話すべきか」ばかり気をとられてしまう人は私だけではないはずです。ぜひ、今のあなたの内側から湧き出る「話したいこと」をシェアしてください。
②目的に向かって:この場は、それぞれがお忙しい中でわざわざ来ていただき、限られた時間で集まっています。だからこそ、今日は、この場のねらい、あるいは、あなた自身のねらいに向かって、想いを放ってみませんか。言い換えれば、目的に役立つと思えば、普段はちょっと言いづらいことも言ってみてください。「実は…」そんな話し方をしてもいいかもしれません。

2 学ぶために聴く👂

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経験があるからこそ、私たちが陥ってしまいがちなこともあります。話し合いをしていて、こんな風に思うことがありませんか。「この人の言ってること違うなぁ」「どうせうまくいかないと思う」。そして、聞く耳を閉じてしまう。そうすると、それ以上、私たちは学ぶことができません。経験は土台にもなることもあれば、足枷にもなることもありますね。

あるいは、相手の話を聞きながら、あなたが心の中では「私のほうが正しい」と思っているとき。反論、助言、説得したい。私たちは、そんな想いで、自分の頭がいっぱいになっていることがあります。それは、自分がすでに知っていることを、自分に再放送しているだけです。人の話を聞いているとは言えません。

そういったことを「判断をする」と言います。英語でいうと、ジャッジメント。「裁きを下す」「決めつける」といってもいいのかもしれません。

その代わりにやってみたいのが、以下の二つです。

①判断を保留する:そのような反応が自分の中であった時は、ゆっくりと呼吸をして、決めつけを横に置きます。これを「判断を保留する」と言います。それは思考停止や優柔不断とは異なります。それは、より深く考えるため、よりよい選択肢を探るために、一旦、自分の正しさ/思い込みを横に置いてみるという勇気ある態度のことです。
②好奇心をもつ:好奇心をもつと、私たちの耳は自然に開いていきます。「この人は何を伝えたいんだろう。何かこの人から学べることがないかなあ。何か盗めることがないかなあ。」。もし私たちは言葉尻ではなく、その奥にある人間そのものに耳をすませたら、さて、そこから何が聞こえてくるでしょうか。普段は聞こえなかったことが、聞こえてくるかもしれません。そんなことにワクワクしながら聞いてみませんか。

3 自分の影響に気づく👀

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①全ての声のためにスペース(器)をつくる:普段は聞かれづらいことも含めて、ひとりひとりの声が、より聞こえやすくなるような空間をつくりませんか。そのために、自分の影響に気づいてみましょう。それは「自分を見る自分」の目線をつけてみることです。鳥や雲になったつもりで、頭の上にカメラをつけてみてください。そこから見た、あなたの言葉、声色、佇まいは、その場にどのような力を与えているでしょうか。どんな波紋がそこに広がっているでしょうか。
そうすると、話し合いをしているときに、こんなことに気づくかもしれません。「私はいつもおしゃべり好きだな」「あ、もしかしたら今私は話しすぎているかも」。そんな時は、好奇心を持って聞いてください。・・・逆に「私いつも聞いてばかりだなぁ」。その時は、意図を持って"えいっ"と話してみてください。
②パワーの違いに気づく:私たちは意識をしないと、私たちの関係にある「器」を埋め尽くしてしまうことがあります。特に、大きな声、つまり、わかりやすいこと、都合のいいことによってです。でも、ほんとうは、私たちの社会、組織、あるいは個人の中には、大きなものから小さなもの、わかりやすいことからわかりづらいこと、都合のいいことから都合の悪いことまで、実は様々な声があります。
つまり、私たちの声には、パワーの強いことから、弱いことまで存在しているということです。わざわざ言われると、あたり前に聞こえます。でも、まずは、それぞれの声のパワーの違いに気づくことからはじめましょう。あなたの声は、政治的、経済的に特権を持っていて、大きいかもしれません。あるいは、聞こえづらいところに立っていて、小さくなっているかもしれません。そのひとつひとつを共に大切にするチャレンジをしませんか。

私はしばしば、このように補足します。

あなたは、影響力のある存在です。時に、私たちは自分の声があまりに無力であるように思うことがあります。それによって自信を失い、自分の力に疑問を持ってしまうことがあります。しかし、もしそれが僅かであったとして、ないわけではありません。微力であろうと、無力ではありません。「大河の一滴」といいますが、一滴なしに大河もありません。あなたはここにいる適任者として、堂々とこの場に共にいてください。

以上が「対話の原理」でした。これらの伝え方や時間の長さは、その時々の状況や相手の様子を見て変えていきます。今回は少ししっかりと書いてみました。

この対話の原理は、決して新しいものではありません。人々が重ねてきた、「みんなにとって意味がある、新しいものをつくる/変化を起こす話し合いのパターン」です。きっとあなたも見たこと、どれかを経験したことがあるはずです。

あなたたは、どの実践が得意ですか。どの実践が苦手に感じますか。そう思ったきっかけはなんだったでしょうか。
対話の原理のどれがを上手にやっている人を見たことがありますか。その人はどのような状況で、なにをしていたでしょうか。そこからあなたが学べる/盗める実践は、なんでしょうか。

ぜひあなたの経験を聞かせてください。

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