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ふりかえりミーティングのコツ/忘れてはいけない問い

最高の試合や、ゲストにすごく喜んでいただいたイベント。でも、そのあとのチームミーティングの雰囲気が悪い…その結果、次の試合に残念な影響が出てしまった。そんな経験はありませんか?

もしかしたら、そこでは「誰かがこうすべきだった」「悪いこと」や「できないこと」「足りないこと」に終始してしまっていませんか。

単発のイベントならまだしも、対話と協働という、中長期にわたるチームスポーツにおいては、「ふりかえり」がチームプレーの質を左右します。その一方で、そのやり方や、そもそもその時間自体が見逃されていることもしばしばあるようです。

そこで、今日は、「本番が終わった後の、ふりかえりの仕方」についてお話したいと思います。

■こんな方のために書いています

・複数回イベントをするチームのモチベーションを上げたい
・イベントをこなすだけではなく、メンバーの仲間感を高め、チームワークの成長の機会にしたい

この記事の効能

具体的な問いと、その聞き方/話し方のコツを載せてあります。すぐに明日のワークショップでやってみれる方法を知ることができます。

それでは参りましょう。

ついやってしまう「ふりかえり」軽視

私たちは、目下の課題の解決に追われたり、つい焦って時間を気にしたりしている時に、つい業務的・機械的なふりかえりをしてしまいがちではないでしょうか。

それを繰り返してしまうと、チームメンバーは、「勝つための道具」としてお互いを見てしまいます。ワークショップでもスタッフは「現場運営の道具」に、参加者は「アイデアを出すための道具」として扱われているように感じてしまいがちです。

特に、参加型のワークショップで、「自分が利用されている感じ」が漂ってしまうと、それは関係の質にダメージを与えます。たとえば、ゲストとの関係は消耗して、次につながりづらくなります。もしボランティアでチームに参加してくださっている人がいたら、次回来なくなってしまうこもあるでしょう。最後はコアチームの関係もギスギスしてしまうなんてことも。(いやあどれも古傷が痛みます…)

ふりかえりがモチベーションや取組の持続性に影響する

まずは、テクニック論ではなく、ものの見方からはじめたいと思います。

そもそもですが、私たちは機械や道具ではありません。人間です。生き物です。感情があり、社会的な動物です。それゆえ、「自分が大切にされている感覚」や「自分が他者に影響力をもっている(自己効力感)」あってこそ、ポテンシャルを発揮します。そして、「学び、成長するよろこび」があってこそ、次へと踏み出す勇気が湧くものではないでしょうか。

私たち人間は、指示や命令されたことではなく「その時に、自分にとって意味があること」にしか本質的に自発的にはなれません。「ふりかえり」とは、「体験の意味づけ(sense making)です。

むしろ、人は指示や命令をされると、無意識に反抗したくなる「心理的リアクタンス」が発動することがあります。それゆえ、ふりかえりの時に、「悪い点を指摘する」「一方的に要望や非難をする」「着地点をコントロールしようとする」は、チームのモチベーションにとって、危険な行為です。

また、私たちは、いつも「今・ここ」にしかいられません。もちろん、反省や改善、リスク回避も必要です。いわゆるや「まじめなひと」ほど、過去の後悔や、未来への不安に囚われがちですが、それだけではいくら頑張っても私たちはいいチームになれません。なぜなら、それれはふるまいは、いずれも恐れを動機にして行動をするように仕向けてしまうからです。チームが恐れに飲まれた時、すべての可能性が萎縮してしまいます。

したがって、どのように振り返るかについては、おそらく多くの人が思っている以上に、複雑な配慮を要することです。繰り返しになりますが、中長期にわたるチームプレーが必要なときは、特に重要です。

ふりかえりの問い

プロジェクトのふりかえりの時には、以下がミニマムな振り返りだと思います。

1 ごきげん(終わった今時点での感情)
2 やってみて、機能したこと
3 今度は別のやり方でやってみたいこと 

これらは基本的なアジャイル開発のための問いです。フィードバックをもとに、素早いアウトプットと補正を繰り返して、よりよい行き先を紡いでいくための重要なヒントになるからです。

これに加えて、私が大切にしているのは、それぞれの健闘を讃え合う時間です。学びや成長、収穫物のゆたかさ、喜びを分かち合う「祝福」のプロセス。

特に、参加型のワークショップのように、そもそもアウトカムをコントロールできない取組の場合は特に、「先が見えない恐れ」に足を取られず、集合的な希望や可能性を動機になるような問いかけが必要です。「集合的な」というのは、「一人では持ちづらいが、みんなで支えることで実感できる」という意味です。

コンサルタントではなく、多様な声が参加するワークショップを実施する私たちが求めるのは、「落としどころ」ではなく、「突き抜けどころ」なはずです。希望や可能性は、これまでにない発想や勇気あるチームワークをリードしてくれます。

それを得るためには、たとえば、こんなこと聞きあうことが助けになるかもしれません。

4 自分なりに、自分を褒めてあげるとしたら、どんな言葉になりますか。
5 あなたにとっての「今日のMVP」はだあれ。その人は何をしていましたか。(ゲーム全体を進める上で活躍した人)
6 今日、あなたが感謝をしたい相手は誰ですか。その人は何をしていましたか。(あなたが個人的に助けられた人)
7 今日、チームワークがうまく機能したときはいつでしたか。

これらは、「時間があったら話すこと」ではなくて、「コアなアジェンダ」だと思います。チームの仕事が片付いたら「やったー!」と皆で喜び合うことは、結果的に、自発的で、クリエイティブで、スピード感のあるチームを育てることになる、と私は経験的に思っています。特に、チームが未成熟だったり、忙しいときほどに大切にしています。

この「祝福のプロセス」の見逃しは、ここ最近で何度か目撃しているので、たぶん起きているパターンなのだとおもいます。

ふりかえりを聞く/話す時のコツ(4つ)

ちなみに、問いに答える時のコツがあります。4つのやり方をご紹介したいと思います。

①具体的なエピソードを分かち合う

それは、あなたが、いつ誰がどんな活躍をしている様子を見届けたか/どのような出来事たあったかについて、具体的なエピソードについて話すことです。

たとえば、「今日目撃した、チームの新たな可能性は何でしたか」に対して、「このチームなら予想外のことに即興対応ができそうです」と答えるだけではなく、なぜそういう風に思うに至ったのか、その根拠となる、あなたが目の当たりにした具体的な経験/出来事を述べるように心がけます。

このチームなら予想外のことに即興対応ができそうです。なぜなら、ワークショップの始まりの時に、・・・の予定であったが、・・・が起きた。その時、・・さんが、こうしようとしたが、・・・さんがし、・・・をじした。その結果・・・が起きる様子を見ました。それゆえに、私は、このチームなら予想外のことに即興対応ができそうだ思いました。

逆に、このように目撃した事実に基づかないふりかえりは、「べき論」や推論など、思い込みに基づいて、地に足のつかない抽象的な話に終始してしまう傾向があります。「あの人はこうするべきだった」「きっとこうできるはずだ」。それらを話すことが悪いわけではありませんが、まずは具体的なエピソードについて話すことから始めましょう。

②what/so what/now what

さらに、「次のアクションにつながる」ことを意識したいときは、次のように3点を意識することも有効です。

・何を見たのか?(what)
・だから、どう解釈したのか?(so what)
・それで、次にどうしたいのか?(now what)

1 what(何を見たのか?):ワークショップの始まりの時に、・・・の予定であったが、・・・が起きた。その時、・・さんが、こうしようとしたが、・・・さんがし、・・・をじした。その結果・・・が起きる様子を見ました。

2 だから、どう解釈したのか?(so what):このチームなら予想外のことに即興対応ができそうだと私は思いました。

3 それで、次に「あなたは」どうするか?(now what):これまで、私は展開が計画から外れた時に、つい焦って急に元に戻すことを急いでしまいがちでした。今後は、その時をチャンスがと思って、少し即興的にやりとりをしあう時間を作ることで、新しい気づきが生まれる時間としたいと思いました。

このように「それで、次にどうしたいのか?(now what)」まで話すと、メンバーの行動変容までつながりやすくなります。人から「次はこうしたほうがいいよ」と言われるよりも、自分で言うからこそ、行動が変わりやすいものです。

ハマってしまっている「あるある」を見つける

さらに、ワークショップの2回目、3回目と進んできた時に、聞けることもあります。それは、その当日の印象的なことだけではなく、これまでを振り返って、チームとして繰り返してしまっている「もうやめたいパターン」を見つけることができるようになります。

例えば、こんなことがありませんか。「この前も、今回もワークショップの時間が延びてしまいましたね?」。「これまでずっと、業務的・機械的なふりかえりをしてギスギスしましたよね私たち」。

「もうやめませんか、コレ」ということを目撃している時には、それ自体を議論のテーブルの上に上げることで状況が変わるかもしれません。

私たちがハマってしまっている「あるある」は何ですか?
それを止めるために、どのようなことを「あなた」はしますか。

チームとして繰り返してしまっている残念なことを、個人のせいにするのは危険です。特に、時間の管理についてはファシリテーターに非難が集まることが多いと感じます。もちろん、それは一面的にはあるのですが、あくまで対話と協働はチームスポーツです。一見、「人のせい」に見えても、よく考えれば、そこには必ず「あなた」ができることがそこにはあります。

たとえば、「集合写真の時に、どうしてもみんながモジモジして時間が取られる」と言うパターンをやめたい時にどうしたらいいでしょうか。もちろん、ファシリテーターがもっと指示を明確にしたり、声を大きくしたりすることもできるでしょう。

しかし、それ以外にも、たとえばメンバーが先陣を切って、積極的に撮影ブースへと並ぶこともできるはずです。もしチームとして何か望まないことが起きた時に、個人のせいにせずに「チームメンバーでそれを起こしづらくすることは何か?」を考えてみませんか。

④肯定的逸脱(うれしい例外)

取り組みが長期化した時に、マンネリ感が起きそうであったり、そろそろ変化をつけたいなと思ってきたりした時に、問いかけたいことがあります。

厳密には、それはふりかえりの問いではなく、ワークショップが始まる前に、事前に問いかけておくことが役に立つものです。

いつもは起きてないけれども、今日見つけた素敵な出来事はなんでしたか?

そんなことを問うとこんなことが見つかるかもしれません。「いつもあの人たちはタテマエや他責的な批判ばかりだったのに、なんだかあの人たち今日はたくさん本音を建設的に話してたよね?」

これまでは起きていなかったけれども、なぜだか今回はそのことが起きた。そして、それはうれしいことだ。そのようなことを、肯定的逸脱(うれしい例外)と言うことがあります。

事前に、というのは、肯定的逸脱は、あとになって聞くのは難しい問いだからです。私たちは見慣れない景色の中は注意深く気づくことができます。しかし、見慣れた景色の中にある小さな変化を見逃しがちです。それゆえ、あらかじめそれに注意を向けておくことが役立ちます。

あらかじめそれを問いかけておいて、ワークショップ終了後に、それを見つけた人がいたら、その行為を特定して光を当てる/祝福することができます。

その祝福の仕方は、ふりかえりの問いで先ほど紹介した通りです。

4 自分なりに、自分を褒めてあげるとしたら、どんな言葉になりますか。
5 あなたにとっての「今日のMVP」はだあれ。その人は何をしていましたか。(ゲーム全体を進める上で活躍した人)
6 今日、あなたが感謝をしたい相手は誰ですか。その人は何をしていましたか。(あなたが個人的に助けられた人)

これによって、偶然起きたうれしい例外を、パターンとして、つまり、習慣として定着させることがしやすくなります。

まとめ

以上、今回は、陥ってしまいがちな残念なふりかえり"あるある"、そこに陥らないための具体的な問いと、その聞き方/話し方のコツについての紹介でした。

ふりかえりは、中長期にわたるチームプレーが必要なときにこそ重要です。ふりかえりがモチベーションに影響するからです。そして、ふりかえりこそが、人が学び成長する時間でもあります。その時間を充実させて、持続しやすくクリエイティブなチームになっていきましょう。

もちろん、以上は私の経験からの例です。最近、あなたの現場ではいかがでしょうか。最近どのようなふりかえりミーティングをしましたか。その時に、やってみて、機能したことはなんでしたか。今度は別のやり方でやってみたいことはなんでしょうか。


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