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介護保険の目的(自立支援)と評価(報酬)のジレンマ

介護保険法の条文の中には、介護保険の目的として「可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう配慮する」と記載されている。

言い換えると、

家で介護保険に頼らず生活できるようになることを目的としている。

と言える。

介護保険サービスの目的は、利用者が介護保険サービスを必要としなくなること、というわけである。

ある意味では、もっともな話である。保険給付のための財源も、サービス提供をする人材も有限であり、あくまでも保険であるため、使わなくていいに越したことはない。

国民もサービス提供事業者も行政も、介護保険に頼らずに生活できるようになるために努力する義務があるというわけである。

それであれば、本来はサービス提供事業者は、利用者がサービスに頼らなくなればなるほど、評価を受けるべき(報酬を得られるべき)である。

しかしながら、実態は真逆であり、利用者がサービスを利用すればするほど、サービス提供事業者が報酬を得られる仕組みになっている。

介護保険法に記載されている目的や義務との矛盾が生じているとも考えられる。

そこで登場したのが月額定額制のサブスク型サービス(定期巡回・随時対応サービス)である。

このサービスにおいては、まさに、利用者がサービスに頼らなければ頼らないほど、評価される(利益が増える)仕組みとなっている。

以下が、介護保険法の第一条から第五条までの、介護保険の目的と義務についての条文である。


目的
第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。



(介護保険)
第二条 介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)に関し、必要な保険給付を行うものとする。

2 前項の保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。

3 第一項の保険給付は、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。

4 第一項の保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。

(保険者)
第三条 市町村及び特別区は、この法律の定めるところにより、介護保険を行うものとする。

2 市町村及び特別区は、介護保険に関する収入及び支出について、政令で定めるところにより、特別会計を設けなければならない。


国民の努力及び義務
第四条 国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。

2 国民は、共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担するものとする。

国及び地方公共団体の責務
第五条 国は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるよう保健医療サービス及び福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない。

2 都道府県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、必要な助言及び適切な援助をしなければならない。

3 国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、保険給付に係る保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策並びに地域における自立した日常生活の支援のための施策を、医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進するよう努めなければならない

4 国及び地方公共団体は、前項の規定により同項に掲げる施策を包括的に推進するに当たっては、障害者その他の者の福祉に関する施策との有機的な連携を図るよう努めなければならない。

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