【企画参加:第二回「絵から小説」】Chisaki ーチサキー
「これは…」
ピンク色の小山のてっぺんに立った俺は言葉を失った。
目線の高さにはぐるりと連なる北アルプスの峰々。
眼下には松本平、そして桜、桜、桜。
歌舞伎「楼門五三桐」の石川五右衛門の名台詞が頭に浮かぶ。
絶景かな 絶景かな
春の眺めは価千金とは小せえ 小せえ
この五右衛門が眼から見れば価万両 万々両
その価万両の美しさに心が緩んだのか、固く閉じていた俺の記憶の蓋がカチリと開いてしまった。
(子供の頃のチサちゃんも、この景色を見たんだな。)
幼い頃、ほんの3年ほどを共に