アルコール依存症は自分だけの問題ではない~子供のアダルトチルドレン化と家庭の機能不全化

重度アルコール依存症でアルコールチルドレンでもある kiyopi です。

アルコール依存症になる人にはお子さんがいる人も もちろん多いです。
成人している子もいれば、思春期の子、小さい子もいれば親がアルコール依存症である事を認識できないほど幼い子を抱えた人もいます。

成人して自分の家庭を持ってから親がアルコール依存症になったのであれば、アダルトチルドレン化する事はほぼないように見受けられますが、基本的にはアダルトチルドレン化します。

子供の年齢や、結婚の有・無やお子さんがいる・いないに関わらず、家庭はほぼ確実に機能不全化していきます。

僕自身、物心がついた時には父親がアルコール依存になっていて、母親は姉と妹には「いずれ嫁にやる子だから」とネグレクト、僕には「長男だから、男だから」と過干渉で「自由にすることは絶対に許さない」と毒親化している機能不全家庭でした。

アルコール依存症というのは、人の親であるにもかかわらず なってしまったら機能不全家庭も子供のアダルトチルドレン化も必ずセットになって付いてきます。
自分一人の問題でもなければ、『断酒すればいい」という簡単な問題でもないです。
でも、既存の医療や自助グループにおいても、お酒を飲む事を辞める事にばかり問題を向けていて、子供のアダルトチルドレン化の問題には問題視もしていなければ触れもしないという場合がほとんどであるように感じます。

子供は、夫婦の様に別れれば済む、他人の様に関わらなければ済む、という訳にはいきません。

今回は『アルコール依存症者と子供のアダルトチルドレン化、家庭の機能不全化』についてです。




子供をアダルトチルドレン化する行為

子供をアダルトチルドレン化させてしまうのは、はっきり言えば依存です。
依存症者との共依存然り、子供への依存も然りです。
そのような機能不全状態の中で、子供は自分の本心を押し殺すことの連続によって認知の歪みが起こりアダルトチルドレン化します。
分かりやすく言えば、子供が親子の関係を感じられず、自分らしく生活できない家庭環境によってアダルトチルドレン化します。
更に分かりやすく言えば、子供が安心感を感じられない家庭環境であることです。

よくある事には、以下のようなことがあります。



①親が子供を自分の味方に付けようとする

これは僕が最低最悪で最も嫌だった事です。
残念ながらアラフィフになった今でも毎日続いています。
アダルトチルドレンとして最も気付きにくい親の毒でもあります。
最も気付きにくい鬱病を始めとした精神疾患の原因でもあり、子供の認知を悪い方へ頻繁に書き換える極悪行為です。

アルコール依存症者である親も、そうでない方の親も、よく子供を自分の味方に付けようと自分の正当性や正義感を子供に話して味方に付けようとします。
味方にならないと、とにかく『相手がどれだけ悪者であるか』を手を変え品を変えて説得しようとします。

よくあるのは、依存症でない方の親が子供を味方につける事に躍起になる行為です。

これは夫婦仲の悪い家庭であればよくある事ではあります。
しかし、『相手をどう捉え、何を思い、どう感じるのか?』はその人自身の問題です。
それを子供に押し付けるというのはコントロールであり、躍起になるのは洗脳行為です。
子供は子供で、理解できないながらも自分で現実を受け止めて判断しています。
自分の思いも考えも持っています。
それを歪めてしまうのがこの行為
です。

これは、子供に精神的に依存している事から起こります

夫婦どちらがアルコール依存症者であろうと、絶対にしてはいけません。
子供を味方につける前に、味方がいないと相手と向き合えない弱い自分やご自身の子供への精神的依存を見つめて頂きたい
と思います。


②「この事は話すな!」世間には絶対秘密にする、恥の概念が強い

これは、アルコール依存症に限らず精神疾患や犯罪歴のある人を抱える家族にはよくあります。

上述したように、子供は子供なりに現実を捉え、思い、感じ、考えています。
恥の概念の強さも秘密にしたいのも、その人自身の価値観です。
それを子供に強要するのはコントロールです。
それにより、子供は悩んだり苦しんでることがあっても誰かに話したり相談できない人間になっていきます。
それにより、悩みや苦しみを吐き出すことを知らない・出来ない事で、どんどん溜め込むようになります。
それが将来、子供の精神疾患の素になります

どんなに秘密厳守でいようが、気付く人は気付きます。
そんな人は必ずいます
勘付く人は勘付きます。
そんな人も必ずいます
良い人の顔して噂を集めて吹聴して回る情報屋的な人も、どこに行っても必ずいます。
秘密にしようとすればするほど、人の視線や態度、表情、噂話に敏感になり神経すり減ります。
そのため、秘密にしているのに知ってる人が出てきた時、疑う人が出てきた時、自分以外の家族を疑ったり、怒り、憎んだりするようにもなります

私事ですが、僕は今でも父の事においては疑いから起こる怒りと憎しみの犠牲者です。
もちろん、自分が依存症になるまでは誰かに話したことは一度もありません。
それだけ僕にとって親というのは『いつ殺してくるか分からない』恐怖の対象でしたから。
父の依存症を知っている人・疑う人が出た時には、母からの虐待の対象でした。
母の恥の意識から起こる不安と怒り、それが治まるまで、往復ビンタ、物差しや角棒、傘、竹刀での殴打は何時間でも続きました。
祖母(父は婿養子で祖母は母の実母)が気付いて、怒り狂って止めに来るまで、祖母が普段は立ち入りできない子供の寝室の奥の父母の寝室(当時の家は子供の寝室を通らないとその部屋には入れない構造で、どんなに叫んでも深夜でもないと聞こえず、気付かれにくい構造でした)で。

実際、「お前が言ったんだろ!」と僕のような経験をしたアダルトチルドレンは沢山います。
僕も自分で気付くまでそうでしたが、人に悩みや苦しみを話せない・相談できない、精神疾患なんて心の弱い人間、恥ずかしい・・・というアダルトチルドレンも沢山います。

ちょっとした価値観の押し付け・強制、でも子供への悪影響は甚大だと知ってください。


③子供を愚痴・不平・不満・文句の聞き役にさせる

たまには子供がまだ幼くても愚痴を吐く。
それはどの家庭でもある事です。

ですが、アルコール依存症者に限らず精神疾患者を持つ家庭では、家族も心が病んでいく場合が多くネガティブ傾向にあり、子供に不平・不満・愚痴・文句を聞かせるのが日常茶飯事になってしまうケースが多いです。
問題なのは日常茶飯事になってしまっている事です。

子供も、自分事であればまだいいんです。
ですが、親が世間一般で溜め込んできたストレスや夫婦間でのストレスを子供に延々と聞かせる機能不全のパターンがあります。
①とも共通する行為ではありますが、この行為は親の『自分は正しい、間違っていない』という自己正当化と、『そんな自分を認めてくれ』という承認欲求の表れでもあります。

人は、不平・不満・愚痴・文句ばかり言っている人の傍にいると精神的に病むと言われています。
それを子供にしていたら、その子はどうなっていくでしょうか?
親にとっては何気ない事でしかありませんが、子供にとってはとんでもない精神的負担になります。
ですがアダルトチルドレン化してしまうと、このような人がいてもまともに聞いてしまったり、力になり過ぎたりしてしまい、結果ストレスのはけ口にされてしまったり、うまく利用できる人扱いされてしまったり、良い人間関係が構築できなくなって苦しむようになります
このような環境で成長していくと、子供の精神は本人も自覚できない程度で病んでいきます。
アダルトチルドレンでなくても、鬱になった時「何で鬱になったのか分からない」「特に精神的負担になるような生活をしていたという事はない」という人は、大抵この環境が身近であったのが原因です。

人の不平・不満・愚痴・文句を聞いて、「そうだよ、そうだよ」「ホントそう」「その通りだよね」等、賛同されると誰でも嬉しいものですが、そういった肯定の返答をする人というのは自分も同じ・同じ様な思いをしている自分を肯定しているだけで、あなたを肯定しているわけではありません。
その人自身の思い・感情を肯定しているだけです。
その様な人の賛同に気分良くしてしまうと、自分が間違っていても気付けなくなりますし、間違っていても受け入れられなくなったり認められなくなります。
中には、面倒であったり早く終わらせたい等から適当に合わせた相槌を打つ人もいます。

基本、子供は幼い頃はよく分からないので親の言ってる事を鵜呑みにします。
ある程度考えることが出来る年頃(小学校高学年くらいから)は聞くのが嫌になってくるので適当な賛同に変わります。
事実がどうであるかも分からないのに大人になっても親の不平・不満・愚痴・文句を何でも肯定する子供は他責傾向の強いアダルトチルドレンです。
自分肯定のために賛同してくる子供もアダルトチルドレンです。
このタイプのアダルトチルドレンは他責思考が強く愛情欲求も強いため、自分に意識を向けさせたい・興味を持たせたい・頼らせたい・認められたい・受け入れられたい欲求が強く、世間での人間関係に苦しみます。

僕の場合、両親共にいまだにこの精神段階にいます。
一度始まれば、逃げると怒られ、悪者、人でなし、ひねくれ者、卑怯者扱いです。
「夫婦の間の文句は直接本人に言え、僕に言うな、間に挟むな」「他人の不満が僕と何の関係がある?直接本人に言え」
こんなことを言えるようになったのは、セルフカウンセリングとセルフ自己認知セラピーが済んでからの事です。
「いいから聞きなさい!」「あんたにも関係あることだから!」これは幼少期から、僕が聞きたくなくて逃げる時に親が言う言葉です。
親の不平・不満・愚痴・文句の中の人は、話したことがある人もいれば、知っているだけの人、見た事はある人、親の話に出てきたのを聞いたことあるだけの人、「誰それ?」の人まで、それでも親には『僕にも関係ある事』になります。
僕を悪者にするのも怒るのも、ただ『私は正しい、間違ってないと認めて!』それだけなのです。

子供に不平・不満・愚痴・文句ばかり聞かせる親は、子供の不平・不満・愚痴・文句をまともに聞いてあげられない親が多いです。
自分で自分の感情や思いをうまく消化できないために、子供に聞いてもらいたい・認めてもらいたい思いが優先し過ぎて、子供の事は聞けなくなっている、精神的に子供以上に自分の方が子供になっている、まずはその自覚が必要です。
その上で、何で言わずにいられないのか?聞いてもらいたいのか?聞かせたいのか?この内容を読んで自己分析してみてほしいと思います。


④悩んでばかり、苦しんでばかりいる、いつまでも前進しない、そんな親の姿が身近にある

いつまでも断酒出来ずにスリップする度に絶望したりクヨクヨしたり、鬱状態でネガティブ吐きまくって悩んで苦しんで辛がってばかりいたり・・・。

そんな親の日常の姿が子供の身近にあり続けたら、子供は自分の親をどう思うでしょうか?どう見るでしょうか?

立派に見えると思いますか?
頼りになるように見えると思いますか?
安心できると思いますか?

たとえ見せないようにしていたとしても子供は感じ取っています。
『自分の親は他の子の親と違う』と気付いています。

そんな親を見続け、感じ続ける事で親子間の絆が強まる場合もあります。
一見、愛情深い親子に見えますが、子供は精神的に成熟しなければならなかった部分があるから そうならざるを得なかったアダルトチルドレンです。
『可哀そうな親』
そんな憐れみを親に対して抱えているアダルトチルドレンもいます。
自分が支えてほしい支えも得られないままに「自分が親を支えないと」と必死に生きているアダルトチルドレンもいます。

現在の精神医療は、とにかく薬で症状を抑える対症療法であって、治す医療・回復のための医療ではありません。
「治る人もいる、回復する人もいる、良くなる人もいる」これは医者の方便であって、どの精神疾患も治療法は確立しておらず、治る治療法・回復法というのは現存していません。
薬がなくてはいられない処方薬依存や、薬に頼り過ぎた副作用で苦しむ人も多いですし、生きてるだけで精一杯な脳機能状態や身体状態、精神状態になってしまって苦しむ人も多いです。
精神疾患に関しては、医療も薬もある意味もろ刃の剣です。
症状を抑える代わりに自律神経が破壊されて正常に働かなくなり、廃人になる恐れもあるもろ刃の剣なのです。
それでも精神医療も精神薬も信用し過ぎているのは異常だと思います。

にもかかわらず、『医者』という職業・権威を信用し、薬は抑えるだけのものであるのに治すものだと錯覚し、アルコール依存症から回復する唯一の方法は『断酒』だと思い込んでいる。

精神疾患や依存症から本当に回復した人は必ず「医療でも薬でもなく、根本治療が大切だった」と言います。
しかし、現在の精神医療に根本治療というものはありません。
調べれば、それを目指し実践する医師もいるし、そこに重点を置く心理士やカウンセラーもいます。
ですが、その人達が特別なのであって、そこに通わなければ存在しません。
そういった関係者は、医療や薬を信用する医療関係者や患者からは嫌われ否定・批判の的にされます。
でも本当は、回復しない・回復出来ないのではなく、自分に合った問題を解決する根本治療をしていないだけです。

どんな病気や精神疾患であるかに関わらず、必ず原因があって結果として現れます。
どうして精神疾患を抱える事になったのか?必ず原因があります。
もちろんアルコール依存症も同じです。
お酒に依存するようになった原因が必ずあります。
お酒が好きだからではありません。
依存心の強まる原因によってアルコール依存症に陥っていったんです。

『自分は、そもそもどうして精神疾患になった?どうしてアルコール依存症になった?』ここを考える様にならなければ、いかに医師から「寛解」と宣言されたところで、それは医師から見た患者の感想にしかなりませんし、何も原因が解決されていなければ、一時的に楽な時期があるだけで、同じような事を経験したり、同じような環境になったりすれば元通りです。
どうしたって無理して我慢して根性で生きるか、医療と薬に頼って生きるかしかなくなり、「もう問題ない」には辿り着けません。


⑤「お酒を辞めて」を子供に言わせる

ここからアルコール依存症家庭特有のものになります。

お酒を辞めさせようとすると喧嘩になってしまう、暴言吐かれる、暴力を振るわれる、ただ単純に異常状態だから怖い、等の理由から子供に「お酒を辞めて」と言わせる家庭も多いです。
『子供には手は出さない』は幻想です。
子供相手でも暴力を振るう人は振るいます。
子供相手でも怒って大声出したり、怒鳴ったり、暴言を吐く人はとても沢山います。

本来、親がそんな風になってしまったら、怖いのも不安なのも子供の方です。

「家族の事、親の事なんだから、あんたが子供でも協力してもらう」「逃げる事は許されない」
これは僕が子供の頃に母がよく言った言葉です。
「私が言っても聞かない」「言葉遣いは元々荒い人だけど私に対してはレベルが違うだよ」「私だと殴られる時だってある」「ヤクザの知り合いからもらったドスで脅すんだよ」「アンタはお母さんがそんな怖い思いしていても平気なのか!」「アンタはお母さんが殺されてもいいのか!」これが僕が父を怖がって「嫌だ」と言った時の母の言葉です。
僕が言ったって聞いてもらえなかった。
大声で怒鳴られ暴言を吐かれた。
殴られて蹴られたもした。
ドスや日本剃刀で脅されて首の薄皮切られ太ももや脛を切られもした。
毎日切られ傷だらけで絆創膏だらけだった。
「おばあちゃん殺す、お母さん殺す、誰よりもお前を真っ先に殺す」と毎日脅されていた、僕だって本当に泣き叫ぶほど怖かった。
母よりも僕の方が「ガキの分際でクソ生意気に父親様に偉そうこきやがって!」と手ひどい仕打ちを受けた。
姉と妹には、父は何をされても大声で泣きだすだけで何もしなかった。
そんな父と、自分が恐怖を味わう代わりに僕を使う母。
父の普段入らない部屋に隠れて泣きじゃくって文句言って父を殴る蹴るする時だけ出てきて、自分たちは何も協力させられたり責められる訳でもないのに、僕に対しては「男のクセに泣いてんじゃないよ!少し切られたくらいで!殴られたくらいで!蹴られたくらいで!アンタがしっかりしないから!アイツが望むように良い子にしないから!言う事聞かないから!お母さんの代わりにアンタが死んでよ!ホントあんた何なのよ!?何で生きてられんの!もうこんな生活嫌!アイツと一緒にアンタも死んでよ!」と僕を責めて叫んで隠れてるだけの姉と妹。
祖父はどうしていいか分からず、ただ黙って座ってる。
祖母だけが「ワシが殺されてもお前だけはワシの命に懸けてでも守る!」と父に立ち向かい助けてくれた。
「子供のkiyopiの方が恐い思いしてるんだからあの子を使うんじゃない!○雄(父の名)の親戚中からあいつだけは止めとけと言われてたのに「今結婚できなかったら私は一生結婚できない!それでもアンタらは良いのか!そしたら私はあんたらを許さない!」って啖呵切ってあんたが好き好んで強引に結婚した相手だ!kiyopiを巻き込むんじゃない!」と母を叱ってくれた。

これが僕の保育園頃から小学生までの日常です。
僕には祖母がいてくれたのでまだ救われていたと思います。
もっと酷い家庭もあると思います。
でもここから想像できると思いますが、子供にとって「酒辞めて」と言わせられるのは、「ヤクザの事務所に殴り込んで来い」と命令・強制されるのと同じで、何をされるか分からない恐怖・実際に何かされるとしか思えない恐怖でしかないのです。

こういった立場を強要された子供は正義感の強いアダルトチルドレンとなります。
自分の価値観や考えに正義や正当性を強く感じるようになり、怠けや不正を許せない、手抜きを許せない人間になります。
『正しいのは自分』と言った意識が強いので、それに反した人と問題を起こしやすくなる傾向もあります。
根底にあるのは自分だけが正しいので人を信用できない事です。
一見良い人であったりリーダー気質があるように思えますが、自分の意思に反する人は許せないので、誰かに対する不満をため込みやすく、人を信用する事がないので孤立しやすく、孤独感や疎外感を抱え込む人間になります。



⑥お酒を隠す・探す・捨てるを手伝わせる

アルコール依存症者は常にお酒がないと落ち着かなくなるので、常に家にお酒がある状態を作ろうとします。
飲む事を家族から咎められるようになると、隠したり、買ってすぐに飲んで家に持ち帰らないようになったりします。
アルコール依存症者のいる家庭では、依存症者が買い置きしてあるお酒を隠す、人にあげてしまう、隠してあるお酒を探す、捨てるという家族の行動は当たり前にあります。
料理酒はもちろん、みりんも酒類なので依存症者が飲んでしまう場合には同じ行動に出ます。

それを子供にも手伝わせる家庭も多いのが実情です。
探すのは子供にとって宝探しみたいなものなので喜んで手伝う子供もいるでしょう。
ですがこれらの行為は、依存症者に子供を攻撃させる口実を与えます。
例えばらさなくても、子供は態度に出てしまったり、幼い子であると自分から喋ってしまう場合もあります。
それによって依存症者から酷い仕打ちを受けてトラウマとなり、大人になってもずっと苦しんでいるアダルトチルドレンは多いのです。

僕のうちの場合は、父は元々まともに働く人ではなく、一日出社しては誰かと喧嘩して3日休む、そして一日出社しては一週間休む、年休が直ぐになくなり上司からの電話がしょっちゅう掛かってくるけど本人はどこにいるのか分からず・・・それでも夜になると帰って来て空の財布(父は僕が高校生の頃に給料が銀行振り込みに強制変更になるまで一円も家に入れた事はありませんでした)を飯台の上に置いてあるという状態でした。
最初は母と祖母で探したり処分していましたが、幼稚園児の頃にはいっよになって探し捨てていたのは覚えています。
手伝わされる時は、必ず祖母がいない時でした。
祖母は家から300m程離れた所に畑を借りていて、毎日午後には数時間そこに出掛けていました。
その時を見計らい、母は田んぼ周辺で小魚やザリガニ取りをしている僕を「おばあちゃんが手伝ってほしいことがあるって読んでるから帰ってきなさい」と呼びに来るのです。
そして手伝わされる。
「やらなかったらおばあちゃんに嫌われるよ」
「手伝わなかったらお父さんにおばあちゃん殺してくれるように頼むけどいいの?」
「手伝ってくれなかったらお母さん頭おかしくなってアンタを殺すかもしれない。それでもいいの?」
当時の母の脅しの言葉です。
常に『こんなことしたらお父さんに殺される。おばあちゃんが殺されちゃう』と恐怖に縛られながら手伝っていました。
祖母はそれを知っていたのでよく畑に連れて行かれましたが、手伝いに飽きると魚とり網を持って田んぼの方に行ってしまうのが僕でした。
母や祖母では見つけられない天井裏、屋根の隙間などに隠したはずの酒がないので父は僕の仕業だとすぐに勘付きました。
当然、暴言・暴力・刃物が出てきますがこれも父母の寝室に連れて行かれます。
「私たちがいつもしてたからお手伝いのつもりで真似してるんじゃないの?」
「kiyopiが勝手に見つけてきた」
「kiyopiが勝手に捨てた」
「私じゃない」
「私がやらせてる訳じゃない」
「パパが怒るの分かってるから私はもうそんな事しない。そんな事パパだって分かってるでしょうに」
これらが矛先を自分に向けられた時の母のいつもの良い訳でした。
戦時を生き抜いた祖母は意志も精神もオーラも強く、実の子の母も養子の父も反発が出来なかったため、そのうっぷんが余計僕に向いていました(現在でも解消されておらず、それらが原因の父と母の不満は様々な人・状況・環境に不満を抱く人格形成に影響していて、いまだにその八つ当たりの矛先は僕にあります)。

重度の依存症者がこれらの行動で怒るのは、生きている事が辛い現実から意識逃避するための依存行動が飲酒であるからです。
重度の依存症者にとって、酒から切り離されるのはそれだけ強い恐怖を伴う不安事態だからです。
まず大事なのは、生きている事が辛い現実の改善や精神的疲労の回復です。
そこに向き合わずに放置している限り、機能不全からの回復はありません。


⑦依存症者が出掛けないように見張りをさせる、出掛ける時についていかせる、探しに行かせる

これもアルコール依存症者のいる家庭ではよくあります。
家族にとって、『依存症者が出掛ける=お酒を飲みに行く・買いに行く』という考えになってしまっている事で、とにかく出かけないように見張る事をします。
とにかく依存症者が出掛ける時にはついていくという事もします。
たとえ依存症者でも、常に監視されているのは鬱陶しいのは当然です。
前向きにお酒を辞めていこうと決意が固まっている依存症者にとっては、信頼されていない事は当然だと分かっていても、どうしても辛くもあります。

依存症者が飲酒行動に走ってしまっている場合、昼夜関係なく出掛けていきます。
監視されているのは分かっているので、まるでプロの泥棒の様にこっそりと音もたてずに出掛けるようになります。
見張り役がトイレに入った隙、お風呂に入った隙に出掛ける依存症者もいます。

これを子供にもさせる家庭もあります。
働かない・働けない・無職になっている依存症者のために、伴侶が働いているため子供に任せるという家庭もあります。
子供は必死に聞き耳を立てて、意識を集中して見張るようになります。
子供によっては見たいTVを見なくなる子もいます。
依存症者の出す音や放つ雰囲気に集中しないといけないので勉強に集中できなくなるので宿題ですらやらなくなる、というより手を付けられなくなる子もいます。
トイレやお風呂に入れなくなる子もいます。
やらないことを選択できる子ならいいのですが、責任感の強い子だとこんな感じで追い詰められてしまいます。

僕の家庭では、母は見張っていました。
僕は強制的に見張らされていました。
姉と妹は拒否しても許されていました。
父が出掛ける時には、どんなに父が機嫌を損ねようが暴れようが必ずついていかされていました。
逆に、父の方から僕を連れて行くこともありました。
僕が父が出掛けたのに気付かず、飲んで帰ってきた時には母からの問い詰めと折檻が待っていました。
「気付かなかった」は理由になりません。
父が出掛けてしまったことが気に食わない母の怒りが収まるか、祖母が気付くまで折檻は終わりませんでした。

姉が中学生になった時から、僕が気付かず父が出掛けてしまうと姉と妹も僕を責める様になりました。
「アンタがちゃんと見張ってないから」
これ以外にも⑤の時と同じことで責められるのが日常でした。
僕の場合は兄弟の中で僕だけ、TVは必要ないものとされていたのでどうしても見たいアニメ以外は見なくなりました。
母のいない時間は昼は学校や習い事以外は段々と出掛けなくなり、宿題は祖母に急かされない限り出来なくなりました。
お風呂も祖母に怒られない限り入れない。
トイレも朝と学校から帰ってきた時と寝る前しか入らなくなりました。

気付かず父がいなくなった時、帰ってこない時、夜中であろうと探しに行かされました。
地域の自転車店のおじいちゃんが地域の防犯委員をやっていて、夜昼関係なく血相変えて走り回る僕は良く捕まりました。
その自転車店の隣に派出所があって、昼間はそこで保護、夜の場合は派出所が警察署に連絡するので、補導されて市の警察署によく連れて行かれました。
迎えに来るのは何時も祖母でした。
家に帰ると自転車店から連絡が入っていて、母はカンカンでした。
幼稚園児の頃から、補導される度に「お父さんが帰ってこないから心配で探してた」と嘘を言っていました。
一度だけ幼稚園の時、夜に補導された時に「お母さんに命令されて・・・」と言ってしまい、母の強烈ヒステリーにあったこともありました。

僕が中学2年に上がる時の春休みに祖母が亡くなり、ストッパーのいなくなった家庭は機能不全化が加速していきます。
母は祖母のいない開放感から支配傾向は強まりとことんヒステリックに、父はアルコール依存症は悪化し放題で、姉と妹の僕への印象も悪化していきました。

この監視の生活は僕が大学中退まで続きます。
大学自体、僕は受ける気も入る気もありませんでしたが、休みの多さから受験をしないと高校を卒業できなかったので、小遣いで受験会場に行ける地元の大学を受けました。
入学したのは母の強制でした。
大学時代、2年生の10月から父のアルコール依存症が再悪化(中学時代から3度の入退院を繰り返してしばらくは仕事は休んでばかりいるものの、依存症は落ち着いていました)。
2年生になってすぐの頃、たまたま1時限目が教授のTV収録という都合で休校の日がありました。
「今日はのんびりだけど何やってる!」と怒る母に事情を説明しましたが信じてもらえず、母は大学に問い合わせて納得したということがありました。
その一件が
母「学校なんて行ってなんで見張っていない、あの時は休校だっていったのアンタでしょ!」
僕「今日はちゃんと授業あったから」
母「見張っていたくないからって随分と都合のいい事だわね!」
僕「あの時はあの時で今日は今日だよ」
母「自分に都合が悪いからって偉そう言うんじゃない!アンタが学校なんて行ってるからお父さんいないじゃないの!何やってるの!責任取りなさい!!!」
という訳の分からない理屈を生み、学校まで車で1時間ちょっと、電車バスだと1時間50分かかるので、父が怪しい日は大学を休むようになりました。
すると今度は
母「アンタ何で家にいるの?学校は?」
僕「学校行くと毎回その時にお父さん出掛けてお母さん怒るから、今日はお父さん朝から怪しかったから思い切って休んだ」
母「はあ~!寝言言うんじゃない!誰が休んでいいって言った!お金出してるの誰だか言ってみなさい!」
僕「ごめんなさい。明日からまたちゃんと行くから今日は勘弁してください」
母「明日から行けばいいってもんじゃない!アンタはどこまで根性ねじ曲がってるの!」
僕「本当にごめんなさい」
母「謝りゃあ許されるとでも思ってるのか!いい加減にしなさい!」
僕「だから本当にごめんなさい」
この時からダブルバインドが始まりました。
「見張っていろ」と言うから見張っていれば「何で学校行ってない!」と怒られる、学校へ行ってれば「なんで見張ってない!」と怒られる。
僕「どうしたらいいの?見張ってればいいの?学校行けばいいの?」
母「何でアンタはそうひねくれてるの!」
僕「どっちにしろ怒られるからわもうわからない」
高校時代、母と学校からの勉強攻撃で勉強ノイローゼから鬱になっていた僕はそこで初めて底付きを体験した。
当時、彼女が自殺したばかりだったこともあって、何も出来なくなった。
学校行くのも、父を見張るのも、何で自分は生きてるのかも分からなくなって、生きてるのが恐くてしょうがない人生が始まった時だった。

僕の様に、見張りが成功しない事で許されない子、付いていったのに飲まれてしまってそれを責められる経験をした子もいます。
それによって機能不全化が加速し、どんどん悪者にされていく子もいます。
僕の様に壊れていく子も多いです。


子供にも手伝ってもらう、何気ない行動ではあります。
でも、子供は親が思っている以上に責任を感じます。
親は親で、精神的に一杯一杯であったりすると、思い通りにならなかった場合に変に子供に怒りの湧く原因にもなります。
子供を巻き込まないのが一番ですが、それでも子供は世間に対して気負ってしまったり壁を作ってしまいもします。
子供に責任はない事を知ってほしいと思います。
巻き込むのも最初は親です。
感情は自分が現実をどう受け止めるかで自分が生み出しているものです。

アルコール依存症は自分だけの問題ではありません。
家族を巻き込みます。
断酒すればいい訳でもありません。
本当に回復するには、子供を巻き込まないためには、依存症者だけでなくその伴侶である人も自分を分析して、自分を知って、変わらないといけない所はお互い変わる必要があります。


今回は以上です。

自分の経験を付加したり、そこから僕に出たアダルトチルドレンへの影響も付加したので長文・大作となってしまいました。

参考にして頂けたら幸いです。

あなたの断酒が楽になりますように。
ご家族様の消えない苦しみが少しでも軽くなりますように。

最後まで読んで頂き有難うございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?