あの日

それは感じたことのない揺れから
まさかあれ程の出来事が起きる
前触れとなるなんてその時は
思いもしなかったそんな昼下り

   あの日、僕は何が出来ただろう
   あの時、私はどうしてたろう
   出来たといえばただテレビに映される
   家が、車が、命が濁流に流される

この世の終わりはきっとないけれど
この世の地獄は今そこにあるのだと
テレビ越しに知ったあの日
画面越しに見てたあの日

ヘリコプターは工場の煙を避けて
テレビには真っ赤な日本列島
アナウンサーの絶叫がこだまする
時刻はもう何時間も過ぎていった

   あの日、僕は何が出来ただろう
   あの時、私はどうしてたろう
   防災無線を命が果てるまで叫んでた
   海に、飲まれ、流れていく様を見た

この世の終わりはきっとないけれど
この世の地獄は今そこにあるのだと
散らばった家具を片付け
ひとり震え上がったあの日

   あれから10年が過ぎ あの街を訪れてみた
   そこにはまるで古墳のような高台を
   無数に並べて爪痕を消す中で見つけた
   赤い柱の防災無線の町役場がそのままに
   
   そこに立ち尽くす

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